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DORIAN「midori」スペシャルインタビュー

  • 2013.11.08


DORIAN「midori」スペシャルインタビュー


80年代という時代やカルチャーに対する憧憬を洗練されたブギー・ディスコへとトランスフォームした前作『studio vacation』までの流れから一歩踏み出し、Dorianが完成させた新作『midori』。この作品はネイチャー指向、南国指向のチルアウトなダブやダウンテンポ、低速のビートダウン・ハウスをキャンバスに見立て、様々なレコードから採ったカラフルなサンプル・ピースやスティール・パン、シンセサイザーなどの音素材を配置することで"現代のエキゾチカ"と形容出来そうな目くるめくサウンドスケープが広がるアルバムだ。そのキャリアにおいて、ターニング・ポイントとなるであろう、この作品でdorianが描き出したものとは果たして?

――新作アルバム『midori』はこれまでの作風を一新したチャレンジングな作品ですよね。どういったアイディアを元に、制作を始めたんですか?
「今回のアルバムは1年半位前に曲を作り始めたんですけど、シンセサイザーをサインに使うとなったら、手ぐせで今までと同じような音が多く出てしまうことにどうしても納得がいかなくて。そんな時に七尾旅人さんがリスナーから寄せられたテーマに応えて、一晩で作曲、配信する「songQ」プロジェクトの一環で、そのリミックスを頼まれたんですね。そこでシンセやリズムマシンを封印して、サンプリングとエディットだけでリミックスを作るというルールを勝手に決めて、「DORIANの終わらないDEEP DESIRE」を完成させたんですけど、そこで得た手応えが今回のアルバムにつながったんです」
――つまり、シンセサイザー中心の音作りからサンプリング主体の作風へと変化したわけですね。
「そうですね。作品の方向性が定まってからはアルバム制作を念頭にレコードを買う事が多くなりました。ただ、あれこれレコードを聞きながら、「あ、これいいな」っていうパートをサンプリングして、それをもとに曲へ発展させていくやり方では作りたくなかったんです。そうではなく、自分のイメージする曲に合うキーやコード進行、音色のパーツをあえてレコードから探して、当てはめていく作り方。そこには作り手の意地もあったんですけど、VIDEOTAPEMUSICさんや七尾さん、MC.shirafuさん、KASHIFさんに参加してもらいつつ、手間がかかることは承知のうえで、曲ごとのバランスはありますが可能な限り、サンプル・ベースのアルバムを作ってみたかったんです」
――なるほど。
「あと、作風が変化した大きな要因の一つとして、ライヴの機会が増えて、クラブ以外の場所でやることも多くなりましたし、4つ打ちのパーティでライヴをやっていたら、家でハードな音を聴く機会も自然と減っていきました。そんななか、パソコンの画面上で4つ打ちのビートを置いていく作業に少し違和感を感じるようになったんですよね。かといって、僕の音楽からダンス・ミュージックの要素を切り離すことは難しいので、そうなると自ずとBPMのバリエーションも増えるというか。それから楽曲に関しては、例えば、ボサノヴァのように、昔から作りたいとは思っていたけれど、技術や知識が伴わなくて、どうしても出来なかったものも今だったら出来るかもしれないと思ったことも、ダンス・トラックにとらわれない曲のヴァリエーションに繋がったところはあると思います」
――例えば、エキゾチカ名盤として名高いマーティン・デニーの『EXOTICA』は音を通じて楽園の疑似体験を提供している作品ですけど、今回のdorianくんは、エキゾチカをサンプル・オリエンテッドなプロダクションで形にしていますよね。
「そうですね。去年、しばらく帰っていなかった地元静岡に旅行感覚で帰って、海や山、茶畑だったり、温泉だったり、子供の頃に行ったきりの場所、当時はあまりに身近すぎて足を運ばなかったところを回ってみたんです。その時のちょっとした旅行体験をぼかし気味にトレースしたり、整った音の風景を崩してみたり、はたまた違和感を感じる要素を敢えて置いてみることで、ヴァーチャルな音の旅という体裁に落とし込みたいなと思ったんです」
――前作の『studio vacation』のタイトルしかり、80年代と共にあるフュージョンやブギー・ディスコ、AORやシティ・ポップへの憧れを作品化したり、dorianくんはヴァーチャルなものに惹かれて音楽を作ってきたのはキャリアを通じて一貫していますよね。それはどうして何だと思います?
「多少のメッセージになりうる部分もありますが基本的に僕の音楽は誰かに対して、あるいは世の中に対して、特に伝えたいことがあるわけではないですし、実際の出来事は実際に見聞き出来るわけで、見聞きしたことあるような、ないような、そういうヴァーチャルでファジーなイメージを形にしてみたいんですよね。そして、今回は音の向こうに映像が見えるものになったらいいなって。そう考えていた時に自分が中学時代に隣の席の女の子に薦められて、テイ・トウワさんのアルバム『Sound Museum』や『Future Listening!』などを聴くようになった時のことを思い出したりもして」
――あのアルバムはまさにアップデートされたイージー・リスニング・ミュージックというか、音が映像を喚起する作品ですもんね。
「もっと言えば、そんなことを考えている時に実際にテイさんにお会いして、よくお話するようにもなったり。このアルバムにはそういう影響もあるかもしれませんね」
――最後に『midori』というアルバム・タイトルについて一言。
「以前のアルバムが青のイメージだったのに対して、今回のアルバムは静岡に帰った際に見た自然の風景や茶畑の色も無意識的に反映されているとは思うんですけど、作っている時にぼんやり緑の色彩が常に頭の片隅にあったんです。当初、アルバム・タイトルはもっと具体的なものを考えていたんですけど、作品の自由な広がりを念頭に『midori』というタイトルに決めました。ですから、アルバム・タイトルは自由に解釈してもらいたいですし、この作品も聴き手それぞれの解釈で気楽に楽しんで頂ければと思います」
Text by 小野田雄




DORIAN 『midori』DORIAN
midori


2013.11.06 On Sale

PECF-1079 [CD]
felicity cap-182
定価¥2,300 (税抜価格¥2,190)

iTunesamazon


[Track List]
01. Lost Seasons
02. Escape From The City
03. Onsen Holiday
04. River
05. Pieces Of Time
06. Night In Horai
07. Bird Eye Freedom
08. Legendary Pond
09. Silent Hill
10. Beyond The Horizon

詳細:https://1fct.net/releases/pecf-1079


Dorian/midori Digest






DORIANDORIAN
(ドリアン)


Roland のオールインワン・グルーヴマシン「MC-909」を使ったライヴやDJで東京を中心に全国各地で活動中。
ドリーミーでロマンティックなアーバン・ダンス・ミュージックで各方面から絶大な支持を集めている。
2009年、初の自主制作盤『Slow Motion Love』を発表。
七尾旅人×やけのはら「Rollin’ Rollin’」のアレンジおよびリミックスを手がけ両人のアルバムへの参加のほか、DE DE MOUSE、LUVRAW&BTB、ZEN-LA-ROCKらの作品への参加や様々なコンピレーションやリミックス、CS 放送のジングル制作やTV-CF への楽曲提供等手がけている。
2010年夏に1st アルバム『Melodies Memories』、2011年夏に2nd アルバム『studio vacation』をリリース。
そして2013年秋、待望の3rd アルバム『midori』が完成。

http://fruitsking.exblog.jp
https://twitter.com/Dorian_Dorian

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