INTERVIEW

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サイプレス上野とロベルト吉野、ニューアルバム「TIC TAC」全曲解説

  • 2013.02.18

1. ぶっかます
プロレス実況をメインに活動するアナウンサー:清野茂樹の入場実況から始まる、ニュー・アルバム「TIC TAC」の幕開けチューン。テンポ感のある派手なビートに、サ上とロ吉が生み出した造語「ぶっかます」を軸に話は展開していくのだが……。
○二人が作った「ぶっかます」という新語について、自分達が元祖であり、「使いたきゃ使いな」と景気のいい事をいいつつ、次のヴァースでは「オレのおごりだってのは忘れず使いな」と言わずにはいれないあたり、サ上とロ吉の小ささが見事に表されてますね。
「『ぶっかます』はけっこう色んな人が使ってくれてて、それは嬉しいんだけど、でも、このワードを作ったのはオレだって事は言っとかないと!ラッパーにとって造語は生命線でもあるから、早めに著作権マークを曲で押しときました。もともと『ぶっ放す』と『ぶちかます』を組み合わせて『ぶっかます』って事でblogとかで使ってたんだけど、前のアルバムで、これもオレの作った『よっしゃっしゃす〆』ってワードを曲でも使ったらかなり浸透したんで、次は『ぶっかます』を推して行こうかなと。且つ、とにかくこの曲はライヴの盛り上げ重視ですね。ちなみに、清野茂樹さんは、サイトウ"JxJx"ジュン(YOUR SONG IS GOOD)さんと、ナオヒロックさんと同級生なんですよね。その三人が同じ中学で」
○スゴい中学だね!
「変わり者が多い中学(笑)。且つ、三人とも俺らのアルバムに参加して貰ってるという。で、この曲でプロレス・ギミックをやるなら、やっぱり清野さんしかいないなって。だけど、アルバムの幕開けなんだけど、内容的には『行くぞ!』的な感じじゃなくて、『なんか適当な事いってんな、こいつら』ってぐらいの感じで、肩の力抜いて作りました」
○適当といえば、「上野ぉ↑」「吉野ぉ↑」ってコールもひどいよね。これって、ももいろクローバーZの百田夏菜子さんの「夏菜子ぉ↑」ってコールのまんまサンプリングというかパクリだし。
「DRMMAN(注:サ上とロ吉の幼なじみ)が、ももクロのファンで、延々ヤサ(注:サ上とロ吉のプライベート・スタジオ兼住居兼宴会場)で、ももクロの曲を聴きながら踊ったりしてるんですよ。で、DRMMANが、俺らの事を「上野ぉ↑」「吉野ぉ↑」って呼び出して、これはキャッチーで使える! と(笑)。tomato 'n pineとかnegiccoとかアイドルとも対バンする機会が増えてて、そこで知った面白さは積極的に使ってこうと思ってるし、普通にオーディエンスとの一体感出やすいですよね。それもあって、ライヴ対応曲のこれで使わせて貰いました。いやあ、アイドル様々っすねえ」


2. LIVE GOES ON
ヒップホップ・ビートの新しい潮流である「TRAP」を下敷きにしながら、彼らが最も重要視している「LIVE」をテーマに、激しくラップとスクラッチを展開する一曲。トラックは田我流らが結成したクルー:STILL ICHIMIYAのメンバーであるYOUNG-Gが手がけた。
「『LIFE』でなく『LIVE』に変えたのは、俺らのライヴは続いていくって事でもあるし、同時に、人生と同じで、ライヴも一度きりだよって。俺らはライヴの回数も多いし、次もまた見れるって思ってるかも知れないけど、その保証はどこにも無い訳で、もしかしたらこの一回が最後かも知れない。だから、俺らは手を抜かないで死ぬ気でライブするし、見に来てくれる人も、死ぬ気で楽しんで欲しいなって思うんですよね。音源なのに、それとは実は全くタイプの違う『ライヴの場』の事を二曲目なのに言うのも、俺達の事はまずはライヴで観て欲しいって気持ちがあるから。YOUNG-Gにトラックをお願いしたのは、去年はフェスも含めサ上とロ吉と田我流&YOUNG-Gってタッグ同士が一緒のライブになる機会が最近スゴく多くて、その流れでトラックを貰ったんだけど、この曲の『ロッキー』感がすげえ良くて、これしかないなって」

