INTERVIEW

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おとぎ話 "CULTURE CLUB" スペシャル インタビュー 【後編】

  • 2015.02.20

ニューアルバム『CULTURE CLUB』を発表、大きなターニングポイントを迎えた、おとぎ話。メンバー4人による座談会!
今回は、スタジオワークの裏話も含めた、アルバムの全曲解説。メンバーがすべてを語った“濃厚”インタビュー(後編)をお届け!!

★インタビュー(前編)はコチラ↓
https://1fct.net/interview/interview046


出席者
・有馬和樹(おとぎ話/ボーカル、ギター)
・牛尾健太(おとぎ話/ギター)
・風間洋隆(おとぎ話/ベース)
・前越啓輔(おとぎ話/ドラム)

聞き手/おとぎ話1号
撮影/タイコウクニヨシ

前越啓輔(おとぎ話/ドラム)

■『FRIENDS』が演奏できるくらい、バンドに“ままごと感”が一切なくなっちゃった(前越)

5:『FRIENDS』

有馬 この『FRIENDS』は、アルバムの中で一番、古い曲ですね。あれ? タイコウ(クニヨシ/おとぎ話カメラマン)さん、どうした?

タイコウ ……またちょっと話していいすか? この曲は自分もいろいろと聞きたいことがあるんで。

有馬 いいよいいよ。ドンドン話してよ(笑)。

タイコウ 個人的に、この前の『少年』、次に『FRIENDS』が繋がっている、この曲順が胸に来るモノがありまして。『少年』って、いまの有馬くんの気持ちが込められてると思うし、いままで有馬くんが書かなかった歌詞だよね?

有馬 そうだね。普段は自分の感情はあんま入れないから。

タイコウ だから『少年』を聴くと、「この曲は、自分の曲だ」とシンクロする人が多いと思う。で、その次に、『FRIENDS』が並んでるのが意味あるんだろうなと。

有馬 ああ、『FRIENDS』は、おとぎ話について唄ってる曲だから。風間と2人でおとぎ話を組んで、牛尾が入って、前ちゃんも加入して、男4人組になった。そのとき思ったことを歌った曲なんです。セカンドアルバム(『理由なき反抗』2008年)を作ったときには、もうできてたしね。

— そこまで古い曲だったんですね。
有馬 でも、なんか「この曲をやる年齢に達していなかった」って感じがしない? 30歳すぎて、やっと演奏できるというか。

風間 昔は演奏しても、なんか“ネタ”だけで終わっちゃう感じがしてたよね。

有馬 タイコウさんが言うように、『少年』ができたからこそ、『FRIENDS』が演奏できるようになった。それはきっとありますね。この中で歌ってる話が、完全にウソじゃなくなっちゃったというか。

前越 バンドに“ままごと感”が一切なくなっちゃったよね(笑)。若いヤツが仲間の話をしてもピンと来ないけど、いまの俺たちはガチの仲間感があるから。

6:『光の涙』

— そして、『COSMOS』の前に『光の涙』。この並びも凄くインパクトありますね。
有馬 じつは『光の涙』だけ、最初の曲順を決めた櫻木メモに入ってなかったんです。なんで、この曲はバンドからサプライズ選出させてもらいました。

前越 締切ギリギリで選出したよね。

有馬 そう。「この曲だけは入れたい!」と。メンバーたっての希望で、“補欠選出”させてもらって(笑)。もともと掛け値なしの名曲だったし。じつはUKプロジェクトに残した置き土産(タワレコ限定の5曲入りCD『サンタep』)だったんですけど。「このまま闇に葬るにはもったいな」と。

— この『光の涙』~『COSMOS』、そして後述する『AURORA』が、もう一つの“組曲”という印象があります。
有馬 そうですね。その3曲が、まさに“光3部作”という感じで。

有馬和樹(おとぎ話/ボーカル、ギター)

■「この曲は、ホンットに何も考えないで、4人で一発で録らないと、他の曲よりも劣っちゃうよ」と言われて(有馬)

7:『COSMOS』

— いよいよハイライトの『COSMOS』。この曲は「おとぎ話が一番、大事にしてきた曲」と発言されてますね。
有馬 ハイ。ただ『COSMOS』自体はもう5年前に作ってますからね。

— この曲をずっと録音せずに、そこまで大事にしてきた理由は?
有馬 たぶん『COSMOS』をライブでやったとき、お客さんに「あの曲なんですか?」って言われることが一番多かったからかな。自分たちで作った曲ですけど、最初に演奏したライブから、違うレベルにイっちゃってたんで。

前越 よく対バンイベントに出演するんですけど、他のバンドから褒められることって、ほぼないんですよ。でも、『COSMOS』だけは、いろんなバンドマンから、「あの曲、メッチャいいですね!」「あの曲、ヤバくないすか?」と、何回も言われたから、俺らも徐々に意識が変わってきた。まさに曲が一人歩きしていった感がありますね。

— 待望のスタジオ録音はどんな感じで進んだんですか?
前越 これは仁さん(吉田 仁/『CULTURE CLUB』共同プロデューサー)に凄く助けてもらったというか。

— 吉田仁さんは、今回の共同プロデューサーで、フリッパーズギターを始め、数々のギター系バンドのサウンドを手がけた方ですね。
前越 『COSMOS』を録音してるとき、たまたま牛尾がいなかったんです。だから先に3人でスタジオに入って、割といい感じでリズムを録って、いったん録音が終わったんですね。そこに牛尾が帰ってきてギターを重ねたんだけど。そこで、吉田さんがずっと首をかしげてて。「いや~、全然ノリが出ないなあ……」って。

有馬 かなりレコーディング終盤だったんですけど。仁さんが「他の曲と比べて、弱いんだよなあ……」と。そこで言われたのが「この曲は、ホンットに何も考えないで、4人で一発で録らないと、他の曲より劣っちゃうと思うよ?」って。

— そうだったんですか。
有馬 で、「君たち、この『COSMOS』でMV作るんでしょ? 『COSMOS』を一番聞かせたいんでしょ? でも、このままだとそうならないよ」とハッキリ言ってくれて。それで、牛尾も一緒に入って最初から一発で録り直すことになったんです。

— いい話ですね。……アレ、ということは、もしかして『COSMOS』って、一発録りなんですか!?
有馬 ハイ。一発録りですね。

— それは凄い!! でも、それを言ったら、山戸結希監督の『COSMOS』MVもワンカットの長回し。つまり一発録りじゃないですか。
有馬 そうなんですよ! いまって音楽も映像もいくらでも重層的に作り込めるから、どっちも時代に逆行してますけど(笑)。でも、こういう決定的な名曲や、名MVが一発録りで生まれたってのは凄いなと。

— このMVは、完全に『COSMOS』の世界観に見事にフィットしてますよね。
有馬 当初は、映像がどうなるか全然想像できなかったですね。で、『COSMOS』の最終的な音源を聴かせたあと、山戸監督から出てきたアイデアが、『おとぎ話みたい』の趣里ちゃんを起用してのゲリラ撮影、ワンカット一発録りだったんですよ。一発録りなんて一言も言ってないのに。

— そこはもの凄いシンクロニシティを感じますね。
前越 でも、俺なんか最初にMVを観たとき、もう他人事のように感激して、ボーゼンと見ましたから。音楽と映像に完全に圧倒されて、「なんだコレ? ホントにおとぎ話か?」と(笑)。

— 山戸監督の映画『おとぎ話みたい』からのコラボも、このMVに至る伏線だったように思えるほどの結実度というか。
有馬 そうですね。しかも「まだ何も終わっていない」感が強くて。このMVがあることで、「まだまだ『COSMOS』の物語が広がるんだな」と。そんな予感がビッシビシしてるんです。

■アルバム終盤、ここで『ピカピカ』が控えてると思うと、自分でも鳥肌立ちますね(前越)

8:『告白ジャム』

有馬 この『告白ジャム』も『ピカピカ』も、メッチャひっかかっている人が多いんですよ。

— とくに『告白ジャム』の歌詞は……かなり狂ってますね(笑)。
有馬 イッちゃってますよね(笑)。正直、「モテたい!」と思って、「この曲を好きな女子、たくさんいるんじゃない?」と思って作ったんですけど、女の子はあんましいなかった。むしろ男子が引っかかってます。

— いい意味で、『はじめてのチュー』みたいな曲だなと思いました。
有馬 そう! まさに「てんとう虫コミック」みたいな感じですよね。子どもが、ずっと「チンチン!」って言ってるような(笑)。

— しかもアレンジもかなり凝ってて。いままでのおとぎ話にない音色になってますよね。
牛尾 まさに、いままでやったことない音色で、この曲って、じつは80’Sなアレンジを意識したんです。そこがうまく音にハマって、有馬の歌詞との対比も凄くおもしろいのかなって。

9:『ピカピカ』

— この『ピカピカ』も、かなり支持者が多いですよね。
前越 自分は、『ピカピカ』が始まると、バチコーンとなりますね(笑)。たぶん、いままでのおとぎ話なら、割とアルバムの最初のほうに入ってる曲なんだよね。

有馬 いままでなら、2曲目とか、3曲目のラインだよね。

前越 でも、今回のアルバムは、かなり終盤なのに『ピカピカ』が控えてると思うと、自分でも鳥肌立ちますね。「こっから、まだ行くんかい!」「どんだけ、狙ってるんだよ」って感じで(笑)。

牛尾健太(おとぎ話/ギター)

■『AURORA』はサウンド的に「キラキラ」じゃなく、「生々しく」したかった(牛尾)

10:『AURORA』

— そして、もう一つのクライマックスと言える『AURORA』。これは9分14秒の大作です。
有馬 アルバムの位置的にも、そして曲としても『COSMOS』と呼応してますね。

牛尾 この『AURORA』が「凄くよかった」という感想をかなり見るんですよ。でも、普通は長い曲って飽きるじゃないですか。しかも、この曲は、Aメロからサビを繰り返してて、凄く単調なんです。でも、みんなこの曲を気に入ってくれてるみたいで……。

前越 みんな、アルバム全体で感じてくれてるんじゃない?

— しかも歌詞も力強いですし。
有馬 歌詞は、アルバムの中で、かなり自分を投影した唯一の私小説なんですよ。その中には恋愛的な面もあるけど、いままでの人生で「なんで音楽に救われたのかな?」「なんで自分は音楽が好きなんだろう?」って歌詞で。音楽って、自分の耳に直接、訴えてくる。近くで鳴ってくれてることへの感謝。まさに“音楽讃歌”ですよね。

牛尾 自分は、この曲をサウンド的に「キラキラ」じゃなく、「生々しく」したかったんです。演奏もザラっとむき出しで。90年代以降のニール・ヤングとか……ブルースですね。そのへん演奏でうまく出せて、有馬の歌詞とリンクできたのかなと。

有馬 だから演奏のラストだけ、凄くキレイな音になったよね。「キレイなのはそこだけでいい!」っていうか。

前越 また、この曲を録音したときの話なんだけど……。この曲は、歌が入ると、それほど違和感がないけど、演奏だけ聴くと頭とサビの辺りのテンポが全然違うんですよ。だから、最初は聞きやすいように「同じテンポで叩きたいな」と思ってたんだけど。そこで、やっぱり仁さんが「いや、コレはそういう曲だから大丈夫。曲のテンポとかじゃなく、それが自然なの」「凄くいい演奏だから、大丈夫!」って言ってくれて。

有馬 ウン。仁さんからは、「この曲は、ただ自分の感情を出せばいいんだよ!」って言われて。「なるほどー!」と思ったよね。

牛尾 『COSMOS』の話もそうですけど、なかなか仁さんみたいに言ってくれる人っていないですよ……。

— 今回、おとぎ話がそんな風に助言してくれる“大人”と出会えたのは非常に大きいですね。
有馬 そうですね。仁さんや櫻木さんは、俺等がスタジオで悩んだときにも「いいじゃん!」ってアドバイスや方向性を示してくれたり。逆に「これはダサいね!」とかもハッキリ言ってくれる。もの凄くやりやすかったですね。

風間洋隆(おとぎ話/ベース)

■この曲って雑なんだよね! あと、アルバムの中では群を抜いて演奏がヘタ!(笑)(有馬)

11:『おとぎ話みたいねと笑ってばかりの君が』

— いよいよ最後の曲。この曲は、聴いた人を軽くして、帰してあげる役割というか。
有馬 これはね……ホント最高ですよ!

風間 いいよねえ~(ニッコリ)。

牛尾 まさしく3分間のポップソングですね(笑)。

有馬 めっちゃ簡単な曲なんですよ。でも、そこがいい。しかも雑なんだよね! あと、アルバムの中で、群を抜いて演奏がヘタ!(笑)

前越 ヘンなグルーヴが出てるんですよ! 演奏はバラバラだけど。(ローリング)ストーンズとかもバラバラじゃないすか? 録音聴いてもガッチリ合ってないけど、「すっげえ聴きやすい!」みたいな(笑)。なんか、楽譜にできない演奏なんですよ。

有馬 誰も演奏できないよ! だって適当だもん!! でも、これでアルバムが終わるだよ。これで締まるんだもん(笑)。この曲を最後にやらせてくれたfelicityって、やっぱ最高だよ。

■「普段、働いてたりするときとかに、おとぎ話のことを考えると、泣きそうになるんですね」(前越)

— では、最後にアルバムが完成したあと、これからの活動について、一言お願いします!
有馬 まだツアーもあるし、ライブも見て欲しいけど……。なんだろ? 今回に関しては「どうなるのか、わからないのが楽しみ!」って感じで。ホントわからないんですよ。今年の初詣で、自分が願ったのも、「幸せであればそれでいいっす!」って感じだったし(笑)。

— じゃあ、前越くんお願いします。
前越 そうやなあ……(少し考えて)。『CULTURE CLUB』の話と少し離れちゃうけど。なんか俺、普段、働いてたりするときとかに、おとぎ話のことを考えると、泣きそうになるんですね。4人のことを考えると。

有馬 ……。(黙ってうなづく)。

前越 でね、俺はそういう感覚をずっと持ち続けたい! これからも負けないくらい、いいアルバムを作れたらな思うし、と。最近は忙しくて、あまりメンバーと会えないけど。そういうことを思い続けてます。

— では、風間くん……ではなく、ここは牛尾くんでお願いします。
風間 ええっ……!(笑)。

牛尾 ボクは、このアルバムがおとぎ話の最高傑作だと思ってます。それは、おとぎ話というバンドが初めて100パーセント、パッケージとして、CDで出せたという自信があるから。ただ、コレを聴くと、いままでのファンは、「イメージ変わったね」と言うと思うんです。でも、じつは前からおとぎ話ってこうだったんですよ。

有馬 むしろ「これ! これ!」って感じだよね。

牛尾 UKプロジェクトからアルバム出してたときも、いわゆる下北系じゃないし。ただ、俺らが思ってるより、聴いている人は「おとぎ話はこういうバンドだよね」ってカテゴライズしてたと思うんです。そこが7枚目でようやく解き放てたかなと。ボクらとしては全然変わってないから、自信を持ってアルバムを発表できる。まあ、どっかで「ざまーみろ!」って感じもありますよね(ニヤリ)。

— では、最後は風間くんに締めてもらいましょう!
風間 あの~……「おとぎ話、最高だな!」って思います(ポツリと)。

一同 おおお~~~~!

有馬 いや~、締まったね! 締まったよ、風間くん!(笑)

風間 ハハハハ! いや、ホントに最高だよ。やっぱり、この4人がいいんだよ(ニッコリ)。

※終わり


おとぎ話

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  • 2015.01.14 On Sale
  • PECF-1117 / felicity cap-217
    [CD] ¥2750

<TRACK LIST>

  • 運命
  • きゅーと研究会
  • カルチャークラブ
  • 少年
  • FRIENDS
  • 光の涙
  • COSMOS
  • 告白ジャム
  • ピカピカ
  • AURORA
  • おとぎ話みたいねと笑ってばかりの君が
 -
COSMOS
  • 2015.04.18 On Sale
  • HSC-0017 / felicity cap-228
    [ANALOG] ¥1650
    SOLD OUT

    ※HMV SINGLE CLUB ※RECORD STORE DAY JAPAN 2015対象商品) ※アナログ7inch

<TRACK LIST>

Side A : COSMOS
Side B : 少年
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PROFILE
おとぎ話otogivanashi
おとぎ話

2000年に大学で出会った有馬と風間により結成。その後、同じ大学で出会った牛尾と前越が加わり現在の編成に。2007年にファーストアルバム『SALE!』以来、8枚のアルバムをリリース。felicity移籍第一弾アルバム『CULTURE CLUB』(2015年)が話題に。映画『おとぎ話みたい』での山戸結希監督とのコラボレーションは熱烈なフォロワーを生み続けています。同じく山戸監督による映画『溺れるナイフ』提供曲「めぐり逢えたら」を収録した前作は『ISLAY』(2016年)。2018年6月、アルバム『眺め』をリリース。2019年9月、10枚目のアルバム「REALIZE」を配信のみでリリース。ライブバンドとして評価の高さに加えて映画、映像、演劇、お笑い等、各界クリエーターよりのラブソングは止みません。「日本人による不思議でポップなロックンロール」をコンセプトに掲げて精力的に活動中。
有馬和樹(Vo.Gt), 牛尾健太(Gt), 風間洋隆(Ba), 前越啓輔(Dr)

http://otogivanashi.com/

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COSMOS
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