INTERVIEW

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【Analogfish SPECIAL INTERVIEW】 最近のアナログフィッシュ feat. 佐々木健太郎

  • 2014.10.16

Analogfish SPECIAL INTERVIEW
最近のアナログフィッシュ feat. 下岡晃・佐々木健太郎・斉藤州一郎

アナログフィッシュ、最新作「最近のぼくら」リリースを記念してfelicity HPで
下岡晃・佐々木健太郎・斉藤州一郎、3名それぞれのソロインタビューを掲載。

Interview&Text : 金子厚武
photo : 笹原清明

<Analogfish SPECIAL INTERVIEW>
» 最近のアナログフィッシュ feat. 下岡晃
» 最近のアナログフィッシュ feat. 斉藤州一郎



———— 健太郎さんの2014年はソロ活動からスタートしたわけですが、その経験を踏まえてアナログフィッシュの活動に戻ったときに、何か変化はありましたか?
佐々木: 2月にアルバムを出して、4月までツアーをやって、そこからまたアナログフィッシュと向き合ったんですけど、モードを切り替えるのが大変っちゃ大変でした。自分の名前を看板にして、自分の責任でやるっていうのは、初めての経験だったので。アナログフィッシュでは下岡がスポークスマン的な感じなので、結構頼ってた部分もあったんだなってわかったし、すごく得るものは大きかったです。

———— 一方、下岡さんと斉藤さんのelephantに対しては、どんな風に見ていましたか?
佐々木: この前の『りんご音楽祭』でも見たんですけど、同じバンドをやってると、メンバーがライブをやってるのを客観的に見ることってないわけじゃないですか?しかも、3人のうち2人が揃ってるバンドを見るなんてなかなかないと思うんで、改めて客観的に見たときに、やっぱり州一郎はすげえドラマーだなって思いました。中で自分も弾いて合わせるのと、外から見るのって全然違って、「こいつらと俺バンドやってんだ、よかった」って、自分の自信にもなったっていうか。

———— では、『最近のぼくら』についてですが、過去2作のように強いメッセージ性を打ち出すというよりは、全体的に穏やかなトーンで、日常を描いた作品になりましたね。
佐々木: 震災後の日本っていう国の中で、“抱きしめて”っていう曲はすごく重要な曲だったと思ってるんですけど、そういう曲を出した後に、「じゃあ、今度はどういうことを歌っていくのか」っていうのは、下岡もかなり考えたと思います。どんどん日本はきな臭い方向に向かってて、何をテーマに歌うかが難しくなり続けてて、そういう日本の現状に対して、どういうメッセージを歌うかっていうところで、今回は「日常を歌う」っていうモードだったのかなって。

———— 日本がよりきな臭い方向に行っているからこそ、より強力なメッセージソングを打ち出すという方向性もあったかと思いますが、なぜ日常の方に行ったんだと思いますか?
佐々木: 僕も今だからこそより強いプロテストソングみたいなものが必要なんじゃないかって気もするんですけど、でもこれだけ混迷を極めた状況の中で、「これだ」っていう意見を表明できるような、そんなハートの強い人いるのかなとも思っちゃうんですよね。だから、たぶん今回下岡はサウンドとかバンドマジックの方に重きを置いたんだと思います。女性コーラスの人選はほぼ下岡がやったし、あとはドリアンさんにアレンジを任せたり、人が聴いて気持ちよくなれるようなオケにしたりとか。

———— 女性コーラスが重用されているのはすごく新鮮でした。
佐々木: たぶんTHE XXとかWARPAINTとかを聴いてた影響で、今回「今こういうのが好きだから、これを聴いてフィーリングを捕まえておいて」みたいな感じで、曲をいろいろ教えてもらったんです。ベースフレーズが曲の印象を支配してる曲も結構多いと思うんですけど、下岡もメンバーの良さが出るような、有機的な絡み方をするアレンジに興味があって、そっちに行ったと思います。ただ、アレンジはすごい時間がかかって、“Moments”とか、何バージョンあるんだろうって感じですね。LOCAL NATIVESとかをみんなで聴いて、やっと今のアレンジに落ち着いたんですけど。

———— そんな中に、今回健太郎さんの曲は“Kids”と“Tonight”の2曲あるわけですが、この2曲っていうのは、ある程度下岡さんの今のモードを把握した上で書いたのか、それともそこはそんなに意識してないのかというと、どちらでしょうか?
佐々木: 「下岡がこうだからこう」みたいな器用なことはできないし、そもそも今回その余裕もなかったですね(笑)。最初にも言ったように、ソロからの切り替えにちょっと戸惑った部分があって、例えば、最初“Kids”には〈失われた10年は失われた20年に増えただけだった〉みたいな一節があったんです。でも、それをメンバーとプロデューサーに聴かせたときに、「言ってることはわかるけど、それはアナログフィッシュの中で君がやることじゃない」って話になって。

