INTERVIEW

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日暮愛葉 「“18” aiha higurashi cherish my best 」 スペシャルインタビュー 第三回 アルバム全曲解説【後編】

  • 2014.04.18
日暮愛葉初のベスト盤『"18" aiha higurashi cherish my best』、もうお聴ききになっただろうか?
一箇所に留まることなく、パンクでロックでオルタナティヴで気ままな疾走を続ける一児の母。まったくもって見事なぐらいブレのない、清々しいまでに一貫した18年のキャリアを一望できる最高のベスト盤だ。まだの方は今すぐ入手して、フル・ヴォリュームで体験することを強くおすすめする。

そしてその『"18" aiha higurashi cherish my best』のリリースを記念しての愛葉と、新生シーガル・スクリーミング・キス・ハー・キス・ハーのバンマスにしてプロデューサーでもある中尾憲太郎のロング・インタビュー後編をお届けする。全21曲の制作背景・意図などを豊富なエピソードを交えて語り尽くした3時間。アルバム鑑賞のガイドとしても、シーガルからソロ、LOVRS.、THE GIRL、そして新生シーガルに至る18年の愛葉の歩みを知るにも最高の内容になっているはずだ。




10. Do what you want / THE GIRL
————LOVES.が終わって、THE GIRLという新バンドを結成します。これはそのセカンドの曲ですね。
愛葉 「THE GIRLは全部、憲太郎のプロデュースなんです」
中尾 「これは…最近すぎて(笑)」
愛葉 「たぶんこれぐらいの時期から、憲太郎も私も、シーガルのことがちょっと頭にあったと思うんだよね」
中尾 「ていうよりは、愛葉さんにとってTHE GIRLは、そういう初期衝動の取り戻しなのかなって…」
愛葉 「あっ、そうですそうですそうです。それをやろうと思った」
中尾 「すごいシンプルな形でね」
愛葉 「うん」
————私は冷牟田竜之さんのイベントでTHE GIRLのライヴを初めて見て、これこそ日暮愛葉だな、と思いました。めちゃくちゃかっこいい!と。ライヴ終わったあとで言いましたよね。
愛葉 「うん。なんかすごい褒められて嬉しかった。実際いいライヴができたしね」
————愛葉さんも興奮してましたよね。
愛葉 「そうそうそう!」
中尾 「うん、だから僕の中では(THE GIRLは)そういう位置づけ」
愛葉 「私もそう。そういうつもりで、このバンドを始めました。自分の初期衝動に忠実にやりたいなと。それがけっこう出てる曲だと思います」
————「やりたいことやったらいい」って歌詞も。
愛葉 「そうですね!歌詞にも出てる」
————それが今回のシーガルの再始動に繋がってくる。
愛葉 「ファーストのレコーディングの時に歌ったら憲太郎に“それってシーガルっぽいモードで歌ってますか”って言われたの。それで私は、あっそうかも!と言って。で“そういうの、シーガルモードに戻せるもんなんですか”って訊かれた」
中尾 「あー言いましたねえ!」
愛葉 「“うん、戻せるよ。すぐ、戻せるよ。切り替えればいいんだもん、頭の中を”って答えた」
中尾 「その会話した!覚えてます」
愛葉 「その時から、初期衝動、シーガルを始めた時の初期衝動と、THE GIRLを始めた時の初期衝動って似てるんじゃないかと思ったんじゃないかな、憲太郎が。“おれ、そっちの声の方が好きです”って言われたもん」
中尾 「うんうん」
愛葉 「アウトプットをシーガルにした声」
————ああ、なるほどね。ご本人としては、シーガルをやめてソロやってLOVES.をやって…という過程で、ご自分の中からそういった初期衝動が失われがちだった、という自覚があったんですか。
愛葉 「いや、失ってはいないですけど、単純にいろんなことをやりたかっただけです。いろんな自分の声、声っていろいろ出そうと思えば出せるんだって思って。出せるタイプの人なんだから、出してみようじゃないのっていう。で、いろんなプロデューサーにいろいろいじってもらったり、ほかのメンバーと一緒にやることで、新しい自分の表現方法を試したかったんです。初期衝動を失ったというよりは、もっとポジティヴにもっといろんな声で。ただ吐き捨てるように歌うんじゃなくて、新しい可能性を見つけたいなと。でもTHE GIRLをやって改めて気づいたのは、シーガルって実は、吐き捨てるようなイメージだけで、すごい表現は豊かなんですよね。曲調もそうだし。いろんな曲があって。だから、ずっと前からすごい冒険してるんですよね。だから、そっちの扉を開きたいなと。ある意味、それも初期衝動ですよね」
————ストーンズなんかもそうですけど、じつはいろんなことをやっていて、いろんな可能性があったけど、いつのまにか一定不変のロックンロールのイメージに収束していった。
中尾 「うんうん」
愛葉 「自分ですら錯覚してましたからね。(シーガルの)パブリックイメージみたいなものに引きずられて」
中尾 「はいはいはいはい」
愛葉 「だから今度機会があったら、いつからあたしって“オラオラオラ!”って言ってるキャラクターと思われるようになったのか、みなさんに聞いてみたいなと(笑)」
————コワモテは最初からコワモテだった気が…(笑)
愛葉 「いや、そうじゃないんですよ!いろんな映像をチェックしてたんですけど、すっごいおとなしいですよ、シーガルの最初の頃。曲は"You come to me,and give them back to me"とかやってるんですけど“ありがとうございまーす”とか普通に言ってたりするんですよ(笑)。だからエラそうにし始めたのは後期…」
一同「わははははは!」
愛葉 「いつどうしてそうなったのか、客観的に見てる人に聞いてみたいなと思って」
————なるほど。じゃあ自分でそういう初期衝動モードになりつつあるところに、中尾さんの一言があって。
愛葉 「うん、それはすごく印象的でしたね、私にとって」




