INTERVIEW

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YOLZ IN THE SKY『HOTEL』発売記念 柴田健太郎インタビュー

  • 2016.01.25
YOLZ IN THE SKY『HOTEL』発売記念
柴田健太郎インタビュー

文 金子厚武
写真 梅川良満

萩原孝信と柴田健太郎の2人編成となったYOLZ IN THE SKY、3年半ぶりの新作『HOTEL』が遂に完成。Yogee New WavesやD.A.N.などを輩出しているBayon Productionとfelicityとがタッグを組んでのリリースとなる。ドラムが抜けてビートが打ち込みに変わっただけではなく、ギターの音色やフレージングに対して徹底したこだわりを見せる柴田の実験精神が爆発し、ポストパンクでもクラウトロックでもミニマルテクノでもない、異形の何かへといよいよリーチ。柴田にアルバム完成までの道のりを訊いた。



―――― まず前作から4年半ぶりの新作ですが、その間はどんな活動を?
CMやラジオのジングルだったり、依頼される裏方の仕事をしたり。なかなか自分のモードがはっきりしなくて。

―――― 前作の発表後にドラムの平瀬さんが抜けて、2人編成となりました。それから3年半を経ての新作リリースとなるわけですが、試行錯誤の期間が長かったのでしょうか?
 そうですね。それまでは人力にこだわってやっていたところがあって、基本ドラムありきで考えてたから……どうしたらいいんやろうなって(笑)。

―――― 新しいメンバーを入れることは考えなかったんですか?
 もちろんなくはなかったんですけど、あんまり刺激的じゃないなと思って。ある程度想像できちゃうというか、それはもうええやろって感じ。結局パソコンを取り入れるんですけど、これまでもミニマルなことにこだわってて、それはテクノとかを人力でやる、その歪み具合が面白いと思ってやってたので、パソコンを使うのはそれとは逆じゃないですか?

―――― 基本的に、歪みはなくなりますよね。
 なので、最初はパソコン使うことに抵抗もあったんですけど、かといって、ドラム入れるのもどうやろうっていうのがあったから、結局選択肢がパソコンしかなくて(笑)。そもそもバンドをアンチテーゼでやってて、だからこそ人力にこだわってたっていうのもあったんですけど、最近はそういうのも目新しくなくなってきた気がして、だったらパソコン使った方が新しいことできるかなって。

―――― 確かに、バンドもDTMでデモを作ることが珍しくなくなったから、コピペでミニマルなものを作って、それを生演奏するっていうのが増えたような気はします。だからこそ、今はパソコンを使うことがアンチテーゼになると。
 最初から打ち込みをやっていた人とも違う、自分の解釈でできることがあるんちゃうかなっていうのがスタート。まあ、いろんな選択肢の中から模索してこうなったっていう感じですね。

―――― 過去三作を振り返ると、生演奏ではあったもの、徐々に音が加工されて行ったわけで、言ってみれば、今回その方向性をより振り切ったとも言えるのかなって。
 結果的にはそうですよね。だから、自分の中でも結構自然なんですよ。ひさしぶりにライブに来てくれた友達とかからは「めちゃ変わったな」って言われるんですけど、自分らとしては「そうかな?」みたいな。

―――― これまでを踏まえれば、自然な流れですよね。アンチテーゼの姿勢も変わってないわけだし。
 まあ、アンチテーゼっていうと立派な言い方ですけど、要は人と一緒のことをやるのが好きじゃないっていう。流行ってるもんとかそんなに興味ないから。

―――― 「人と一緒のことをやるのが好きじゃない」っていうのは、柴田さんのギターの使い方に明確に表れてますね(笑)。
 そうですね(笑)。

―――― じゃあ、2人になって、今は柴田さんがお一人で曲を作ってるわけですか?
 そうです。ボーカルは歌と歌詞だけで、他は何も関与してないです。

―――― クレジットは「萩原孝信:vocal」「柴田健太郎:guitar and more」となっています。
 ドラム類は普通に打ち込みで、ギターで鳴らしてるシンセの音が結構あったり。あとだいぶ昔にパソコンのデータが消えたことがあるんですけど、復元するソフトあるじゃないですか?あれを使ったときに、音のデータがそのままじゃなくて、バラバラに出たんですよ。それを覚えてて、今回の素材のためにそれをもう一回やってみようと思って、わざとデータを消して、復元して、めちゃめちゃになった音を素材として使ってたりします。

―――― じゃあ、加工はされてても、基本的に上ものの音はギターで出していると。
 やっぱりギターを中心にしたいというか、ギターの可能性を探りたいんです。エフェクターに関しては、ずっとアナログのエフェクターが好きで、昔のビンテージのやつとか、現行のでも変な音が出るのを集めてて……。

