INTERVIEW

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HALFBY 『INNN HAWAII』 発売記念インタビュー

  • 2015.11.11

HALFBY
『INNN HAWAII』
発売記念インタビュー

文 中村悠介(HALFBYと同じ八幡市出身)
文中写真 小山内信介(SECONDROYAL RECORDS)

じつに4年半ぶりの新作をリリースする高橋孝博ことHALFBY。
新しいアルバムのタイトルは『INNN HAWAII』。
そう、テーマはハワイだ。
ということで、京都は丸太町にあるハワイ系のカフェでインタビュー。
それにしても、今作のHALFBYはちょっと違う。
HALFBYのお母さんいわくは「やさしい」とのことだ。
ワンループから始まる3分半のポップスにマジックをかけてきた京都のポップクリエイターは今作でどう変わった? ワイハで一皮むけた? そもそもなぜハワイ? 地元の八幡じゃダメか?
とにかく、あのHALFBYが新しい幕を開けているようだ。

―――― まず前作から4年半ぶりの新作ですが、その間はどんな活動を?
CMやラジオのジングルだったり、依頼される裏方の仕事をしたり。なかなか自分のモードがはっきりしなくて。

―――― どういうことです?
今まではDJとかレコード屋の店員とか。自分がやっていることの延長で制作する感じだったけど、(スタッフだったレコード店の)JETSETを辞めたこともあって。時々キングス・オブ・コンビニエンスとかファイストの曲のリエディットをなんとなく作って、サウンドクラウドにアップしたりはしてたけど。アウディ・キムラとか。

―――― アウディ・キムラ?
ハワイの日系3世のシンガーソングライター。AORの。そのひとの曲のリエディットを作ってみたり…。

―― アウディ・キムラ?
(カフェ店員)失礼します、トロピカルフルーツティーです。

―――― ありがとうございます。…で、そのアウディ・キムラのリエディットが今作のハワイへの助走に?
助走でもあるけど、まだそれは前作や前々作の余韻みたいな、ほぼお遊び。作っていたリエディットはBPM100前後のゆったりした感じのもので。そういうものでDJをやりたいなとか考えてたり。

―――― ゆったりした感じ。それはなぜです?
もともとエッジーな感じではなくて、坦々とグルーヴを繋いでいくような。うまく言えないけど、90年代のインディーダンスとか、ヒップホップの12インチの裏面に入ってる緩いハウス・リミックスとか、ああいうレコードを繋いでいく方が好きで。とはいえ、DJのモチベーションは下がってるけど。

―――― 下がってる?
というか、まったくなくなった(笑)。JETSETを辞めたこともあって新譜を買わなくなったし。その代わり中古盤ばっかり買ってるけど。

―――― DJの耳で聞く、チェックするようなこともなくなった?
そう。音楽の接し方が変わった。今は中学生の頃みたいな音楽の接し方。幼稚(笑)になったというか。24才からレコード屋で働き始めて、DJやって。それが35才くらいまで。だから考えると10年間は、同じHALFBYモードでいたのかな。

―――― それじゃ前作からの4年半はHALFBYの転換期といえそうですね。では今作のテーマ、ハワイは?
最初の発端は昔、親が行ったハワイ旅行のアルバムを見ていて。おとんがアロハ着てたり。それは今のハワイの感じとはちょっと違って。ビンテージ感のあるハワイというか。飛行機から降りるとフラガールがレイをかけてくれるようなハワイ。

―――― そんな昭和のリゾート感に魅せられて?
まずは海外で羽を伸ばしたかった、これまでの自分のリミッターを外したかったという思いがあって。それと(YOUR SONG IS GOODの)J×J×とか自分の周りでハワイがざわつきだした(笑)ということもあり。それで行ってみて。

―――― ハワイの音楽に魅かれた、ということじゃないんですね。
イージーリスニングやムード音楽は好きだけど、ハワイアンが好きというわけじゃなくて。あとトロピカルなモードは前の前のアルバム(『THE ISLAND OF CURIOSITY』)でやったということもあるし。

―――― なるほど。
だけど、向こうでレンタカーのラジオを付けてると、ローカルのハワイアン・カントリーに混じってジャック・ジョンソンとかが一緒に流れたりするのは絶妙で。



お腹いっぱいにならないくらい

―――― それじゃハワイでなにしてました?
買い物と海と食べもの。

―――― いわゆる観光?
でも買い物といってもワイキキのおしゃれなとこじゃなくて(笑)。アンティークショップとレコード屋とか。

―――― ハワイでもホコリの多そうなところに。
食器だったりポスターだったりオールド・ハワイアンのムードが漂ってて。レコード屋にはアメリカから流れてきたムード音楽とかソウルとか。いわゆるAORみたいなのはあんまりないけど、ウクレレの弾き語りとかは全然ある感じ。

―――― そういったハワイでのぶらぶらが今作に繋がった?
ハワイに行って吸い込んだ空気が音楽に反映されたという感じかな。

―――― なるほど。そうやって何度かハワイに行きながら、ちょっとずつ制作を始めていたと。今回のアルバムのために曲はたくさん制作していたんですか?
うん。デモは全部で60トラックくらいあった。最後まで作ったけどボツにした曲もいっぱいあるし。アルバムの2曲目、3曲目に入れるつもりだったメインの曲を外したり。

―――― その基準というか、新しいHALFBYモードというべき、こだわりとは?
今回は、アルバム1枚を通してのトーンみたいなものを決めていて。うまく言えないけど、繰り返し何回も自分で聞いて、お腹いっぱいにならないくらいの情報量とか熱量とか。そういったルールを自分の中に定めて。パッと聞いて楽しい!みたいな感じのものではなくて。じっくりと長く聞けるものを。

―――― これまでの、いい意味でのバカっぽさというか、あえてのヤンチャ感というか。過去のHALFBYとは考え方が違いますね。
以前はワンアイデアで、1日で作る。そのバカっぽさの勢いの良さをあえてやっていたところがあったけど。これまで4枚のアルバムを出してきて、新しいアルバムで変化している、ということを見せたかったし、もちろん自分のモードが変わったし。だからこれまでの能天気な勢いはいらないかな、と思って。

―――― なるほど。
でも、作ってみたら結果的に1枚目(『GREEN HOURS』)の雰囲気、サンプリングであったりビートの感じだったりが似ているところがあることにも後から気付いたけど、今作は新しいモードというか。

―――― そもそも新しいモードで制作に臨んだ理由は?
前のアルバム(『Leaders Of The New School』)の制作の時に、いろんな情報が自分の中で整理がつかなくなって。そのアルバムの後に、もうこのままHALFBYとしての制作を辞めるか、違う名義でやるか? それとも裏方の仕事をやっていくか?って考えたことがあって。だから今回は一度リセットして考えてみた結果で。



ハワイとのトーンの調整

―――― これまでのHALFBYと今のHALFBY、それぞれの違いをどう捉えています?
これまでは、こういうアーティストがいて、こういう曲があればいいのに、という考えで。誰もやっていない面白いアイデアを思い付いたから自分で曲を作る。そこに価値があると思ってたけど、今回はそういう意識はまったくなく、坦々と自分の中の引き出しを開けて、そこにハワイで得たものを合わせて作ったという感じかな。

―――― ハワイで得たもの?
制作期間の中に何回もハワイに行って、現地でドライブしながら聞いてみたり。ハワイとのトーンの調整というか(笑)、景色との調和というか(笑)。のべ3年くらいは作ってたかな。

―――― 現地で鳴らしてみている、となるとこれは架空の世界のファンタジー音楽ではないわけですね。
実際にハワイの空気感を浴びて、というところもあるけど、憧れのアメリカがハワイにあった(笑)という部分では。

―――― もはや本土にはない憧れのアメリカをハワイで。というところで、夢にいつか見たよなファンタジー、な部分も。
うん。自分の(憧れのアメリカへの)解釈がだいぶ入ってる。

※しばしアメリカのノベルティーグッズ、おもちゃの話に。写真はHALFBYが持参してくれたハワイのおもちゃ。

―――― ハワイ。憧れのアメリカ。他に今作に影響を与えたものは?
迷いながらも音源は作ってたけど、自分がちゃんとアーティストとして、またアルバムを出したいなと思ったキッカケは、VIDEOTAPEMUSICとかYetiiとかのライヴを見て。Yetiiはハイラマズの『ハワイ』にムードが近くて。あとDORIANの"midori"が素晴らしくて。どれもノスタルジックなムードなんだけど、自分には凄く新鮮に聴こえた。

―――― 90年代ならモンドと呼ばれるような。
そうそう。(シアトルのレコードレーベルの)SUBPOPがグランジからラウンジへ、って言ってたときがあって。コンバスティブル・エジソンがタランティーノの映画をきっかけにちょっと売れたりとか。ジャズやイージーリスニングを現代風にアレンジしたような。そのときのシーンが好きでけっこうレコード買ってたけど、その感じに似てるというか。

―――― なるほど。話は変わりますが、この新作を実家の家族に聞かせたりしてますか?
うん。おかん、いつもキッチンのCDラジカセで晩ごはん作るときに音楽かけるんやけど。石原裕次郎とか森進一とか。最近は僕のCDを毎日聞いてる(笑)。

―――― 感想は?
“これまでのあんたのCDより、やさしい”って(笑)。

―――― 間違いない。
“今までのは賑やかでゴチャゴチャしてたけど今回は、やさしい”(笑)。ねっとりした歌い方で、北里くん(今作に参加しているAlfred Beach Sandal)の歌を歌ってる(笑)。“私が音楽好きなところが遺伝したんかなぁ”って(笑)。なにか頼む?

―――― あ、そうしましょう。
すいません、ココナッツミルクコーヒー。

―――― それ2つで


※その後、話は公開を控える『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』から、『スター・ウォーズ』のマニアックな話に。最終的には「今度ハワイ行ったら絶対トイザらス行く!」とのことだ。

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  • 2015.11.11 On Sale
  • PECF-1129 / felicity cap-242
    [CD] ¥2750

<TRACK LIST>

  • A.L.O.H.A
  • Welcome To Old Island
  • Birdsong
  • Plate & Cola
  • Pearl Harbor
  • A.L.O.H.A 02
  • Rover
  • Slow Banana feat. Alfred Beach Sandal
  • Mauna Kea Night Sky feat. Electric Sisters
  • Hula Girl
  • Sweet Kamehameha
  • Morning Glass Coffee feat. VIDEOTAPEMUSIC
  • Kids feat. Alfred Beach Sandal


PROFILE
HALFBYハーフビー
HALFBY 『INNN HAWAII』 発売記念インタビュー

高橋孝博( たかはしたかひろ)のソロプロジェクト。
これまでにメジャーを含む4枚のアルバムをリリースし、全てのアルバムの楽曲は、日々お茶の間のBGMとしてテレビやラジオで延べ10年以上使用され続けている。平日はリミキサー/アレンジャーなどと並走し、アーティストへの楽曲提供から、企業CM、映画音楽などの制作をライフワークに、週末はDJとして京都から全国各地へ。2015年11月4年ぶりとなるニューアルバム「INNN HAWAII」をリリースする。

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    [CD] ¥2750

<TRACK LIST>

  • A.L.O.H.A
  • Welcome To Old Island
  • Birdsong
  • Plate & Cola
  • Pearl Harbor
  • A.L.O.H.A 02
  • Rover
  • Slow Banana feat. Alfred Beach Sandal
  • Mauna Kea Night Sky feat. Electric Sisters
  • Hula Girl
  • Sweet Kamehameha
  • Morning Glass Coffee feat. VIDEOTAPEMUSIC
  • Kids feat. Alfred Beach Sandal