「いつもよりレベルを高い所に設定した曲になってますね。総決算と言う事で」

「まだ二曲目だし、何も決算してねえよ! ラップ的にはシャウトするタイプの曲だから結構疲れるっすね」
○フロウは曲毎にかなり拘ってるよね。
「フロウ巧者が増えてるから、オレも負けられないし、こういうスタイルもあるよって提示したくて」
○この曲だと中間管理って言葉が印象的で、やっぱりベテランと若手の狭間にいるって自覚はあるんだね。
「もちろん。でも、こんな中間管理するような役目の位置に俺らが来るとは思わなかった(笑)。勝手気ままにやって『あいつらいつまでフラフラしてんのかね』って言われてるハズだったのに、いつの間にかシーンの真ん中の方で色んな役割背負わされて…いやあ、居心地悪いなあ…」


3. ヨコハマシカ feat. OZROSAURUS
アルバムに先駆けて、昨年シングル・リリースされた一曲。横浜の先輩であり、横浜の名前を日本のヒップホップ地図に大書したハマの大怪獣:OZROSAURUSをゲストに迎え、彼らの街:ヨコハマをメロウに描いていく。
○先行リリースされた曲ですが、今から振り返るとどういった手応えがある?
「やっぱり特別な曲だし、アルバムの軸になった曲ですね。この曲があったから、アルバム自体もスムーズに制作出来た気がして。RHYMESTERのMUMMY-Dさんにもスゴく褒めてもらえたのが嬉しかったですね」
○この曲がアルバムの軸になってるのが印象的だよね。今までのサ上とロ吉のディスコグラフィから考えたら、“ぶっかます”の方がイメージには近いんだけど、そうじゃなくて、このメランコリーとも言える曲が先行して提示された事で新たな側面も見えたし、この曲がある事でアルバムのカラーがグッと締まったって感じがあるよね。
「やっぱり自分達も、シーンの中でも横浜って街の中でも色々経てきたし、それが形になった感じですね。なにより、オジロと一緒に出来たのはとにかくデカかったですね。緊張もしたけど楽しく作れたし、オジロもこの曲にしっかり向き合ってくれたのが本当に嬉しくて。ぶつかり稽古みたいなRECだったし、この先輩達はマジで喧嘩強ええなって(笑)」
○トラックにはLUVRAW&BTBが参加してるんだね。
「この二人には昔からオジロと曲作りたいって話してたし、それを後押ししてくれてたんですよ。だからこの二人が参加してくれたのも嬉しかった」
○今の横浜を担ってる30代のカラーがこの一曲で出てるのが本当に良い構成だよね。


4. マイク中毒 pt.3 逆 feat. STERUSS
サ上とロ吉らと共に、クルー:ZZ PRODUCTIONのメンバーとしても活動する2MC2DJのSTERUSS。サ上とプロデューサー・チーム:ドリームトラクターズ(今作では“YouTube見てます”を制作)を結成しているビート武士がメンバーとして合流し、昨年はアルバム「THE RAP MESSENGER」のリリースやフジロックにも出場するなど、ベテランの域に差し掛かりながらも新しい展開を見せる彼ら。その彼らが、05年にリリースしたアルバム「白い三日月」収録の“マイク中毒pt.2 feat. サイプレス上野”を、掟破りの逆フィーチャリングで制作したのが本作。
○“マイク中毒pt.2”は、いかに自分達が日本語ラップ・シーンに影響を受けたかって事を形にしたバック・イン・ザ・デイものだったけど、今回は「何故いまだにマイクを握るか」っていう、今の話になっているのがスゴく印象的で。
「オレは何の因果か、一応音楽に纏わる事だけで飯は食えてるけど、この曲に参加した俺以外は、みんなそれぞれヒップホップ以外の仕事を持ってて。20代前半からZZで一緒にやってる面子の中で、そういう色んな変化が出てるのも印象的だし、出会った頃はSTERUSSの方が多分『音楽だけで』って思ってただろうし、俺らの方が全然ちゃらんぽらんで、DJ KAZZ-Kに『ちゃんと作れよ』ってケツ叩かれてたのに、今じゃこうなってて。それのどっちが正しいとか偉いって事じゃなくて、そうやって色んな変化があるのに、未だにクルーで連んで、みんなヒップホップを続けてて、遊んだり揉めたり出来てる兄弟みたいな関係の二組だから、その二組で『今の事』を書ければ良いなって」
○“マイク中毒pt.2”は過去に見てきた時代の景色をそれぞれの視点で書いたけど、この曲は、それぞれに取り巻く環境や書ける事が変わっていった今の状況を書いてて、「そうやって立場がみんな変わったのに、なんで音楽を作るのか」って事をそれぞれが真摯に形にしてるのにグッと来ました。
「『お前は良いよな』とか、そういうのをもう凌駕してる関係だからこそ書けるし、『マイクを取る事』って事だけを素直に一緒に歌えるのは、やっぱりZZの連中しかいないし、その気持ちが昔から変わらないのはホントに良いなって。こういう熱い内容とか、マイクを持つ理由とかを語るのって、もうシーン的に廃れてるじゃないですか。みんな綺麗に収めるし、もっとスマートな部分をアピールしてて。だけど、そうじゃなくて剥き出しでいきたかったんですよね。でも、『15の夜/割った心の窓』ってリリックをCRIME6が持ってきた時は爆笑したな~。『尾崎かよ!』って(笑)。でも、このセンテンスがあった事で、内容的に振り切る事も出来たかなって」


