INTERVIEW

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downy青木ロビン×やけのはら スペシャル対談

  • 2014.04.23

downy初のリミックス・アルバムを記念してのスペシャル対談、第2弾。今回ゲストに迎えたのは、ラッパー、DJ、リミキサー、バンドなど、幅広い活動で注目を集めるやけのはら。前回のFrgmentとlenoは〈downyチルドレン〉だったが、やけのはらはリミックス・アルバムを通じてdownyと初顔合わせとなった。果たして、やけのはらはdownyをどう見たのか。やけのはらと青木ロビン、共に多才ぶりを発揮する二人が、いま初めて膝を交えて語り合う。

———— お二人は今回のリミックス・アルバムを通じて初めて知り合ったそうですね。それまでやけのはらさんはdownyにどんな印象を持ってました?
やけのはら 「正直、これまで聴いたことはなかったんですけど、存在は知ってたし、〈こんな音じゃないかな〉とイメージするくらいの情報はあったんです。それで今回初めてちゃんと聴いて、作品も面白かったけど、それ以上にライヴに圧倒されましたね。バンドのアンサンブルとかポリリズムとか、作品で聴いたあの複雑な音をそのまま全部ナマでやるのかと。そういう技巧的な面もスゴかったし、構築された世界観というか、美意識にびっくりしました」

青木 「ありがとうございます。僕もやけのはらさんの名前だけは知っていて、めっちゃカッコいい名前だな、と思ってたんですよね。リミックスもするし、DJもラップもトラックメイキングもする。どれだけ多才!!と思ってました」

やけのはら 「僕は自分では多才だとは思ってなくて、結局アウトプットの形が違うだけで全部音楽の表現に過ぎないんですよね。それに比べて青木さんは音楽以外のこともやられてるじゃないですか。飲食店とか服屋とか。僕は会社勤めとかしたことないから、自分がそういうことをやるなんて考えられなくて。青木さんは、音楽以外のことをやる時は意識を切り替えてるんですか? それとも同じ感じなんですか」

青木 「僕も19歳くらいから音楽しかやってなくて、運良くそれで食べてこれたから、そこにずっといても居心地良かったんですよね。でも、世の中は衣食住が足りていれば、音楽なんてほんとはいらないんじゃないかってふてくされていた時期があって。そんな時に『ディナーラッシュ』という映画を観て、自分も飲食店のオーナーになりたいと思ってしまった。他にもやりたい事をやりたいという気持ちがだんだんデカくなってきた時に、一回、音楽をバシッとやめてみようと思ったんです。その少し前からアパレルの仕事は始めていたんですけど、downyを続けるには毎日練習しないと無理だし、音楽と別の仕事を平行してやっていこうとしたら必ずどっちかに迷惑をかけてしまう。それでまず、アパレルの仕事を軌道に乗せて、じゃあ、次、ということで飲食店、店舗デザインを始めたんです」

———— そうやって、ひとつひとつ形にしていった。
青木 「そうです。いろいろトラブルを抱えつつでしたけど。それで、ひと通りやりたいことをやってみて気付いたのは、すべて音楽に繋がってるということだったんです。例えば、アパレルでミュージシャンのものを作ることが多くなったんですけど、同じ黒でもジャンルによって求めている黒のイメージが違うから、音楽のことを知らなきゃいけない。カフェだったら店でどんな音楽をかけたら居心地が良いかとか。結局、自分がやってることは全部音楽に関係しているんだとわかった時に、もう一回音楽をやりたいと思ったんです」

やけのはら 「なるほど。すべて繋がっているものがあるというか

青木 「やけのはらさんは音楽のほかにやってみたいことはないんですか?」

やけのはら 「う~ん、いまパッと浮かんだのはデザイナーですかね。僕はもともと達者にギターを弾いたり、歌ったりするタイプじゃないし、DJとかミックスというのは編集作業だと思うんですよね。もともと美術学校に行ってたというのもあるし。ただ、僕は何事にも時間がかかるほうなので、現世ではデザイナーはできないなって(笑)。人生が2回あればデザイナーやってみたいです」