11. evolution / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
愛葉 「これはムーグとコーラスでバッファロー・ドーターの大野由美子さんが参加してくれて」
————これは何に関する歌なんですか。
愛葉 「ええとね、『FUTURE OR NO FUTURE』を作るにあたって、タイトルを最初から決めてたんです。FUTUREにしてみてもNO FUTUREにしてみても、変わらなくそこにある普遍的なものって、<革命>だなって思ったんですね。革命とか改革とか。そこに<進化>って言葉がくっついてきて、で、鼻歌ですよ。ちょうど韻を踏むような歌詞が頭に流れてきたんで。今から考えると"NEW LIFE"(2004)とリンクするなって」
————revolutionじゃなくevolutionにした理由は?
愛葉 「revolutionには暴力がつきまとうけども、「進化」と暴力はそんなに近くないじゃないですか」
中尾 「なるほどね」
————じゃあ具体的に、この時なんらかの困難を抱えていたとか、そういうことではない。
愛葉 「ある意味抱えていた時期ですね。離婚とか。離婚と同じ時期ではないんですけど、それを振り返る時期でしたね。ポジティヴなステップを踏み始めた時期」
————なんか自分に言い聞かせているようなニュアンスも、感じられなくはない。
愛葉 「うん、そんなに自分と突き放してるわけじゃないし。そう受け取ってもらっても全然間違いじゃないと思います」




12. Silly Girl / 日暮愛葉
中尾 「もう一番アタマおかしい曲ですね(笑)」
愛葉 「ヘンな、不思議な曲です」
————エレクトロみたいな感じで始まって、途中で曲調が変わって。
愛葉 「このシンセみたいな音って、全部zAk(エンジニア)が入れてるんです。でドラムも、Qちゃん(阿部耕作)と、ティモ・エリスがLRで叩いてる。基本的にはニューヨークで録って、あとで日本で足したりアレンジしたり」
中尾 「とにかく変な曲ですね。混沌としている。大好きですけど(笑)」
愛葉 「よくこんなの思いついたなって。自分がばらまいたんですけど、その面白さの種みたいなものは。それをzAkとかQちゃんとかティモが肉付けしてくれた感じですかね」
————じゃあけっこう遊んだ曲。
愛葉 「もっとめちゃくちゃになりそうなところを止めたんですよ。わりと険悪になったりして」
中尾 「まったくコントロールできてない感じが、すごくいい感じに作用してると思うんですよね」
愛葉 「そうですね。みんながあっちゃこっちゃいってる感じのまんま録れてる感じですね。それを一切まとめようとしてない。これはシングル・ヴァージョンですけど、アルバム・ヴァージョンはもっとすごいです」
————歌詞も混沌としてますね。
愛葉 「そうですね!ちょっと病んでるなって(笑)」
————こういう歌詞も面白いですよね。わりと愛葉さんの歌詞って、断定口調のものが多いでしょ。
愛葉 「そうですね。あと<あたし>だったり<彼>だったり<彼女>だったり、登場人物がいる歌詞が多いけど、これはそういうのがないですもんね」
————今回特にそう思ったんですけど、曖昧な比喩みたいなものをあまりしないじゃないですか。言葉遣いもすごい直接的だし。
愛葉 「そうですね」
————だからすごく言葉が強くて、聞き手に向かってくる感じがある。これはやっぱり性格なのかなと思ったり。
愛葉 「あははは!」
————性格なのか創作上のポリシーなのか
愛葉 「両方でしょうね(笑)」
————そういう意味では、この曲はちょっと目先が変わっている。
愛葉 「そうですね!表現力アップしてますね!(笑)なんなんだろ…ちょっと自分でお伽話を書いてる感じですかね。ある愚かな少女の話」
————ちょっとヨーロッパのマイナーなアート系映画みたいな感じ。
愛葉 「まさに! そんな雰囲気で、頭の中は。でもみんなでめちゃくちゃになって作った曲で、とんでもないことになってますね(笑)」




