INTERVIEW

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下岡晃 Analogfish『Almost A Rainbow』SPECIAL INTERVIEW

  • 2015.09.15
Analogfish SPECIAL INTERVIEW

最新作「Almost A Rainbow」リリースを記念してfelicity HPで
下岡晃・佐々木健太郎・斉藤州一郎、3名それぞれのソロインタビューを掲載。

Interview&Text : 金子厚武
photo : 笹原清明

『荒野 / On the Wilde Side』をアップデートできたような気がしてます。

― まずは3人に共通の質問で、新作に対する手応えを聞かせてください。
リリースしている作品はもちろん全部気に入ってるんですけど、『荒野 / On the Wilde Side』のときにあったような手応えは、やっぱり毎回あるものではないんですよね。でも、今回『荒野 / On the Wilde Side』をアップデートできたような気がしてます。ちょっとフィジカルに回帰したかったのもあって、その辺もできたし。

― 今作は『最近のぼくら』から11か月という短いスパンでのリリースで、去年『最近のぼくら』についてのインタビューをした際に、「もう新曲を作ってる」という話をされていましたよね。
『最近のぼくら』のマスタリングが終わって、発売される前には作り始めてましたね。でも、最初は「これ(『最近のぼくら』)を出したら、2~3年休もう」って言ってて、健太郎も「それがいいと思う」って言ってたんですよ。三部作って言ってたのもあるし、ひとつのタームの終わりな気がして、次は時間をかけて作ろうかなって。でも、いざ『最近のぼくら』ができたら、すぐ次をやった方がいいんじゃないかって突然思ったんです。健太郎は最初あまりの変わりようにびっくりして、ちょっと慌ててましたけど(笑)。

― 今振り返ると、なぜ突然そう思ったんだと思いますか?
「休んでもそんなにいいことないな」って思ったんですよね。ちょうど友達から80年代の松任谷由実さんの本を借りてたんですけど、あの頃の人ってみんな一年に2枚とか作ってたじゃないですか? それすげえなと思って、作れるときに作るって大事なのかもって。しかも、もうちょっとフィジカルにしたいとか、ドラムの音をこうしたいみたいな、やりたいイメージがいくつか固まってたので、早めにそれを形にしたかったんですよね。

― 前作のときは「1ループを軸にした、タイトで有機的なバンドアンサンブル」っていうのがコンセプトとしてあったと思うんですけど、その流れを踏襲しつつ、よりオリジナリティを追求したようなイメージがあります。
前作の要素は全部引き継ぎつつ、フィジカルで、ちょっとBPM速めのバンドサウンドってイメージでした。僕が好きだった90年代のオルタナティブな音楽のドラムの音を鳴らしたいっていうのも、大きなテーマでしたね。

― それって、アーティストで言うとどんな人ですか?
どの辺って言われると難しいんだけど……例えば、グランジとか、あそこまで破壊的な音じゃないけど、生々しくて近い音。BADBADNOTGOODを聴いて思ったんだよなあ。「あ、俺この音好きだ。こういう音で録りたい」って。

― 「フィジカルで、BPM速め」っていうイメージは、どこから来たものだったのでしょう?
単純に、反動かなとも思うんですよね。『最近のぼくら』が結構ゆっくりだったから、速め……って言っても、そんなに速い曲はないんだけど(笑)。自分が作る曲はわりとパンクミュージックみたいなところがあるから、速いの作りたくなるときがあるんですよ。

― それって、楽曲の構造がってことですか?
歌ってることもそうだし、コード進行とか、構成とか。

― 曲の骨格を抜き出すと、わりとシンプルだったりすると。
そうそう、パンクミュージックとして成り立つような要素で曲ができてるんです。それはずっと思ってることで、それを手を変え品を変えアレンジするのが好きなんですよ。で、今回は90年代のオルタナティブミュージックを、今の感じでやりたかったんですよね。トロ・イ・モワが今年の頭ぐらいに出した新曲が、90年代っぽい要素を、チルウェイブ以降の音の整理の仕方でやってて、すごい好きだなって思って。あれはわりと静かな感じだったけど、もう少しうるさい感じでやりたいなって。

― 国内に目を向けると、今年の前半は「シティポップ」っていう言葉が散々使われましたよね。
あれ、若い子たち困ってる気がするんだよなあ(笑)。僕シティポップは大好きだけど、今それをどうしようみたいな感じはなかった。

― シティポップっていう言葉自体は置いておいても、例えば、Yogee New Wavesとの対バンがあったり、時代の空気から影響を受ける部分はあったんじゃないかなって。
気分的にはあったと思います。僕ヨギーはCDで聴いていいなって思ってたけど、ライブであんなアグレッシブだと思ってなくて、あの感じは好きだなって思いました。僕あの辺のバンドはみんなすごい好きですよ。才能あると思うし、頑張ってる感じも好きだし、日本語でやってるのもいいと思う。ちょっと土臭い感じがするのもいいですよね。

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― では、アルバム自体の話に戻すと、実際どのあたりの曲からできて行ったのでしょうか?
最初は“F.I.T.”とか“泥の舟”とかができてて、“夢の中で”が最後かな。

― “F.I.T.”はまさに『最近のぼくら』の延長線上にある曲ですよね。
これは制作の時期は『最近のぼくら』の曲と一緒なんです。今回のアルバムですごくよかったのが、僕ずっとベースの音で悩んでたんですよ。健太郎のプレイはすごい好きなんですけど、音に関してはずっと試行錯誤をしてて。で、今回プロデューサーの吉田仁さんがフラットワウンドの弦が張ってあるベースを持ってきてくれて、それが僕の理想としてる音だったから、今回は全部そのベースで弾いてもらいました。それはホントでかかったですね。今同じやつを探してるんですけど、古いベースだから全然売ってなくて(笑)。

― 仁さんから買い取るしかないかもですね(笑)。
あとドラムも自分が思ってた音に近い音が作れて、プリプロ2日取ってたんですけど、音作りが上手く行ったから、その2日間で6曲ぐらい録って。

― 音色に統一感があるせいか、今回下岡さんの曲と健太郎さんの曲の混ざり具合がすごくいいように思うんですよね。
そうかもしれない。とにかく、今回健太郎のソングライティングがすごくよかった。ひとつ思ったのが、僕はわりと自分がやりたいことをやって、2人がついてこないと、「何でわからないんだ?」って強要するの(笑)。しかも、日が経つと言ってることが変わったりして、でもそういうものだと思ってるから、そのままやってるんですけど、健太郎が変わって行くことに対しては、全然寛容じゃなかったんですよね。自分は求めるくせに(笑)。今回も最初は健太郎の曲のいくつかに「違うんじゃない?」って言ってたんですけど、粘ってやってたら、すごいいいなって思って、僕があいつのやろうとしてることの良さに気付くのが遅かったんだなって思いました。

― 健太郎さんの曲って、アレンジはバンド全体で考えることが多いんですよね?
基本的に、そこは変わってないです。健太郎の曲って、コード感とメロディーがすごく大事で、そこは絶対なんです。リズムのアレンジとかに関しては、全員の折り合いをつけるのがなかなか難しかったりもしたけど、今回そこもすごく上手く行った気がします。3人でやることによって、一番よくなるであろうアレンジを見つめながらできたっていうのかな。健太郎はフィル・スペクターとかが好きだから、基本重ねがちで、それはそれですごくいいんですけど、今回は3人によるアレンジの一番いいところに立ち戻れたような気がしますね。

― “No Rain(No Rainbow)”は、ループ感のある有機的なバンドサウンドなんだけど、曲調はメランコリックっていう、その組み合わせが新鮮でした。
僕の中ではこれ派手な曲のつもりだったんですけど、今のところ聴いた人の感想を聞くと、いい曲だけど、そんなに派手じゃないみたい(笑)。

― (笑)。もともとどんなイメージで作られた曲なのでしょう?
最近はテーマがあって曲を作ることが多かったから、そこから一回離れて、なんかわかんないけど美しいと思う情景だけ書こうと思って、まず一番ができて、その流れでずっと書いて行った感じです。最後の〈君に何かしてあげたいっておもうよ〉っていうのは、流れで書いてたら出てきて、自分でもびっくりしました。「こんな結論になるんだ」って。でも、僕が求めてた結論に近かったから、自分の中で今回一番よく書けた詞ですね。

― 〈ただ美しいだけで虹は雨の対価ではないでしょ〉っていうのも素晴らしいラインで、他の曲では情報社会に生きる人々を観察してるような視点もあるけど、この曲は一切そういうことは関係なく、ただ美しいものだったり、無償の愛のようなものを歌っている曲だと思いました。あくまで自分の中でのイメージの話なんですけど、チャップリンの「街の灯」みたいな曲だなって(笑)。
この曲が超名曲になった気がします(笑)。

― アルバム全体の歌詞に関しては、前作同様に日常がテーマになっていると言っていいでしょうか?
そこは今回も変わってないですね。見方によっては、前作よりは少し問題意識っぽい部分も出てるとは思うんですけど、でもそこに焦点を絞って聴くアルバムではないと思います。なので、そういう部分も含めて、やっぱり今回も僕の日常ですね。

― 最初に「『荒野 / On the Wild Side』をアップデートできた」という話がありましたが、やはりあの作品はメッセージ性の強さが際立っていたと思うんですね。でも、今回に関しては楽曲そのものの音楽的な独創性こそが際立った作品だと思います。
まあ、僕は言葉から音楽を作るので、それは今回も変わってないですけど、重要度はサウンドだったり、バンドのフィーリングが上でしたね。僕らが最近ずっとやってきた、音数とか展開を制限して、音を整理して、コンパクトにループさせてってやると、自然と音楽が持続感ベースになるんです。もちろん、そうであってほしいからやってるんだけど、でも能動的な感じが出にくいなと思って、これまでのテーマを踏襲しつつ、もう少し能動的になりたい気持ちがあって。

― だからこそ、90年代オルタナティブのアグレッシブさが必要だったのかもしれないですね。
そうそう、そう思ってたから、90年代の音を聴いたときに、これいいなって思ったんだと思う。

― 『Almost A Rainbow』というタイトルに関しては、“No Rain(No Rainbow)”からの発展ですか?
そうですね。シンプルに『Rainbow』にする案もあったんですけど、「今度はジェンダー的な問題に行ったのか?」みたいなことになるかもとか考えて(虹は性的少数者の象徴とされている)、『Almost A Rainbow』っていうのがしっくりきたんです。僕の中では「心に花を」っていうイメージなんですけど。

― すごく温かみやポジティブさを感じさせるタイトルだと思うんですけど、社会のムードがよくなったかっていうと、そうではないじゃないですか?
違いますね。

― 最後が“泥の舟”という曲で終わってたりもするように、むしろいまの社会に対する認識はよりシビアになっているような気がする。それでも、ある種前向きなイメージを与えるタイトルを持ってきたのは、何故だったのでしょう?
これは井口さん(井口弘史/アートワーク担当)が言ってたことで、僕すごく感銘を受けて、今回のジャケットもすごい気に入ってるんですけど、井口さんがこのデザインを見せてくれたときに、「軽さ」っていうのがすごい大事だって言ってたんです。軽さは何かを跳ね除ける力になる。でもそれは決して軽薄さじゃない。それって、僕が考えてたことにすごく近かったんですよね。身軽さっていうのかな。今回はそういうものを作りたいと思ったんです。

― では最後に、アルバムを作り終えた今はどんなことに意識が向かっていますか?
今回の曲をとにかく練習して、ライブで完璧にやりたいです。前回のアルバムのときはそんなに思わなかったんですけど、今回のはライブでちゃんとやりたくて、今は意識がそこに向かってます。それっていうのも、健太郎と州とやってるバンド、Analogfishとしての完成度がすごく高い作品ができたからだと思うんですよね。
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  • 2015.09.16 On Sale
  • PECF-1125 / felicity cap-235
    [CD] ¥2,700 with tax

<TRACK LIST>

  • Baby Soda Pop
  • F.I.T.
  • Will
  • No Rain (No Rainbow)
  • Tired
  • 今夜のヘッドライン
  • Walls
  • Hate You
  • 夢の中で
  • こうずはかわらない
  • 泥の舟
VIDEO


PROFILE
Analogfishアナログフィッシュ
下岡晃 Analogfish『Almost A Rainbow』SPECIAL INTERVIEW3ピースにして、2ヴォーカル+1コーラス。
唯一無比のハーモニーを響かせる、希代のロックバンド。
vo,gtr 下岡晃の世に問う社会的なリリックと、
vo,bass 佐々木健太郎の熱々な人間賛歌が、見事に交差する楽曲群と、
drs,cho 斉藤州一郎のしなやかかつファットなプレイに、やられっぱなしの諸氏多し。
2015年9月16日に9th Album「Almost A Rainbow」をリリース。
Official WEB→ analogfish.com
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<TRACK LIST>

  • Baby Soda Pop
  • F.I.T.
  • Will
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