青木 「でも、うちのギターの裕さん(青木裕)なんか、ギターを始めたのがすごく遅くて、20代後半くらいからと聞いてますよ。とにかくひたすら練習して。それで今はデザイナーやイラストレーターもやってますし」

やけのはら 「羨ましいなあ。ギターはずっとやりたいと思ってるんですけど、まだ始めてなくて。でも、ギターは諦めていないので現世でやろうと思ってます(笑)」
———— 今回のリミックス曲について話を伺いたいのですが、「雨の犬」を手掛けてみていかがでした?
やけのはら 「難しかったですね。ヴォーカルだけを際立たせたバンドじゃないと思うんですよ、downyって。アンサンブル全部がグループのカラーになっているから、どこを切っても成り立たないというか。でも、出来上がった曲を聴いて、結局どこを残してもdownyになるんだって思いましたね。アルバムではいろんなアーティストがいろんな解釈でリミックスしていますけど、全部downy色に染まってるし」
———— 今回のリミックスのポイントは?
やけのはら 「ライヴを観た時のポリリズム感や、サイケデリックなフィーリング、抑制されたニュアンスとかを、自分なりに音に置き換えていきました。それが成功しているかどうかはわからないですけど」

青木 「いや、カッコ良かったですよ。特に後半、スネアが徐々に足されていくとことか」

やけのはら 「すごいマニアックなポイント(笑)、ありがとうございます」

青木 「あれだけで熱量があがる、というのは僕らがもともと好きな手法だし。イキ切らないところがいいですね」
———— downyは歌詞も独特だと思うんですけど、リミックスする時に歌詞は重要だったりしますか?
やけのはら 「一番大きいですね。リミックスは曲の中心軸だけを残して、まわりの衣を付け替える作業なんですけど、日本語で歌詞があるとどうしてもそれが主軸になってくる。でも、downyの歌詞は音的に聞こえるので、ロビンさんのヴォーカルをひとつの音として捉えてリミックスしました。downyはヴォーカルを軸にして曲を作っていない気がしたんですよね」

青木 「そうですね。サウンドに溶けるようにというか、楽器として考えてますね」

やけのはら 「例えばギタリストって、ジャンルやバンドによってプレイも変わるじゃないですか。青木さんのヴォーカルもそんな感じがするんですよね。downyというバンドだから、こういう歌い方をしているというか。歌詞とか発声とか、downyというバンドのコンセプトありきという印象がある」
———— やけのはらさんはリミックス・アルバム『SELF-PORTRAIT』をリリースされたばかりですが、やけのはらさんにとってリミックスの面白さってどんなところですか?
やけのはら 「僕は自分のスタイルを決めて、どのリミックスもそのやり方で通すタイプじゃないので、曲ごとにいろんな解釈を考えていくのが楽しいですね。大喜利みたいな感じというか。ハズしすぎてもダメだけど、オリジナル曲の〈パート2〉みたいな感じでも面白くないし。そういう案配をいろいろ考えながらやってます」

青木 「毎回名前が変わっているのが気になってたのですが、毎回アプローチが違うから、名前が違うんですか?」

やけのはら 「そうですね。副題みたいな感じ。今回はTB303という楽器を使ったから、こういう名義(YAKENOHARA 303)に」
———— 青木さんはやけのはらさんの音を聴いて、どんな印象を受けました?
青木 「『SELF-PORTRAIT』の音はもらったばかりでまだちゃんと聴けてないんですけど、去年出た『SUNNY NEW LIFE』を車の中でよく聴くんですよ。凄く移動感があってカッコ良いですよね。ムーヴィーっぽいというか。うちらは絵というか、動かない感じがあって」

やけのはら 「ああ、なるほど。面白いですね、絵っていう表現」

青木 「僕はそこを脱却したいと思ってるから、やけのはらさんの移動感というか、その気持ち良さが羨ましいんですよ。downyの曲は完成した段階で動かないというか、〈今日は雨だから、いつもより良い感じに聴こえる〉みたいなものがない。それが良いことなのか、悪いことなのかわからないですけど(笑)。」