13. 風穴 / LOVES.
愛葉 「"風穴"を作った時って"Feather"とかも作ってたんですけど、ちょっと精神的に不安定な時期で。すごく不安定でふわふわしてる気持ちが出てしまった、のかな。"Silly Girl"を病んでると言える自分とはまた全然違って。ほんとに精神的に困ってたり迷ってたり辛かった時期だったので…ちょっと自分の…立ってるところ…じゃないところに立ってる自分を…想像して心が落ち着いたっていう曲。その時立っていたところが辛すぎて、逃避したかった。…というと語弊もあるんですけど、違うところに自分がいること…にするとちょっとラク、みたいな」
————ああ、なんかわかる気がします。
愛葉 「すがる、とかじゃないんですけど、その手前でしたね、ほんとに」
————自分の印象ですけど、反復も多いし、ちょっとシューゲイザー的な音でもあって、すこし現実逃避っぽいところもある。愛葉さんのほかの曲とはちょっと毛色が違うなと。
中尾 「ドリーミーまでいかないけど…」
愛葉 「まあそうだよね」
————こういうシューゲっぽい曖昧な曲って、あまりやらないじゃないですか。
愛葉 「そうですねえ。"Feather"と"風穴"は特にそうなんだけど…」
中尾 「ふわっとしてる部分はありますね」
愛葉 「うん、キレッキレじゃない感じの」




14. A shotgun and me / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
————次はまた極端な振れ幅ですねえ。
愛葉 「(笑)ほんとに」
————ハードだし、歌詞も2行しかないし(笑)。
愛葉 「はい。これはもう。ライヴの定番ですね。絶対にやってた。中期から後期」
————客の反応も。
愛葉 「よかったですねえ、はい。シーガル特有というか、私の中ではシーガルの黄金率というか。急にうるさくなって急に静かになって、という反復ですね」
————こういう曲をライヴでやると、自分の中でスイッチが入るってところはあるんですか。
愛葉 「入りますねえ。めちゃめちゃ」
————シーガルを語るには絶対欠かせない曲ということですね。
愛葉 「あと、このギターの弾き方なんですけど、たぶん普通にギターのうまい人は、弾かないであろう弾き方をしているんです。あたしはコードも知らないし、ギターもうまくないですけど、何のコードでもないものが混じっている、不思議な。友達がコピーしようと思っても、弾けないって言われる」
————チューニングは?
愛葉 「普通のチューニングなんですけど、不思議な弾き方によって、おかしいチューニングに聞こえるみたい。たぶん手の動き方とかヘンなんでしょうね。クセなのかな?」
中尾 「クセでしょうね」
愛葉 「その代表格なんで、入れてみました(笑)」
————このアルバムを聴きながらメモをとってたんですけど、この曲は<ギターロック>って書いてある(笑)。
愛葉・中尾 「あはははは!」
————ほかのもギターロックなんだけど、なんでこれだけ「ギターロック」と書いたのか。
愛葉 「(笑)」
中尾 「あ、でもわかりますね。ギターがフィーチュアされてる感じが」
愛葉 「確かに歌よりギターって感じですよね」