———— つまり、等身大の自分を描いたソロの作風に寄り過ぎたということでしょうか?
佐々木: みんながどういう意味でそう言ったのかははっきりとは分からないんですけど、でもみんなの共通の意見だったので、書き直してみようと思って。

———— でも、今おっしゃった一節のこともよくわかる気がします。
佐々木: 金子さんも同世代だからわかりますよね。僕らが大人になるに連れて不況だって言われ始めて、「失われた10年」って言われたわけですけど、最近は「失われた20年」って言われているんですよ。
「増えただけじゃん」って。僕らが大人になる中で、世の中悪くなる一方で、その感覚を歌っておきたいと思って。

———— 一回り上の世代だとバブル景気があったし、一回り下だと初めから何もない。僕らはそのなくなっていく過程を生きてきた世代ですもんね。でも、その一節はとりあえずナシにして、書き直したのが今の“Kids”だと。
佐々木: これはもう自分の根底にある、「負けてたまるか」みたいな感じですね(笑)。「Kids」っていう単語と、「Riot」っていう単語が、今の現状にラディカルに響くんじゃないかって感じがしたんです。ホント、これは感覚なんですけど。

———— それこそ、今のキッズは初めから何もないわけで、とても「Kids Are Alright」とは言えない。「Riot」ぐらいのパワーが必要だっていう言い方もできるかもしれないですね。
佐々木: うん、そういう意図はありました。それは自分に対してもそう思うし。

———— アレンジに関してはどう作っていったんですか?
佐々木: これはセッションで、スタジオでその場で合わせて、そのままレコーディングしました。初期衝動が詰まっているので、“Kids”っていう曲には合ってると思います。

———— もう一曲の“Tonight”に関してはどうやって作ったんですか?
佐々木: これもスタジオで作ったんですけど、ホント僕今回はソロとバンドの切り替えに苦労して、2曲形にはなったんですけど、結構苦戦したんですよね。「とにかくある曲を聴かせて」って言われて、みんなで合わせてみて、「これいいね」ってやつに対して、「じゃあ、歌詞つけてみて」って感じで、2曲とも選んでもらったんです。もうちょっとスムーズにバンドに戻れると思ったんですけど、意外と切り替えが難しくて、ホント最初は「全然違うな」って思いました。作っていくうちに、元に戻ってきたんですけど。

———— でも、“Tonight”は非常に健太郎さんらしい、マイナスの部分も認めつつ、それをプラスに反転させていく希望の歌で、「こういう曲がないとアナログフィッシュのアルバムじゃないよな」っていう気がすごくしました。
佐々木: これはわりとソロのときにもあった部分というか、コーラスワークとか、曲のポップさとか、自分の作る曲の中で一番好きな部類ですね。歌詞はこれに関しても二転三転したんですけど、最後はラブソングの形にまとめることができたなって。

———— ご自身の曲以外で、強い手ごたえを感じた曲というとどれになりますか?
佐々木: “Nightfever”かなあ。今35歳で、年を重ねてきて、視野も広がって、20代のときには見えなかった悲しみとか辛さとかが見えるようになってくるじゃないですか?人って鈍くなる部分もあるけど、すごく敏感になっていく部分もあると思って、20代のときに見えなかったものが今は見えたりするから、すごく身につまされる曲なんですよね。

———— この曲に関しては下岡さんとも話をして、歌詞に出てくる「センターライン」っていうのは、つまりは心の支えのことなんだっておっしゃっていました。
佐々木: うん、その感じっていうのは僕もすごくよくわかります。あと今回日常を歌う曲が多い中で、“Nightfever”はわりと下岡がもともと持ってる批評性が出てるタイプの曲で、“PHASE”とか“HYBRID”とか“抱きしめて”みたいな、ああいうエッジがまた戻ってきたなって感じがしたんです。なので、この曲は次と今回の橋渡し的な曲なんじゃないかと思うんですよね。下岡はもう新曲を作り始めてて、だんだんまた尖り始めてるんですよ。僕はついていくの大変なんですけど(笑)。

———— やっぱり、下岡さんの批評性っていうのはデビュー時からずっとあって、それが時期によって、強く出るときもあれば、うっすらと滲んでるぐらいのときもあるってことだと思うんですよね。『荒野 / On the Wild Side』や『NEWCLEAR』は、もちろん震災と原発事故の影響もあって、それが今までにないほど強く表に出た2作だったけど、今回の作品は少しトーンは抑えられていて、その分サウンドで、ムードとして今の時代を表してる作品だと思うんです。
佐々木: たぶん、下岡はそれがやりたかったんだろうし、2014年の日本の音楽シーンの土俵の中で、今はこういうやり方が一番いいんじゃないかって思ったんだと思うんですよね。