5. DOOR(ALI-KICK REMIX)
横浜出身のジャム・バンド:SPECIAL OTHERSのコラボ・ミニ・アルバム「SPECIAL OTHERS」に収録されたSPECIAL OTHERS & サイプレス上野とロベルト吉野“DOOR”を、ROMANCREWのALI-KICKがリミックスした一曲。ちなみに、ALI-KICKは本アルバムのトレーラー映像( http://youtu.be/hljEGegjcE8 )も制作。
「元々スペアザとは、古くからの知り合いで、まだお互い小箱でライヴやってる頃から、向こうのセッションに合わせてフリースタイルとかやらせて貰ってて」
○かたや向こうは武道館ワンマンまで行っちゃったけど。
「先輩どんどんでかくなってくな~って見てます(笑)。で、この原曲はスペアザの作品に俺らが参加させて貰った曲なんだけど、メンバーからも、スペアザのリスナーからもスゴく評判が良くて。オレのリリックもバック・イン・ザ・デイもので、且つその先に向かうって内容が良く書けたなって思ってるし、それが向こうの畑で出来たのが、スゴく自信に繋がった曲だった。あのコラボ・アルバムは、ホントにロックの大御所がコラボで参加してて、その中で唯一ヒップホップで俺らが参加させて貰ったのも光栄だったし、実際あのアルバムはスゲえ売れてて、ロック・シーン/音楽シーンではスゴく評判の高いアルバムだった。だけど、その評判はヒップホップ・シーンにはほとんど響いて無くて、それで『ホントにヒップホップ・シーンの人達は他の音楽を聴いてないな』って思っちゃったんですよ。だから、向こうの畑とこっちの畑をより分かりやすく繋げるには、その両方が分かってるALI-KICKにリミックスをお願いするのがベストじゃ無いかなって」
○このリミックスの、原曲との距離感もホントにちょうど良いよね。離れすぎず寄りすぎずで、やっぱりALIくんは流石だなって。
「エモい渋谷系な感じもありつつで。原曲がスゴく『強い』曲だから、このリミックスは大変かなって思ったんだけど、見事にヒップホップにしてくれて。やっぱALIさんは天才ですね」