15. idiots / THE GIRL
中尾 「これ、オレけっこう覚えてますよ。アルバム全体を通してのテンポ感が似てたから、オレが疾走感ある曲を作りたいと思って。けっこうミッド・テンポの曲が多かったから。なので速い8ビートみたいな曲がほしいと思って。みんなでホワイトボードに書きながらネタを出していったのを覚えてますよ。レコーディングの直前に作ったんですよ。バタバタと」
————ああ、アルバム全体のバランスをみて、こういう曲がほしいとなって、急遽作ったと。
中尾 「はい。"idiots"でPVを作るってなって、オレびっくりした記憶があるんですよ。いいのそれで?って(笑)オレとしては、そういう作り方をしたんで、B面感が強いというか」
————言ってみれば、穴埋めみたいに作った曲だから。
中尾 「そうそう。バランスをとるためにね」
愛葉 「それ、だいぶ言い方悪くない?(笑)あたしの中ではあれ、すごいA面感があるよ(笑)」
中尾 「そうそう。ラモーンズみたいなパンクっぽいのを目指したんですよね。ラモーンズの"アウトサイダー"って曲があって、途中でヴォーカルが変わるんですよ。転調じゃないけど。なのでこの曲も、サビで明るくPOPになるのを目指したんです。最初は(林)束紗との掛け合いのヴォーカルにしようと思ってたんですよ」
愛葉 「ああ、言ってたね!結局ダブルっぽいヴォーカルになったけど」
————歌詞はどういうことを歌ってるんですか。
愛葉 「これはダメダメなカップルの歌です。<お話>ですね。自分とはぜんぜん関係ない。でもそういう恋愛、嫌いじゃないです」
中尾 「はははは! シド&ナンシーみたいな?」
愛葉 「そうですそうです。カート・コバーンとコートニー・ラヴとか」