———— 『最近のぼくら』は三部作の完結編と位置付けられていて、なおかつ15周年でもあるので、ある種の区切り感もあるのかなって思ったのですが、すでに新曲を作り始めてるという話を聞くと、どうやら区切り感は……。
佐々木: ないですね(笑)。もちろん、35歳、15周年ってことでいろいろ考えてはいて、ここまでバンドをやってきて、引き返せるのか、引き返せないのかとかも考えますけど、でも結局これしかないし、区切りとかもないんですよね。実際、もう下岡は先に進んじゃってるし。もうちょっと休みたかったんだけど(笑)。

———— ソロをやって、アナログフィッシュのアルバムを作って、こんな短期間にたくさん曲を作ることもなかなかないでしょうしね。
佐々木: そうですね……オードリーさんへの書き下ろしもあったし、喬木村の曲も書いたし、いろいろ書きましたけど……でも、まだまだですよ。

———— とはいえ、やっぱり15年という月日を考えると、「思えば遠くに来たもんだ」みたいに思ったりもしません?(笑)
佐々木: 思うこともありますけどね(笑)。いろんな時期があって、いいことも悪いこともあったけど……まあ、このアルバムが僕らの歴史の中でどういう位置付けになるかはまだ分からないけど、20周年のときに「こういうアルバムだったね」って言えるような未来になってるといいですね。僕ら、自分たちのやってることにそこまで自覚的じゃなかったりするから、よくわからないことも多いんですよ。

———— ああ、下岡さんって論理的な人に見られがちだけど、実は感覚的だっていう話もしました。つまり、アナログフィッシュというバンド自体、かなり感覚的なバンドだと。
佐々木: そうですね。下岡の世の中に対する視点っていうのはホントにすごいなって思うけど、アナログフィッシュの中には、世界に対してクレバーに立ち回れる人とかっていうのはいないと思うんで、感覚的っていうのは、そうかもしれないですね。やっぱり、続けて行かないと未来はわからないし、アナログフィッシュっていう場がなければそもそも何も起こらないので、とにかくこれからも続けて行きたいなって思います。

———— じゃあ、最後にひとつ、斉藤さんと共通の質問をさせてください。下岡さんがインタビューの中で、“Receivers”の〈良い事も嫌な事もありそうだね〉っていう歌詞が好きだっておっしゃってたんですけど、この歌詞とアルバムタイトルをかけて、「最近の佐々木健太郎の良いことと嫌なこと」を教えてください。最後は良いことで終わりたいので、まずは嫌なことから。
佐々木: 嫌なこと……何だろう……あ、最近生活のペースがちょっと崩れてて、それが嫌ですね。そういうのって一回崩れると、そのパターンを断ち切るのって、大変だったりするじゃないですか?自炊ってペースを作るのにすごく大事だと思うんですけど、最近できてなくて、そうなると部屋も片付けなかったり、今そうなっちゃってるのが嫌で、何とか軌道修正したいです(笑)。

———— 大事なことですね(笑)。では、最近の良いことは?
佐々木: うーん……最近下岡は曲作りのモチベーションが上がってるんですけど、僕は単純にプレイが上達するのが楽しいんで、それが良いことかな。歌もベースも、そこに喜びを見出してます。

———— バンド結成から15周が経った今も、そこに喜びを見出せるっていうのは、素晴らしいですね。
佐々木: むしろ30歳を過ぎてからそうなってるんですよ。だから、下岡とは逆ですね。

———— 下岡さん、どんどんギター弾かなくなってますもんね(笑)。
佐々木: そうそう(笑)。


Interview&Text : 金子厚武
photo : 笹原清明

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  • 2014.10.08 On Sale
  • PECF-1106 / felicity cap-209
    [CD] ¥2750

<TRACK LIST>

  • 最近のぼくら
  • There She Goes (La La La )
  • Nightfever
  • はなさない
  • Kids
  • 公平なWorld
  • Moments
  • Wednesday
  • 不安の彫刻
  • Tonight
  • Receivers
VIDEO


PROFILE
Analogfishアナログフィッシュ
【Analogfish SPECIAL INTERVIEW】 最近のアナログフィッシュ feat. 佐々木健太郎

3ピースにして2ボーカル+1コーラス。唯一無比のハーモニーを響かせる希代のロックバンド。
下岡晃(G, Vo.)が問題提起する社会的なリリックと佐々木健太郎(B, Vo.)の情熱的な人間賛歌が見事に交差する楽曲群が魅力。
それを支える扇の要、斉藤州一郎(Dr, Cho.)のしなやかでファットなプレイと垢抜けたコーラスワークが高い評価を得る。
共演ミュージシャンはもとより、映画、小説、漫画等、各界クリエイターからのラブコールは止みません。

Official WEB→ analogfish.com

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  • PECF-1106 / felicity cap-209
    [CD] ¥2750

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  • 最近のぼくら
  • There She Goes (La La La )
  • Nightfever
  • はなさない
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  • Moments
  • Wednesday
  • 不安の彫刻
  • Tonight
  • Receivers
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