INTERVIEW

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Spangle call Lilli line × やけのはら × 永井聖一対談

  • 2011.09.09

──今回、リリースされたSpangle call Lilli lineのEP「New Season」には、永井聖一さん、やけのはらくん、そして石橋英子さんという3組のリミキサーが参加していますよね。まず、どういう理由からこの3組を選んだんでしょうか?
藤枝「今回の対談は石橋英子さんが欠席なんですけど、何故、この3組だったのか、単刀直入にいうと、僕らがこの3組が好きだったからです(笑)。今回はまず3、4曲入りのEPを想定して、一つのコンセプトのもとで作品を作ることが決まっていたので、リミックスに関しては、そのコンセプトとはまた別の要素になるもの。ひとつの作品として、つるっと終わらないものにしたかったんです。3組それぞれやってることが違うので、ベクトルの異なるリミックスが仕上がるといいなと思っていたんですけど、僕たちがこれまでやってきたこととはあまり関係ない、いい意味でバラバラなリミックスが上がってきたんですよね。石橋さんにお願いした『roam in octave』のリミックスも彼女らしい一癖も二癖もあるポップなものになりましたし、僕らがやったら、やっぱり、ああいうことにはなりませんからね。だから、作品1枚を通じて、謎な感じが深まったというか、仕上がりには満足してますね」
大坪「三者三様でみんなベクトルが違いますよね」
笹原「まるで打ち合わせしたかのような」
大坪「ね。たぶん、音のどこを見せるかっていうところが3人とも違うんですよね」
──「cast a spell one her」のリミックスを手がけた永井さんは昨年のシングル「dreamer」のプロデュースを担当されたこともあって、Spangleがどういうグループかはご存じですよね。
永井「ポスト・ロックっていっても、ぴんとこないし、彼らはやってることが結構変わるので、その音楽性に関しては形容出来ないというか。強いていうなら、やってる音楽が変わるグループって感じですかね(笑)」
藤枝「そうはいっても、永井さんは布袋寅泰さんと共演してますから!」
永井「そのトピックは今の話の流れとは全く関係ないでしょ!(笑)」
藤枝「いやいや、永井さんは僕たち以上に振り幅があるってことですよ(笑)。 そして、永井さんはバックグラウンドがつかみづらいというか、普段、どんな音楽を聴いているのかよく分からないんだよね」
永井「でも、自分がどんな音楽を聴いているかなんて意識しないじゃないですか」
藤枝「Spangleもそれと同じで、どんな音楽をやるかはその都度変わってくるんですよ。そして、永井さんもそういう人であるからこそ、何を振っても大丈夫だと思ってて」
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──無茶振りもオッケーだ、と。
永井「いや、受けたものの、『どうしようかな』って時もあるんですけど(笑)」
藤枝「でも、作る音楽には永井節というか、ある種の刻印がありつつ、今回のリミックスは原曲を完全に解体してもらったという。作業はスムーズでした?」
永井「いや、大変でしたね。最初、依頼を受けて、その後、メールでやり取りするなかで、『felicityが(ブルース・インターアクションズに)移籍して以降の作品から曲を選んでください』っていう藤枝さんのメールを読んだはずなのに、それをすっかり忘れてて、僕が選んだ曲はどれも移籍以前の作品だったっていう(笑)。選曲の段階からして、そんな感じだったんで取りかかるのが遅くなったうえに、ブルース・インターアクションズ以降の作品は曲として完成されているから解体する余地がないなと思って、おのずと手が遠のいてしまって(笑)。だから、発想を変えて、曲を作ってしまえと思ったんですよね」
藤枝「そう、ガチンコで曲をがらっと変えてくれましたよね。あれは作曲ですよね」
永井「そんな感じですね」
藤枝「永井さんはどんなものを投げても、自分なりのスタイルでギターを弾けるんですよ。そもそも、永井さんにプロデュースをお願いした『dreamer』に入れてもらったギター・フレーズも、自分では思いつかないものですもん」
やけのはら「僕も『dreamer』の素材をいじってる時に『この素材であのリフ弾くのはスゴいな』と確かに思いました」
──やけのはらくんは、以前、dommuneでもプレイしていた、その「dreamer」のリミックスを手がけていますね。
笹原「dommuneプレイしてもらったことで、結果的には僕らにとって、いいプロモーションになったというか、『あの曲、何だ?』って話題になりましたからね」
藤枝「だから、レーベル・オーナーの櫻木さんと話した時も「やけくんに頼むのは『dreamer』でしょ」っていう話になっていたんですよね。やけくんの作品って、最初に聴いた時、ポップだと思ったんですよ。なんせ、この風貌じゃないですか(笑)。それでいて、あのアルバムのポップさ、ラップの組み合わせがキャッチーだし、僕からするとやけくんのバックグラウンドも永井くん同様、謎めいているんですよね」
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──謎だと言われるやけくんから見たSpangleは?
やけのはら「昔から名前は聞いていて、僕がfelicityと関わり始めてからちゃんと聴くようになったんですけど、お洒落なイメージがありますね。僕が通ってこなかったギター・ロック・バンドのテイストがあって、興味深いというか、もっと知りたいなと思っていたんですよね」
藤枝「僕らとしても、同じfelicity所属じゃなければ、今回、リミックスをお願いすることはなかったと思うんですよ。なんでかというと、やけくんは強面だから(笑)」
やけのはら「や、そんなことないですよ!」
藤枝「実際に話してみれば、そんなことないのはよく分かるんだけど、アーティスト写真と音だけだったら、やっぱり頼みづらいですよ(笑)」
――ははは。しかも、今回のリミックスのやり取りではトラブルがあったとか?
やけのはら「そう。リミックスの素材としてもらったオリジナル音源に永井さんのギター・トラックが入っていなかったんです」
――え、それはどういうことなんですか?
永井「マスター音源を探したのですが見当たらず、僕がギターとヴォーカルを録ったスタジオももうデータを消してしまったみたいで…」
藤枝「だから、永井さんに渡す前のベーシックな音源をやけくんに渡したんです」
やけのはら「最初は「dreamer」のロング・エディット、ダンス・ミュージックでいうところのエディットっていうのは、現場でプレイしやすいように編集することを指すんですけど、そういうものを作るつもりでいたんですよ。でも、もらった素材が完全なものではなかったので、途中でリエディットを諦めて、リミックスにしようと。で、その後、ボーカルのデータでも紆余曲折あってなかなか作業を始められないでいたら、「締め切りは後3日です」って言われて。そうしたら、今度は風邪を引いてしまって、結果的に39度の高熱にうなされながら作業することになったんです。まぁ、そんな状態での作業だったんで、あんまりよく覚えてないんですけど、音数少なく、弾き語りぽさを残しつつ、ちょっと今っぽくなるといいかなって感じで空間系のエフェクトをかけたりして、なんとか完成したっていう」
藤枝「やけくんのリミックスって、『dreamer』のメイン・フレーズが入ってなくて、ベースとキックとギターのリフレインとヴォーカルだけで構成されてるじゃないですか。で、一時期、そのリミックスを延々とかけてたら、その場にいた人たちがおかしくなっていったっていうような、謎なサイケ感があるんですよね」
――そして、謎めいているということでいえば、ギター・ロックに回帰したかのような、4曲のオリジナルも『New Season』っていうEPタイトルも含め、意味深な佇まいがありますよね。
藤枝「去年6月にやったリキッドルームのライヴでライヴ活動休止ということも含めて、一区切りになったので、次に作品を出す時は『New Season』って思えるような始め方をしたかったんです。そして、その時には僕らにとって謎なリミキサーに謎な要素を混ぜてもらいたかったっていうことですね。まぁ、世の中は謎に満ちてるよねっていうことで(笑)」
笹原「自分にとって、今回の作品は『New Season』へ行きなさいって、駆り立てている感じ。年取ってくるとだんだん落ち着いてきて、同じような道しか歩かないし、同じものばっかり食べるようになるから、『そうじゃないだろう!』ってことですかね」
――それを激しいギター・サウンドで表現したと。
大坪「はははは。私のなかでは、Spangleでは遊ばせてもらってるっていう感じがあって、言い換えるなら、Spangle劇団で『今回はこういう劇をやるから、大坪さんはセーラー服の高校生役ね』とか『煙草屋のおばちゃんの役ね』とか、そういう感じでイメージをもらう感じなんですよね。そして、今回は自分のなかではセブンティーンな感じ、ちょっと元気な感じで臨んだというか」
――ということは、ここまでの話を総合すると、長くバンドを続けることによって、マンネリ化する可能性があるからこそ、それを振り切りたいという意図があった、と。
藤枝「そう。何かをやるなら違うことをやりたいし、そこで謎めいたものを求めたり、人との関わりのなかでいつもとは違うものを生み出していきたいというか」
――それが今回のリミキサー陣に対する無茶ぶりに繋がったわけでもある、と。そんなSpangleに対して、永井くんとやけくんが今後の彼らに対して求めるもの、期待するものは?
やけのはら「ええっ!? その質問こそが今回の対談で一番の無茶ぶりですよ(笑)」
永井「そう、言葉は悪いかもしれないですけど、期待しないからこそ、音楽は面白いんだと思いますし、『Spangleは毎回変わるよな』っていうふわっとした感じの認識でいるのが一番楽しいんだと思いますよ」

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  • 2011.09.07 On Sale
  • PECF-1030 / felicity cap-126
    [CD] ¥1676

<TRACK LIST>

  • seventeen
  • for rio
  • summer's end
  • utashiro ~instead of song~
  • cast a spell on her (Seiichi Nagai remix)
  • dreamer (YAKENOHARA DUB)
  • roam in octave (shinjuku june 2011 version)


PROFILE
Spangle call Lilli lineスパングル・コール・リリ・ライン
Spangle call Lilli line × やけのはら × 永井聖一対談

1998年結成。メンバーは大坪加奈、藤枝憲、笹原清明の3人。
今までに10枚のアルバム、2枚のシングル、3枚のライブアルバムと、ベストアルバム2枚をリリース。数々のコンピレーションアルバムなどにも参加。ボーカル大坪加奈による「NINI TOUNUMA」名義のソロや、藤枝&笹原による「点と線」名義でのリリース、国内外のアーティストの作品への参加など、サイドプロジェクト等も精力的に活動。

http://lilliline.com/
http://www.myspace.com/spanglecalllilliline

やけのはらYAKENOHARA
やけのはら

DJ、ラッパー、トラックメイカー。『FUJI ROCK FESTIVAL』、『METAMORPHOSE』、『KAIKOO』、『RAW LIFE』、『SENSE OF WONDER』、『ボロフェスタ』などの数々のイベントや、日本中の多数のパーティーに出演。年間100 本以上の多種多様なパーティでフロアを沸かせ、多数のミックスCD を発表している。またラッパーとしては、アルファベッツのメンバーとして2003 年にアルバム「なれのはてな」を発表したのをはじめ、曽我部恵一主宰レーベルROSE RECORDS のコンピレーションにも個人名義のラップ曲を提供。マンガ「ピューと吹く!ジャガー」ドラマCD の音楽制作、テレビ番組の楽曲制作、中村一義、メレンゲ、イルリメ、サイプレス上野とロベルト吉野などのリミックス、多数のダンスミュージック・コンピへの曲提供など、トラックメイカーとしての活動も活発に行なっている。2009 年に七尾旅人× やけのはら名義でリリースした「Rollin’ Rollin’」が話題になり、2010 年には初のラップアルバム「THIS NIGHT IS STILL YOUNG」をリリース。その後、Stones Throw15 周年記念のオフィシャルミックス「Stones Throw 15 mixed by やけのはら」を手がけ、2012 年には、サンプラー&ボーカル担当している、ハードコアパンクとディスコを合体させたバンドyounGSoundsでアルバム「more than TV」をリリース。2013年3月、新しいラップアルバム「SUNNY NEW LIFE」をリリース。

http://yakenohara.blog73.fc2.com/

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  • PECF-1030 / felicity cap-126
    [CD] ¥1676

<TRACK LIST>

  • seventeen
  • for rio
  • summer's end
  • utashiro ~instead of song~
  • cast a spell on her (Seiichi Nagai remix)
  • dreamer (YAKENOHARA DUB)
  • roam in octave (shinjuku june 2011 version)