16. Pink soda / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
————次にまた古い曲が登場しますね。年代差が15年ぐらいありますけど、ぜんぜん気にならないですよね。
中尾 「そうなんですよねえ」
愛葉 「そうかもしれない。曲としては古さはまったく感じないですね。作ったのはだいぶ前だなって感覚はもちろんありますけど」
————今の自分だったら出せない、作れないような表現があるってことですか。
愛葉 「うーん、出せなくはないと思いますね。また作ろうと思えば作れるだろうけど、ただ…この頃の楽曲の作り方って変わってるなあって、自分でも思う(笑)。自分でも…まるで音楽を知らない人が作っているような曲だなと思うんですよね、シーガルの初期の曲は特に。鼻歌度が高かったんだと思いますね。鼻歌を重視してた。ものすごく。で、現在の私はその作り方にまた戻ろうと思ってるんです。新シーガルでは」
中尾 「それ、いいと思います」
————鼻歌度が高いとどうなるんですか。
愛葉 「必然的に曲が面白くなりますよね」
中尾 「それ、なんかわかります」
愛葉 「うん。やっぱり変ですよ。脈絡がなかったりとか。この曲もすごいじゃないですか。Aメロとサビのつながりが、切って別の曲にしてもいいぐらいバラバラで。そういうのが初期のシーガルには多いんですよ。すごいバラけたアイディアが一曲に脈絡なく入ってる。我ながら面白いなあと思って聞いてしまいますけど(笑)」
————今はどういう作り方が多いんですか。
愛葉 「鼻歌が中心であることは変わりないんですけど、ほかの人のアイディアも面白いから、そういうのを取り入れていくと、変なところは減りますよね」
————突飛なところが。
愛葉 「そうですね。バランスがとれてきちゃう、自然と。だからもっと自分の我というか、シーガルの初期ーー後期ですら、ちょっと違うんですよーーの自分のチャンネルに、念じて合わせようとしてるんです。念じるしかできないけど(笑)」
————18年のキャリアを積んで、経験も豊かになってるし、ギターもうまくなってるだろうし、ヴォーカルも表現の幅が広がってるわけですよね。だから、昔と同じ作り方をしても昔と同じにはならないんじゃないですか。
中尾 「うーむ…」
愛葉 「それはねえ…その通りなんですよね。ギターは大してうまくなってないんですけど、いろんなものを聴いたり弾いたりアイディアを取り込んできて、経験値は高くなってるわけですよね。経験値の分厚さを、いまさら細いものには変えられないじゃないですか。学んできちゃったから」
————知ってることを知らないことにはできない。
愛葉 「うまくなっちゃったら下手にはなれない。よくあたし、バンド始めたばっかりの人に言うんですよ。“そのまんまがいいよ”って。初期のシーガルのライヴでも“このまんまでいきなよ”って、よく言われたんですよ(笑)。その先輩方の気持ちが、いますごくよくわかります。だけど、いまチャンネルを一生懸命合わせようとしてる自分が生み出す曲も、すごく楽しみです。経験値を積んだからつまらなくなるのか、それともさらにおかしなことになるのか。出してみないとまったく想像はできないですけど」
————経験を積むってことは、こういう風にやればこうなるって予測がついてくるってことですよね。予測がついちゃうと危険回避にはなるけど、何が起こるかわからない未知数のスリルはなくなっていくかもしれないですね
愛葉 「そうなんですよね。スリルを味わいたいから。これ最後にどうなるんだろう、みたいな曲作りをしたいです、また」
————この"Pink soda"なんかは、そういう怖いもの知らずな感じが出てますね。
愛葉 「そう。この曲に限らず初期の曲のいくつかは、自分でもえっ!って、誰もいないのに振り向いちゃうような驚きがあるんですよ。これ今できるかなあって思ったりもするけど、でもやってみる余地はあるなと」
————中尾さんはそこでどういうサポートができると思いますか。
中尾 「経験を積んで、機材も便利になって。そういう技術的な進化から新しいアイディアが生まれてくることもありますけど、必ずしもそうじゃない。効率はよくなるけど、アイディアの源泉は変わらないと思うんです。愛葉さんがそういうところに戻って、新しいアイディアを生み出すにあたって、オレの役割はそのアイディアを効率よく汲みとって、形にしていればいいのかな、と思っていますけど」
愛葉 「そうだね。あたしのアイディアを殺さずに活かす方向でメンバーなりに伝えてほしい」
中尾 「そうそうそう。愛葉さんがめちゃくちゃなことを言い出しても…」
愛葉 「そうそう。“んん?”と思っても、さてこれをどうやって生かして形にするかって作業に繋げていければ…」
中尾 「“それは楽器の音なの?”みたいな(笑)」
愛葉 「“これは歌なの?” とか(笑)」
————鼻歌だからわからないわけだ(笑)。
中尾 「そうそう(笑)」
————でも愛葉さん自身が自分のアイディアを“これはないな”と打ち消しちゃったら、あまり意味がないですよね。
愛葉 「そうです! その通りなんです。おかしなアイディアほどとっておいた方がいいなと」
中尾 「うんうん」
————なにか思いついたら、ボツにせずキープしておく。
愛葉 「そう。このプロジェクトがスタートしてから、どんなどんなアホみたいなフレーズも、全部とってあります。それが当時シーガルの時もやってたことだから。よく憲太郎は<真夜中に書いたラブレター>っていうけど」
中尾 「朝に読みたくないっていう(笑)」
愛葉 「それでもいいんです。その読みたくない感じが面白いかも」
————自分が恥ずかしくても、人にはすごく面白いって場合もありますからね。
愛葉 「そうです。だからそこで切り捨てないで、判断してくれる人がもうひとり増えたっていう。すんごいのが届くかもよ〜〜」
中尾 「わははは!」
愛葉 「初期衝動的なところをわかってて、あたしのめちゃくちゃさもわかってて、なおかつ経験も豊富。そういう人って、この人しかいないんですよ」
中尾 「光栄です(笑)」