―――― 一時期は200個ぐらい持ってたとか。
 そうなんですよ。でもね、僕が若い頃は同世代にエフェクター集めてるやつそんなにいなかったんですけど、今はわりとみんなそっちに目が行ってて、変なエフェクターも結構出てるから、そうなるとなんか面白くないなと思って、全部排除したんです。それで今は、ギターの音色もパソコンで作るようになったんですよ。アナログのつまみとかって、ちょっと適当じゃないですか?それがいいとも思うんですけど、今は自分のイメージ通りの音をちゃんと作りたいから、プログラミングで作るようになって、弾き方もただジャーンって弾くのにはあんまり興味がないから、素材を使って組み立てていく作業が楽しくて、その結果、変なダンスミュージックになったというか(笑)。

―――― 最初からダンスミュージックを意識していたわけではなくて、ギターを中心に考えて、それをループさせたら、ダンスミュージックになったと。
 そういう感じですね。もちろん、ダンスミュージックは好きなんですけど、意識してそっちに行ったというよりは、結果的にそうなったっていうのが正しいと思います。

―――― ギターを道具として使って奇妙な音を出すっていう方向性は初期の頃からあったものではあると思うんですけど、そもそもなぜそうなったのでしょう?
 まず単純に、ギターの音が好きなんです。

―――― それはアンプ直でも?
 好きですね。ただ、演奏することはそこまで好きじゃないんです。「上手い人はいくらでもおるし」と思って、そっちの道で勝負しようとは思わなくて、「ギターでこんな音出るんや」とか、そっちに興味があって。ただ、やり始めの頃は今みたいに「組み立てる」っていう発想はなく、ソニック・ユースのノイズの出し方とか、そういうのに興味がありましたね。今はさらにそこから変化して、自分で音を作るのが楽しいです。
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―――― さっきも言ったように、DTMが一般的になった分、わりと同じ音を使う人が増えてる印象があって、「音の記名性」っていうのはより重要になっているように思います。
 そう、いろんなことがプリセットのように思えてきたんですよ。言うたら、エフェクターを使うっていうのも、決められたことの中でやってるような気がして、そこは打破していきたいなって。となると、自分で音を作る方向に行くわけですけど、打ち込みでパッとできるものって、ある程度プリセットの中だし、それをいじくるのも、やっぱりプリセットの中っていうか(笑)、そこに魅力は感じないんですよね。

―――― オリジナルな音を作るにあたって、誰かを参考にしたりはしましたか?
 あんまりそれはないんですよ。最近音楽を聴いてなくて……。

―――― 僕がパッと聴いて連想したのはバトルスの新作だったんですけど、聴いてないですか?
 バトルスが新作出したことを今知りました(笑)。今は何かを聴くよりも自分と向き合うというか、とにかく音を作ることに時間を割きたいって感じですね。他のを聴くと自分のやってるやつを客観的に見ちゃって嫌だっていうのもあるし、結構手間かけて音を作ってるんで、それがもし他の人と被ってたら落ち込むなっていうのもあったり(笑)。

―――― だとすると、音を作るときの柴田さんの基準はどういった部分なのでしょうか?
 何やろう……ただ変な音がいいってわけでもないからな……まあ、やっぱりよく聴く音は好きじゃないんですよね。響きに関して言うと、ギターってレギュラーチューニングでフレーズを弾くとすると、ある程度指の動きに限界があるから、めっちゃ変に弾いたとしても、わりとそれっぽいものになっちゃって、それも嫌やなと思って。例えば、6弦の1フレットのFの音と、1弦の一番高い音って、それを連打するのは無理じゃないですか?でも、音としてはアリだから、そういうのがランダムに鳴るようにプログラミングして、それを録音すると、それだけで響きが変わるんですよね。そういう「このつながりあんまりないな」っていうのがオッケーになりやすい。

―――― この前同じfelicityから作品を出してるSpangle call Lilli lineのギターの藤枝さんにインタビューをしたんですけど、藤枝さんも人と同じことをするのが嫌な人で、「一小節の中に8個音が鳴らせるスペースがあったら、あえて2個ぐらいにして、何かのフレーズになってしまわないようにする」ということをおっしゃっていました。
 そういう発想やったら、フレーズを2倍速とか2分の1倍速にするっていうのはようやりますね。それでだいぶイメージ変わるんで。人力で「ドレミ」って弾いて、それを機械で短縮すると、変な感じになる。最近はそういうのがエフェクターだと思い出してる気がします。何かを踏んでどうのじゃなく。やっぱり、パソコンでしかできへんことが結構あるんやなって気づいたのはでかかったですね。昔はパソコンって揺れもない、リズムマシンみたいなイメージでとっつきにくかったんですけど、パソコンやからできることって多いんだなって。当たり前かもしれないけど、でもやっぱり「どう使うか」が重要なんやと思って。

―――― ギターもそうだったように、パソコンもそうで、プリセットに頼ることなく、いかに自分なりの使い方をするかが重要だと。
 そこに気づいたのはでかくて、結構考え方変わりました。

―――― リズムに関しては、何か意識したことがありますか?
 ギターに合わせる感じですかね。打ち込みって、基本リズム中心じゃないですか?でもやっぱりメインはギターで考えてるんやなって、あとから聴いて思いました。もちろん、リズムを疎かにしたわけじゃないんですけど、ギターが生きるようなリズムってことですね。

―――― ビートは一定で刻んでいて、ギターで変化をつけるっていう形ですよね。
 何か軸があって、そこで変化が起きるっていうのがやっぱり好きですね。全部バラバラっていうのも面白いとは思うんですけど、今はそうじゃなくて、何かを軸にどうできるかって考えで、固定するのはリズムやから、ダンスミュージックになってしまったみたいな(笑)。
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―――― マスタリングに音響系テクノの鬼才として知られるPoleことステファン・ベトケを起用した理由は?
 レコード屋の人に「どういう人がいいですかね?」って訊いて決めました(笑)。大阪にNEWTONE RECORDSっていうダンスもんメインのお店があって、そこで働いてた人が新しく作ったお店があるんですけど、そこで訊いたんです。

―――― 最近だとオーブやデペッシュ・モードのマーティン・ゴアのソロ作などに関わっているようですが……。
 聴いてないです(笑)。「音にこだわってる」とか言っといてなんやねんって感じですよね(笑)。まあ、「どうなんやろ?」とも思ったんですけど、一回やってみるのもいいかなっていう、結構軽いノリで。それまでずっと自分一人で音を作ってたから、逆に人に任せたかったんですよ。

―――― ミックスはどなたですか?
 IROHA STUDIOの林田涼太さん。ミックスに関しても結構お任せで、違う人が入ってどうなるんやろっていうのが楽しみだったんです。あとでもし気になることがあれば言おうと思ってたけど、結果的に何も言うこともなく、林田さんにしてもらってよかったなって。

―――― ちなみに、ボーカルに関しては……。
 ボーカルは全く関与してなくて、歌詞も全然知らないです。何言ってるのかよくわからない(笑)。

―――― 萩原さんは今回の作品について何ておっしゃっていますか?
 最高やと思ってるみたいです(笑)。一曲できるとまず送るんですよ。「どう?」って。その反応が毎回楽しみなんですけど、いつも「いい」としか言わないから、「ホンマいいと思ってるん?」って訊いたら、「ホンマにいいと思ってる」って(笑)。

―――― 不思議な関係性ですよね。
 そうですね。音楽の話一切しないですからね。

―――― 最初は普通の4ピースのバンドだったんですけどね……。
 さっき「いばらの道を進んでる」って言われました(笑)。

―――― (笑)。ライブに関しては、今はどういう形態なんでしょう?
 基本的にギターとパソコンを同期させてて、普通のギターの音と混ぜてみたり、まだいろいろ模索してる感じで、あんまり楽しんでやってはいないですね。細かいトラブルが多いんですよ。それをリアルタイムで修正できへんから、今やったことが4小節後に鳴るみたいなタイムラグをつけてやってたりもしたんですけど、でもそれはそれで疲れたり(笑)。なんとでもできるから、逆に難しいんです。

―――― 来年のレコ発にはgroup_inouやskillkillsの出演が決まっていますが、彼らも他と同じことはやらない、自分たちの道を突き詰めてるバンドたちですよね。
 そういう人たちとは一緒にやりたいです。何かを手本にやってる人たちはあんまり好きじゃない。自分を確立してる人がいいですね。

―――― ヨルズもそうありたい?
 ありたいというか、勝手にそうなってる(笑)。別に思想みたいなものもないですし、大した考えがあってやってるわけじゃないんです。ただ、やっぱり人に聴いてもらいたいっていうのは思ってて、そうやなかったら、発表する意味もないですからね。
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HOTEL
  • 2015.12.09 On Sale
  • BAYON-002 / felicity cap-245
    [CD] ¥2,000 with tax
    Bayon Production / felicity からのリリースになります

<TRACK LIST>

  • Disturbance
  • Making colors
  • Text to speach
  • Hotel
  • 23.4
  • Operation
  • Overflow
  • Sunday
  • Passivity property
MUSIC
VIDEO


PROFILE
YOLZ IN THE SKYヨルズインザスカイ
YOLZ IN THE SKY『HOTEL』発売記念 柴田健太郎インタビュー萩原孝信: vocal
柴田健太郎: guitar

2003年結成。Less Than TVから1stアルバムをリリース後、Fuji Rock、SXSWなどに出没。
2009年にはfelicityより2ndアルバム『IONIZATION』を発表。
その後もライブ活動を中心に、多種の音楽性を吸収しながら進化を続ける。
無機質であるがゆえに揺り動かされるビート。テクノかと思えば、カオティックなノイズがカタルシスを感じさせるギター。いつ落ちるか分からない雷のようなハイトーン・ヴォイス。言うならば、一心不乱に踊り狂うためのミュージックである。

http://yolzinthesky.net/
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  • 2015.12.09 On Sale
  • BAYON-002 / felicity cap-245
    [CD] ¥2,000 with tax
    Bayon Production / felicity からのリリースになります

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  • Disturbance
  • Making colors
  • Text to speach
  • Hotel
  • 23.4
  • Operation
  • Overflow
  • Sunday
  • Passivity property
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