6. だろう生活ながら毎日
YOUR SONG IS GOODのサイトウ "JxJx" ジュンの手がけるメロウなトラックに、日常をテーマにしながら、それに纏わるメランコリーな歌詞の乗る、サ上とロ吉版のスチャダラパー“ヒマの過ごし方”といった風情も感じる、可笑しくもやがて切ない一曲。
「ジュンくんからトラック貰って、プリプロで声入れてみてスタジオに行ったら、全然違うトラックに差し替わって戻って来たりという、謎の展開を経つつ出来た曲ですね(笑)。このタイトルはけっこう前から頭にはあったんですよね。大体俺らの日常はこんな感じだし」
○聴いてると、スゴく身につまされる部分もあって、ちょっとダークな気持ちにもなるんだよね。
「そのイヤになるって言うのもキーワードなんですよ。俺らもキミドリの“自己嫌悪”聴いて、イヤな気持ちになったじゃないですか(笑)。曲を聴いて『これ俺の事言われてんのかな』ってイヤな気持ちになるのも、『オレと同じような奴もいるんだな』って思ってちょっと楽になるのも、どっちも音楽の効能だと思うし。で、今までは“ヤサの詩”とか“ボンクラの唄p.k.a僕等の唄(東スポLUV) ”で、この曲で書いてるような生活を肯定してたけど、それでも寂しかったり不安になる時もあるよって部分にフォーカスしたのが、この曲なんですよね。そういう気持ちも隠さずに書いちゃおうって」
○「ハゲた思い出/白々しく美化する」とか、「決め事は決めずに中途採用」とか、ホントにダラダラ型人間の業みたいな部分を改めて書かれると、胸痛くなるよね。
「自由業の人間は大概こうだと思うけど、普通に仕事してる人でもこう思ってるだろうなって。で、謎みっちゃん(注:ZZ PRODUCTION所属のノイズ・アーティスト。今回のジャケット写真のケツ担当)が、この曲を「fishmansみたいですね」って言ってくれたのがスゲえ嬉しくて。俺達もそれを聴いて育ったし、そういう雰囲気が俺達も自然に出せるようになったんだなって」
「遂にfishmans的な事が出来るようになりましたね」
「(吉野に)……なんか、褒めてくれてありがとうございます(笑)」


7. 契り流星群
ロベルト吉野のスクラッチ&ワード・プレイを中心に構成される「契り」シリーズ。その最新作には“ジゴロ7”などで日本語ワード・プレイを世間に知らしめた、スチャダラパーよりSHINCOが参加。
○ニュー・アルバムにSHINCOさんが参加するって言うから、どんなトラックを作ったんだろうってワクワクしてたら、まさか“契り”シリーズとは……。でも、日本語をワード・プレイして一つの物語を作るっていうのは、やっぱりスチャダラが元祖でもあるだろうから、スチャダラと“契り”が繋がったのは印象深かったね。
「自分達も超影響受けてますからね」

「スチャダラのワード・プレイは染みついてますからね。で、この曲なんですけど、マヤ文明が終わったじゃないですか」
○……凄い角度から話始めるなぁ(笑)。
「でも、終わったと同時に始まったとも思っていて、今の時代をオレはハーフタイムと呼んでるんですよ。で、それはアセンションの時期だとも思ってるんですよね」
○……う、うん。
「オレは昔、歩きながら気絶した事があって、それを改めて考えると、あれは幽体離脱だったんじゃないかなと思って、それからそういう本を貪り読んだんですよ、ええ」

「(ニヤニヤしながら聴いてる)」

「で、それもアセンションだなと思って、そこから宇宙の内容になったんですよね。手短に話したんですけど伝わりました?」
○う~ん……ごめん(笑)。だけど、宇宙の話だから、こういうスペーシーなワード使いになったんだね?
「そうなんです! あとは音源で聴いてくれれば分かると思います」

「マヤとかアセンションの話が気になる人はライヴ後の物販で吉野に直接訊いてください(笑)」
○SHINCOさんとはどんな作業をしたの?
「SHINCOさんにはまず、『“契り”とはなんぞや』って話をじっくりさせて貰って」
○SHINCOさんも良い迷惑だ……。
「で、SHINCOさんにネタになるレコードを持ってきて貰って、話し合いながら、それで組み立てていった感じですね」
○スクラッチものなのに歌詞カードにちゃんと歌詞載ってるのも戦慄しました。あんなの初めて見たわ。
「自分は結構、全体の構想を練ってから作るタイプなんですすけど、“契り”は完全に自分の世界に入り込み過ぎちゃって、もう訳分かんなくなっちゃって」
○まあ、内容も内容だからね……。
「で、上野君に『すんません、いま完全にクレイジーな状態に頭がなってます』っていったら、上野君は……」