17. NEW LIFE / 日暮愛葉
————ソロのファースト・シングルです。
中尾 「これは、歌に振り切ったんだなって感じがしますけどね」
愛葉 「そうですね。これはソロになって初めてニューヨークで録ったんですけど」
————これは名曲ですよね。
愛葉 「いい曲だと思います。楽曲としての完成度も高いし、歌詞の内容も、とても充実していると思うんですけど、これは…書いた時は急性咽頭炎で」
中尾 「ほーお」
愛葉 「喉がめちゃめちゃ腫れてるって状態で。点滴打ちながら作った曲なんです」
————鼻歌を。
愛葉 「鼻歌作りの時。できないできないって電話を富樫くん(当時のディレクター。現マネージャー)にして。でもある日パッと視界が広がって。ああできた!って。鼻歌というよりも、鼻歌からさらに作りこんだ感じです。メロディはみんな鼻歌ですけど、構成やアレンジは」
————この曲に限らなくてもいいんですが、歌詞が英語になったり日本語になったり入り混じってることがありますね。これはどういう判断なんですか。
愛葉 「リズムに乗るか乗らないかで、まずざっくり決めて。全部英詞なんですけど最初は。どうやって作ったかなあこれ…」
中尾 「わからせたいかわからせたくないかっていうのもあるんですか?」
愛葉 「伝えようとは思ったかも、これ作る時に。伝えなければいけないっていうか伝えたい、と。」
————つまり自分の歌いたいことを歌うだけじゃなくて、それを聞く人にわかってもらいたい、と。そう強く思ったのは、この曲が初めてだったんじゃないですか。
愛葉 「うーーん…そうですね。確かにシーガルのころは、日本で伝わらなくてもいいやって思ってたんですよ。だけどソロになってYUKIちゃんに曲を書いた時ーーあれはそもそも自分のために書いた曲なんだけどーーあたりから、多くの人に聴いてもらいたいってスタンスに変わっていきましたね」
————じゃあそういう気持ちになっていた時。
愛葉 「はい、気持ち的にはそうです。色々なタイミングがあったんですね」
————そういう意味では転機になった曲。
愛葉 「そうですね。幅広く伝えるために日本語を差し込んだりしたのは、新しいステップでした」
————結果として、いろんな人にも届いた
愛葉 「そう思います」




18. See ya comin' in / LOVES.
愛葉 「これもライヴでやってない…」
中尾 「やってないですねえ。1,2回しかやってない」
————盛り上がりそうな曲なのに。
愛葉 「そうなんですけどねえ。当時は即興感強いライヴをやってたね。サックスも入って。ちょっとエンタテイメント性もあったしね。あたしもほとんどハンドマイクで歌ってたし。そういうところでこの曲は省かれてしまったんですね」
中尾 「好きな曲なんですけど」
————中尾さんが入れたがったんですね。
中尾 「そうなんですよ(笑)」
愛葉 「これ、すごい変わった曲で。いきなりずーっとサビみたいな状態で続くんですよ」
中尾 「すごいかっこいいですよ。ヴォーカルもすごい」
愛葉 「地声で、血管切れそうなぐらい高い声を出してる。裏声じゃなくて」
————今のモードだったら、これをライヴで演奏するのはありですよね。
愛葉 「ああ!やりたいですね。歌うと血管切れそうだけど。あはは!」
中尾 「かっこいいですよ!絶対」
————そういう曲をあえて入れてるってことで、このベスト盤のコンセプトも見えてきますね
愛葉 「うんうん」
————今後日暮愛葉がどんな方向にいこうとしてるのかも。
愛葉 「うんうんうん。なるほど」
中尾 「なるほど(笑)」




19. School lunch / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
中尾 「かっこいい曲ですねえ」
————ですね。ラップっぽい。
愛葉 「そうですね。シーガルの超初期なんですけど。ダメダメな、スカスカのヒップホップ」
中尾 「変な音いっぱい入ってますよね」
愛葉 「うん。音作りにすごい脳みそを使ったので。最初はドラムでリズムを叩いててもらって、鼻歌をそれに乗せて、それにいろいろな音を乗っけていこうという作り方ですね。たとえば途中の笑い袋の笑い声とか…」
中尾 「あれ笑い袋なんだ(笑)」
愛葉 「買ってきたのよちゃんと(笑)。マイクを当てて録って」
————ピアノも入ってますね
愛葉 「あれは(小山)ナオが弾いてますね。このころってほんと面白くて、サビの♪what you want next♪とか♪what you do now♪のところ、ダブルとかハモリでヴォーカルを入れてるんですけど、揃ってないんですよ。♪next♪って歌ってるのに♪now♪って重ねてみたり。すごい適当なんですよ。そういうところはぜんぜん気にしてなかったんだなと。でも今はそこをきちんと揃えたりしていて、そういうところで面白さって薄れていくんだなって」
————そういうことも含めて、初期のシーガルの混沌とした可能性のひとつを象徴した曲ですよね。
愛葉 「うん、そうですね」
————ゴリゴリのロックばかりやってたわけじゃない、という
愛葉 「そうですそうです。シーガルの中に<おもしろ小部屋>みたいなものがいっぱいあるとしたら、これはそのひとつですね」
————これは今度のシーガルのライヴでもハマりそうですね。
中尾 「もうリハやってます。めっちゃいいですよ」
————歌詞もキャッチーですね。
愛葉 「そうですね。でも実はこの歌詞は意外に暗いんですよ。これ自分の経験なんです。そこにアメリカでの生活をまぜて。あたし学校でいじめられてたんで、その経験と、アメリカのご飯がまずいって話をかけて」
————この「ランチ」っていうのはなんらのメタファーですよね。
愛葉 「メタファーでもあります。なんというか…自分の場所に行きたいけど、自分の場所じゃないところに来ちゃってる。そのズレみたいなものを出したかった」
————自分の居場所がないという感覚。
愛葉 「そうですそうです。これじゃないんだよ、って感覚を、ランチにたとえてる。実際にまずかったですけど(笑)」
————これは17年前に出した曲ですけど、今や一児の母である身としては、どういう気持ちで歌うんですか?
愛葉 「あはははは!」
中尾 「面白い!」
愛葉 「そうですねえ…あたしもこれ書いてて、ウチの親が読んだらどうしようって思ってた(笑)。まあ読むのだろうけど」
中尾 「読むんだ!(笑)」
————娘さんがこんなこと歌ったらどうですか?
愛葉 「すごいじゃん!って思いますよ!(笑)」
————親から娘に受け継がれていくわけですね(笑)
愛葉 「ねえ」
————ライヴでも盛り上がりそうです。
愛葉 「この曲をほんとに好きな人って多いんですよ。人気のある曲なんですよね」