やけのはら 「曲の世界観がまりにも構築されているわけですね。でも〈絵〉感のあるアーティストって少ないから、それはそれで良いんじゃないですか」

青木 「いやいや、新たな刺激として、さらに変わっていきたいと思ってて」

やけのはら 「じゃあ、トリックアート的な感じで、聴き方によって目の位置が微妙に違うとか(笑)」

青木 「それヤバイですね(笑)
逆から聴いたら別の曲になってるとか(笑)。いろいろ挑戦してみます」
Text by 村尾泰郎

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  • 2014.03.19 On Sale
  • PECF-1092 / felicity cap-195
    [CD] ¥2530

<TRACK LIST>

  • 十六月 downy resonance mix
  • 曦ヲ見ヨ! Fragment remix
  • 椿 Ametsub remix
  • 春と修羅 Geskia remix
  • 黒 Olive Oil remix
  • 或る夜 mergrim remix
  • 時雨前 Taigen Kawabe remix
  • 「  」 zezeco remix
  • 雨の犬 YAKENOHARA 303 MIX
  • 赫灼セルロイド ATSUKI remix
  • 燦 SUNNOVA remix
  • 十六月 Fragment remix
  • 下弦の月 dark reflection version remixed by 石橋英子
  • 時雨前 munnrai remix
  • 時雨前 GuruConnect remix
VIDEO


PROFILE
downyダウニー
downy青木ロビン×やけのはら スペシャル対談

2000年4月結成。メンバーに映像担当が在籍する、特異な形態をとる5人編成のロック・バンド。音楽と映像をセッションにより同期、融合させたライブスタイルの先駆け的存在とされ、独創的、革新的な音響空間を創り上げ、視聴覚に訴えかけるライブを演出。

2004年に活動休止し、2013年に再始動。2018年にギタリストの青木裕が逝去。2020年2月、SUNNOVA(Samlper/Synth)が正式メンバーとして加入。

[Official Website]
http://www.downy-web.com/

やけのはらYAKENOHARA
やけのはら

DJ、ラッパー、トラックメイカー。『FUJI ROCK FESTIVAL』、『METAMORPHOSE』、『KAIKOO』、『RAW LIFE』、『SENSE OF WONDER』、『ボロフェスタ』などの数々のイベントや、日本中の多数のパーティーに出演。年間100 本以上の多種多様なパーティでフロアを沸かせ、多数のミックスCD を発表している。またラッパーとしては、アルファベッツのメンバーとして2003 年にアルバム「なれのはてな」を発表したのをはじめ、曽我部恵一主宰レーベルROSE RECORDS のコンピレーションにも個人名義のラップ曲を提供。マンガ「ピューと吹く!ジャガー」ドラマCD の音楽制作、テレビ番組の楽曲制作、中村一義、メレンゲ、イルリメ、サイプレス上野とロベルト吉野などのリミックス、多数のダンスミュージック・コンピへの曲提供など、トラックメイカーとしての活動も活発に行なっている。2009 年に七尾旅人× やけのはら名義でリリースした「Rollin’ Rollin’」が話題になり、2010 年には初のラップアルバム「THIS NIGHT IS STILL YOUNG」をリリース。その後、Stones Throw15 周年記念のオフィシャルミックス「Stones Throw 15 mixed by やけのはら」を手がけ、2012 年には、サンプラー&ボーカル担当している、ハードコアパンクとディスコを合体させたバンドyounGSoundsでアルバム「more than TV」をリリース。2013年3月、新しいラップアルバム「SUNNY NEW LIFE」をリリース。

http://yakenohara.blog73.fc2.com/

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  • PECF-1092 / felicity cap-195
    [CD] ¥2530

<TRACK LIST>

  • 十六月 downy resonance mix
  • 曦ヲ見ヨ! Fragment remix
  • 椿 Ametsub remix
  • 春と修羅 Geskia remix
  • 黒 Olive Oil remix
  • 或る夜 mergrim remix
  • 時雨前 Taigen Kawabe remix
  • 「  」 zezeco remix
  • 雨の犬 YAKENOHARA 303 MIX
  • 赫灼セルロイド ATSUKI remix
  • 燦 SUNNOVA remix
  • 十六月 Fragment remix
  • 下弦の月 dark reflection version remixed by 石橋英子
  • 時雨前 munnrai remix
  • 時雨前 GuruConnect remix
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