「『そう。じゃあ、俺ちょっと走ってくるわ』って」
○助けないのか!
「俺が汗かいてどうすんだっていう(笑)。各自の事をそれぞれやるのが俺ら流です」


8. ヒップホップ体操第二
サ上とロ吉のライヴでは定番だった“ヒップホップ体操”。しかし“第一”のバック・トラックはサンプリングの枠を大きく飛び越えて、某大物バンドの楽曲をそのまま使った構成だった為、当然の如く音源収録は難しかった。しかし、今作の為に“第二”を制作し新たに収録。ライヴでの体操ムーヴも新しくなる……かも?
○サ上とロ吉の定番とはいえ、“体操”が音源化されるとは……。
「いやあ、悩んだんですよ。“第一”を踏まえた、ポップな感じでやるべきか、それとももっと新しい形が正しいのか……って」
○真面目か!
「で、KREAYSHAWNのアルバムを聴いてたら“SUMMERTIME feat. V-NASTY”って曲があって、それがスゴく夏っぽくて良かったんですよ。そこから、ラジオ体操を思い出して、夏の暑さと、そして寂しさを形にしたくて」
○ロマンチックというかなんというか……。
「なんだかんだ言っても、夏の終わりって一番切ないじゃないですか。その雰囲気を出したくて、『“SUMMERTTIME”っぽい夏の切ない雰囲気で』ってYASTERIZEにオーダーしたんですよね。向こうは当然『マジすか!?』って言ってたんだけど、届いたら、こんなに良いトラックで逆にこっちが爆笑するっていう(笑)」
○ものすごくセンチメンタルだし、良い曲が出来そうな泣きトラックだよね。リリックはホントにしょうもない内容なのに、『思いもよらず泣きそう』ってリリックの気持ちはよく分かる。
「YASTERIZEが俺らを理解してなかったらぶっ飛ばされても文句言えない(笑)。でも、最近は泣き系の曲が多いから、そこへのアンチテーゼでもあるんですよ」
○そして、この内容でZEEBRAさんの“STREET DREAMS”のリリックを少しだけ引用してるって言うのも笑ったな。あの曲のエモーショナルさを台無しにするっていう。
「自然と出て来たとはいえいい加減怒られるんじゃないかな…(泣)」
○“ぶっかませ”もそうだけど、ZEEBRAさんの曲からの引用が結構今回はあるよね。
「そう。それも自然に書いてったらそうなったから、『オレ、ジブさん好きだな~』って改めて思いましたね」


9. WHO'S LEADER!? feat. JAB
大阪は高槻を拠点に結成されたヒップホップ・クルー:高槻POSSE。そのフロント・マンであるJABと、ZZ PRODUCTIONの顔役であるサイプレス上野。その両者がクルーと率いる事の恍惚と不安、二つ我らにありという感情をリリックに塗り込めた一曲。ちなみに、両者ともクルーの前面には出ているが、リーダーでは無い模様。
「テーマ的に、JABが高槻POSSEのリーダーっぽいから呼んだっていうのもあるけど、大阪でライヴやる時は大体遊びに来てくれるし、スペアザとのライヴも見に来てくれたり、普通に仲良いんですよね。年下だけどもう何枚もアルバム出して頑張ってるけど、それを押し出さないでスゴく飄々としたりしてるのもスゴくいいなって。だから、JABとは一曲何かやりたいってのはずっと考えてたんですよね。で、JABも高槻POSSEのリーダーでは無いんだけど、なんかいつの間にかまとめ役みたいになっちゃってるし、オレもZZやDRM CREW(先輩方のSK8&グラフィティーCREWから始まり、今はただのドリーム周辺のボンクラ集団)においてそういう部分があるから、その苦悩を二人で書いたら面白いかなって。それで、そのテーマで一曲書こうかってメールを出したら、30分ぐらいでリリックの完成品が送られてきて」
○ずいぶん言いたい事が溜まってたんだね(笑)。
「『いつも思ってる事ですから』って(笑)。ZZも大変だけど向こうも大変だなと」
○でも、愚痴とか悪口で終わってないのが健康的だよね。
「褒めてますからね。ホントに愛すべき人間達だし」
○最近のZZはどうですか?
「最近はファニーじゃなくて、ストリート系のクルーになってきましたね」
○話題がハードコアなんだ。
「最近も▲▲▲▲が×××で■■だったりして」
○書けない書けない。次行きます。


10. YouTube見てます
今作でも屈指のメッセージ(?)ソング。実体験に基づき、ネット/TouTube時代にアーティストはどう立ち向かえばいいのかを、サ上とロ吉流に現代を斬ったと言っても良いような、そうでもないような気がする一曲。
○この曲で書かれた事は実際に言われたんだよね。
「それどころか一度や二度じゃないですよ。ホントに『マジでファンなんですよ!YouTubeとかで超見てて!』って言われて、『あれ、CDとかは?』って訊くと『いや、そういうのはちょっと』みたいな。それで『あの曲すごい好きで!』とか言われても、『全然好きじゃねえじゃん』って、そりゃ当然思いますよね」

○そうやってサ上とロ吉ってけっこう甘く見られたり、舐められたりしがちだよね。
「そうっすね~」
○でも、実は相当ハードコアな事はそろそろ世の中に伝わると良いね。
「舐めてかかるとスゲえ面倒くさい事になりますからね。俺、普通に怒るし。だから、イメージと違うってガッカリされたりもしますけど、そりゃ舐められたら腹も立つし、納得いかなかったら理詰めで追い詰める。普通に会話はしますけど、斜め狙ったり、どっかのアトラクションのキャラクターと間違えて易々と来んじゃねえって思うっすよ、ホント。俺達、人間だもの!」
○この曲に漂うオカルト感もかなり不思議な事になってるよね。
「KANYE WESTの “CLIQUE feat. BIG SEAN & JAY-Z”を下敷きに、それとTRAPを組み合わせたらどうなるんだろうなって、ドリームトラクターズでトラックを作ってたんですよ。そしたらどんどんオカルト方向に進んでいって(笑)」
○しかも、和風お化け屋敷のBGMみたいになってくのが、ドリームトラクターズならではな感じもあるよね。
「寺の鐘とか鳴っちゃって(笑)」

「それに賛美歌みたいなのが乗るのが超実験的っすよね!」

「お、ありがとう!」


11. 特にありません
ヴァース毎に3つのシチュエーションを描き出し、彼らの取り巻く状況をファニーに、しかし根本はシビアに提示していく。タイトルは新日本プロレスのレスラー:オカダ・カズチカ、通称「レインメーカー」の名言から。
「とりあえず、1ヴァース目の話は、クラブでむかつく女がいたって事なんですけど。最初に逢った時は向こうから話しかけてきたから、次に逢った時にはこっちから話しかけたら、目逸らされて『知ってるけど、知らな~い』とか言われてマジで腹が立って。よくよく聞いたら有名な面倒くさい女だったんですけど、そいつに対する怒りのヴァースですね」
○実は私怨にして個人攻撃たとは!。
「ホントあの時は怒りに満ちてたっすよね」
○周りに伝わるぐらい腹立ってたのか(笑)。
「クラブ帰りにtwitterでもその怒りをぶちまけて」
○上野君は呑んでtwitterやって爆発する事が多いよね(笑)。
「そしたらDJ 8MANが『熱い!』とか乗ってくれて、東海道線の中で良いヤツだな~って(笑)」
○ヴァース2だと、風営法的な所にも触れて。
「言い方は難しいけど、そういう事態が起こると、みんな一斉に中指立てて、それが絶対みたいなモードになっちゃうのがなんかしっくり来なくて。みんな『右向け右』じゃないけど、意見が一方に向きすぎな気がするんですよね。逆の意見や真ん中の意見が許されない空気になるのがなんか気持ち悪い。オレも実際にレギュラー持ってたクラブが深夜営業出来なくなったり、直に煽りも喰らってるから、風営法には腹が立つけど、でも急に『風営法が全て悪い』みたいな風潮になるのはちょっと変な気もするし、もうちょっと色んな意見があってもいいんじゃないかなって思うんですよね。もうちょっと落ち着こうぜって」
○そうやって色んな事を考えてるのに、結果「特にありません」ってタイトルなのはホントに捻くれてるよね(笑)。


12. GIVE ONE'S LIFE 4...
アルバムの最後を飾るのは、意外な程にシンプルに恋人たちの生活と希望が描かれたラヴ・ソング。「今までのオレはおんぶにだっこ/これからは引っ張るよ/さあ、手を繋ごう」と、ロマンティックなリリックも飛び出す、真心なリリックが印象的。
○これはもう……「よう言うたわ」って曲ですな。
「ホントに、この曲はこのままですね。この曲こそ解説は特にありません(笑)」
○「ゴメンナサイでもう済まさない」ってリリックもあるように、前作収録の“ゴメンナサイ”からの流れにある曲だと思うんだけど、“ゴメンナサイ”がちょっとファニーな内容に仕立てられてたけど、この曲は直球のラヴ・ソングだね。
「前作はテヘペロって感じだけど、そこから先に進んでもうちょっと大人な感じの内容にしようって。その大人な感じが『YES/NO枕』だって言うのが自分でもどうかと思うけど(笑)。でも、今の自分に起きてる事だから書くのは当然だと思ったし、照れずにおっぴろげて気持ちを書こうって。サビは43Kって人の「WE LIVE IN LOVE」曲から引用させて貰って、今回も歌いました」
○“ゴメンナサイ”に引き続き。ラヴ・ソングは歌うんだね。
「ラヴ・ソングは歌うでしょ~(笑)。ラップなんかダメだ!」
○思いが伝わらない(笑)
「ラップなんてお経みたいなもんだから!」
○ひどいラッパーだな(笑)。さて以上で「TIC TAC」の全曲解説は終了ですが、言い残した事は?
「特にありません!」
○言うと思った!
「さっきのマヤとアセンションの説明なんですけど……」
○それももういいよ!



サイプレス上野とロベルト吉野 『TIC TAC』 特設ページ
https://1fct.net/sp/tictac/

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TIC TAC
  • 2013.02.20 On Sale
  • PECF-1065 / felicity cap-166
    [CD] ¥2934

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PROFILE
サイプレス上野とロベルト吉野サイプレス上野とロベルト吉野
サイプレス上野とロベルト吉野、ニューアルバム「TIC TAC」全曲解説

マイクロフォン担当: サイプレス上野、
ターンテーブル担当: ロベルト吉野、
通称『サ上とロ吉』。

2000年にあらゆる意味で横浜のハズレ地区である『横浜ドリームランド』出身の先輩と後輩で結成。”HIP HOP ミーツ all グッド何か” を座右の銘に掲げ、”決してHIPHOP を薄めないエンターテイメント”と称されるライブパフォーマンスを武器に毎年120 本近くのライブを行っている。
2007年に1st アルバム「ドリーム」を発表、2009年には2nd アルバム「WONDER WHEEL」を発表している。その後、恵比寿リキッドルームでワンマンライブを成功させ、その模様を収録した「ワンダー・ホイール ザ ライブ」を発売。
2011年9月には、横浜・神奈川をコンセプトにしたミニアルバム「YOKOHAMA LAUGHTER」をリリース。同年11月、SPECIAL OTHERSコラボアルバム「SPECIALOTHERS」へ参加。
2012年3月7日に約3年ぶりフルアルバム「MUSIC EXPRES$」をリリース。アルバム収録曲「ちゅうぶらりん feat. 後藤まりこ」は、テレビ東京系『ゴットタン』エンティングテーマに決定し注目を集める。
2012年12月12日には、”THE ORIGINAL 045 STYLE”、” ハマの大怪獣” ことOZROSAURUS を迎えたシングル「ヨコハマシカ feat. OZROSAURUS」をドロップし、2013年2月20日に、4枚目となるアルバム「TIC TAC」をリリース。iTunes HIPHOP アルバムチャートで1 位を獲得。
2013年5月11日より、彼らのキャリア初となる全国8箇所のワンマンツアーを開催。
2013年9月には、彼らが様々なアーティストとコラボしてきた楽曲をロベルト吉野が狂気のノンストップMIX したアルバム「サ上とロ吉ミーツall グッドみんな」をリリース。更に12月には2枚同時発売となるベスト盤をリリース予定。

また、FM YOKOHAMA『YOKOHAMA RADIO APARTMENT』水曜日メインパーソナリティのレギュラー担当、TOKYO FM で放送された不定期プログラム『サイプレス上野の日本語ラップキラッ!』のメインMC や、bounce.com での伝説の連載「サイプレス上野のLEGEND オブ日本語ラップ伝説」が書籍化するなど話題を振りまき続けている。更に、ヒップホップ専門USTREAM 番組Amebreak presents「RAP STREAM」のメインパーソナリティ、TV 番組・CM でのナレーター、ファッション・カルチャー雑誌での連載、モデルとその活動は多岐に渡る。

ジャンル、世代を問わず様々な現場から 支持を受け、なにかと注目度の高い二人。
「未来のJAPANESE MUSIC シーンを担うアーティスト」へと邁進中!
今乗っとけいっその事! そしたら遊び放題一生保証!?


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