20. Seventeen / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
————これも初期シーガルの代表曲ですね。
愛葉 「鉄板っていうか。"Angel"と”Seventeen”って、世代を超えて人気があるんですよ。あたしぐらいの世代でも、もっと上の方でも、もっと若い子でも、同じような感情を共有できる不思議な曲で」
————メロディが童謡みたいで、すごく親しみやすいですね
愛葉 「これ鼻歌をギターの単音にあわせて歌ってるだけなんですけど、なんか浸透しやすいみたいで。偶然生まれた曲なんですけどね」
————このアルバムでもバラードっぽい曲ってこれしかないから、そういう意味でもすごく印象的でもあります。
愛葉 「あー、そうですねえ」
中尾 「最後にシンセがちょろっと出てくるじゃないですか。あれは何なんですか」
愛葉 「あれはねえ、こだわって入れたんだけど、なぜそう思ったかは覚えてない(笑)。どうしても入れたかったから入ってると思うんだけど」
中尾 「急に思い出したように入ってくるから(笑)」
愛葉 「そういう風に、思い出したように入ってくるとか、突然ベースの音がでかくなるとか、そういうのが好きなんですよ。一瞬だけ。<一瞬だけ>っていうのが好きで、だいたいの曲になにかあります」
————それはその場の思いつき?
愛葉 「いや、事前に考えてます。この時もちゃんとシンセを用意して。どういう音がいいか、どういうフレーズにするか、ちゃんと考えてる。なぜそう思ったかは覚えてないけど。でも自分らしいなとは思う。入れるタイミングとか。すっごい、その時のあたしっぽいと思う」




21. Angel / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
————いよいよ最後の曲です。
愛葉 「これは基本スリーコードで反復が多くて」
————これは日暮愛葉のポップ・センスが発揮されてますね。ちょっと60年代ぽい感じが。
愛葉・中尾 「おお〜〜〜」
————あれ、違いますか?
愛葉 「ぜんぜん予想だにしなかった(笑)」
————モータウンぽいと思った。
愛葉 「へえ〜〜〜新しい(感想)」
中尾 「なるほど…」
愛葉 「でも確かに昔のモータウンってこういうメロ反復みたいなのが多かったかも。あたしにとってはやっぱりラモーンズかな」
————なるほど。でもラモーンズのルーツがどこにあるか考えたら、60年代風というのもまんざら的外れでもないかも。
愛葉 「そうですね。あ、ほんとだね。いいこというね(笑)」
中尾 「なるほど…」
愛葉 「でもラモーンズはそんなに詳しくないんですよ。ナオとかはすごい好きだったんだけど、私はそんなにハマらなかった」
————なぜ?
愛葉 「うーん、私にとっては新しくなかったから。みんなが好きな気持ちはわかるし、私も好きだけど、ただハマるほどではなかったのは…もっと突飛なほうが好きだってことかな。ソニック・ユースとかジェイムス・チャンスとかプッシー・ガロアとかクランプスとか。ラモーンズって安定感があるじゃないですか、楽曲に。すごい覚えやすいしよくできてるし、みんなで共有できる。でも私はそうじゃない方向に行きたかったんですね」
————ああ、すごくわかります。で、この"Angel"は、最後に“好きなところに行かせて”という歌詞で終わりますね。で、最初の"Down To Mexico"も、“あたしはあたしの好きなところへ行く”と歌ってます。意識したかどうかわかりませんが、符合してますね。
愛葉 「ああ〜〜〜(苦笑)こう見えてわりと気を遣うタイプなので…」
————はい。
中尾 「ふふふ…」
愛葉 「やりたいことやって、言いたいこと言ってるようで…わりとおとなしいんですよ。人の顔色見るし。だから…歌だと自分を解放して、自分の言いたいことをメロディに載っけて伝えることができる。伝わらなくても仕方ないけど…うん、だからいつもどっかに行きたいんですよね。どこかに飛んでったり消えてったりするのが歌詞の中にすごく多いというのは、小野島さんにインタビューで何回も言われてるけど(笑)」
中尾 「わはははは!」
————…(汗)そうだっけ?
愛葉 「そう!(笑)最後にどっかに飛んで行きますよねって言われたのを覚えてる」
————10何年前と同じ感想を言ってるってことか…(笑)。
愛葉 「(笑)そうそう」
中尾 「(笑)面白いすねえ!」
————進歩がなくてスイマセン(笑)。
愛葉 「でも、いいとこ突くんですよ小野島さん。だから…今後もどっかに飛んでいったりやりたいことやらせろって歌い続けるんだと思います(笑)」
————自分がそうなりきれないから、せめて歌でうたうという気持ちはわかる気がします。
愛葉 「歌だからこそ、誰を傷つけることもなく、でも自分の表現としてしっかり伝えられるんですよね」
————…最後は綺麗にまとまりましたね!
愛葉 「(安堵したように)はああああ〜〜〜(笑)」
中尾 「すげえなあ、面白いなあ」
愛葉 「面白いねこれ。でも疲れた〜〜(笑)」
interview & text : 小野島大 (音楽評論家)
photo : yu-co ishikawa




日暮愛葉SPECIAL WEB
http://1fct.net/sp/aihahigurashi-18
 -
  • 2014.04.16 On Sale
  • PECF-1095 / felicity cap-198
    [CD] ¥2,100 with tax

<TRACK LIST>

  • Down To Mexico / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • No star / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • No telephone / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • Sentimental Journey / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • ユメミタイ(cherish my life) / 日暮愛葉
  • What you gonna do babe? / LOVES.
  • accidentally / 日暮愛葉 And Loves!
  • You come to me, and give them back to me / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • Brain Washer / LOVES.
  • Do what you want / THE GIRL
  • evolution / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • Silly Girl / 日暮愛葉
  • 風穴 / LOVES.
  • A shotgun and me / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • idiots / THE GIRL
  • Pink soda / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • NEW LIFE / 日暮愛葉
  • See ya comin' in / LOVES.
  • School lunch / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • Seventeen / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • Angel / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER


PROFILE
日暮愛葉Aiha Higurashi SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HERシーガルスクリーミングキスハーキスハー
SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER日暮愛葉:Vo&G
中尾憲太郎:B&Cho *Crypt City, younGSounds
おかもとなおこ:Dr *つばき, THE GIRL, DQS
蓮尾理之:Key *385, bonanzas, THE JETZEJOHNSON
一ノ瀬雄太:G *快速東京
moe:Cho *Miila and the Geeks, Twee Grrrls Club

http://www.sskhkh.com/
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  • 2014.04.16 On Sale
  • PECF-1095 / felicity cap-198
    [CD] ¥2,100 with tax

<TRACK LIST>

  • Down To Mexico / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • No star / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • No telephone / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • Sentimental Journey / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • ユメミタイ(cherish my life) / 日暮愛葉
  • What you gonna do babe? / LOVES.
  • accidentally / 日暮愛葉 And Loves!
  • You come to me, and give them back to me / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • Brain Washer / LOVES.
  • Do what you want / THE GIRL
  • evolution / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • Silly Girl / 日暮愛葉
  • 風穴 / LOVES.
  • A shotgun and me / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • idiots / THE GIRL
  • Pink soda / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • NEW LIFE / 日暮愛葉
  • See ya comin' in / LOVES.
  • School lunch / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • Seventeen / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER
  • Angel / SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER