INTERVIEW

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おとぎ話"ISLAY"座談会(前編)

  • 2016.10.26

おとぎ話"ISLAY"座談会(前編)

聞き手/おとぎ話1号
写真/タイコウクニヨシ

前作『CULTURE CLUB』から、約1年9か月ぶりに待望のニューアルバム『ISLAY(アイラ)』を発表するおとぎ話、アルバム発売を前にメンバーによる座談会を敢行!“劇的に変化”した創作の過程から、恒例のアルバム全曲解説まで、4人がすべてを語った特別インタビュー(前編)をお届け!!

■『CULTURE CLUB』ができた直後から、「次、どうする?」みたいな話はしてたんですよ(有馬)

― まず、前作の『CULTURE CLUB』が、バンドの総決算というか活動のクライマックスみたいな重要なアルバムだったじゃないですか。

※メンバー一同、うなづいて。

― なので、単純に“この次”というのは非常に難しかったんじゃないか、と想像するんですけど。
有馬 ああ。ただ、『CULTURE CLUB』ができた直後から、「次、どうする?」みたいな話はしてたんですよ。

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― あ、もうすぐに次の話をしてましたか。
有馬 ええ。で、felicityの櫻木(景/プロデューサー)さんと話しているときに、「一曲、アンセムみたいな曲がほしいね」という話があって。そこで名前が上がってたのが、BLURの『ガールズ&ボーイズ』とか、電気グルーヴの『シャングリラ』とか……。
牛尾 いわゆるディスコっぽいダンスチューンだよね。
有馬 ウン。で、一聴して「おとぎ話、変わったね!」みたいなイメージの曲が欲しいねと。それが『JEALOUS LOVE』(7インチシングル)に繋がっていったんですね。で、「そういう曲をつくってみたい!」という意思のもと突き進んで行って。

― ただ、『JEALOUS LOVE』は、いままでと曲調がガラリと変わってますよね。完全な新機軸というか。
有馬 まあ、こういう曲をやったことなかったから。そういう面で「チャレンジしてみよう」って部分もあったけど、やり始めたら「やったことないことをやってる」感はなかったかな。
牛尾 制作過程はいつもどおりでしたね。ただ、「こういうタイプの曲をやろう!」と、4人が共通意識を持って作るということは経験がなかったんで……。

― 初のダンスチューンということで、当初は前越くんが苦戦していたみたいな話も聞いてましたが。
前越 ああ~。たぶんメトロノームに合わせて練習したり、バックでオケも鳴ってるし。単純に「ズレたらダメだ」という緊張感はありましたね。でもドラミングって部分ではべつに……普通っスね(笑)。

― あ、意外と普通でしたか(笑)。
牛尾 ただ、自分から見てると、こういうダンスナンバーってドラムのリズムが一定じゃないとダメなんですね。ドラムの起伏をあまり付けられないという部分では、「ダンスミュージックってなかなか難しいんだな」とは思いました。

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■『JEALOUS LOVE』はアーバン感や良質な“J-POP感”、いい意味で“ハイファイ”な感じにしたいなと思って(牛尾)

― 加えて、『JEALOUS LOVE』って、メロディが凄く重層的じゃないですか? もうメロディの応酬というか、“メロディに殺される”と言うか……。
牛尾 それ、いい表現ですね(笑)。
有馬 ただ、つくっていた時はけっこう大変でしたね。この曲って男性的な歌詞じゃなく、わざと性別を入れず、むしろ女性のつもりで作ったんですよ。しかも、いままでのような“一人称”じゃなく、“三人称”というか。女性が唄うような視点で歌詞を作ってるから、いままでと違うメロディが出てきたのかもしれない。

― 裏声みたいなメロディが入ってきたり。どこか宇多田ヒカルさんの曲のような印象もありますし。
有馬 あ、まさにこの曲を作っている時には宇多田ヒカルをよく聴いていたんですよ。しかも宇多田ヒカルって、万人に受けるような歌詞じゃなく、じつは“一人ぼっち”な歌詞が多いじゃないですか。「そういう曲がヒットしたのって凄いな」と思いながら、「じゃあ自分ならどういう歌詞を書くのか?」と。

― 歌詞の部分でも研究していったというか。
有馬 ええ。ただ、万人に受けるディスコをつくるつもりにはなれなかったから、他の取材では“切実なディスコ”と言いましたけど(笑)。ディスコだけど、自分一人で聴いているような。けして、ライブで肩を組んで「みんなで歌おうぜ」みたいにはならないというか。

― なるほど。あと、これもいい意味でですけど、『JEALOUS LOVE』には“J-POP感”も感じますね。
牛尾 あ、そういう話も作ってる最中に出てました。宇多田ヒカルみたいなアーバン感や良質な“J-POP感”。いま流行りのシティポップとかじゃなく、本当にいい曲の流れにある、いい意味で“ハイファイ”な感じにしたいなとは思ってて。

― ただ、最初のシングルで、ここまで大きく転換したというのは、やはり『CULTURE CLUB』で“やりきった感”があったんですかね。
有馬 いや、絶対そうだと思いますよ。『CULTURE CLUB』でいままでの表現を突きつめたというか。これまでの有馬の独裁政治みたいな方法論じゃなく、「メンバーが何をしたいのか?」みたいな部分もやっと反映できるようになったんで。

― なるほど。
有馬 この『JEALOUS LOVE』も、ギターやドラム、ベースから自然と生まれてきた音から「コッチのほうがいいんじゃない?」って感じで、交通整理しながら生まれてきた部分が大きいし。
前越 たしかにイントロの「パラララ~、パラララ~♪」みたいなフレーズも、牛尾がふざけて弾いてたのを「なんかそれダサいけど、めちゃくちゃクールじゃない?」「え? どれ?」「それだよ!」みたいな感じだったしね(笑)。

■なんかさ、「やっと音楽の作り方を覚えた!」みたいな感覚があるんだよ(牛尾)

3

― あらためて『CULTURE CLUB』と今回のアルバムで一番の違いってどこでしょう?
有馬 やっぱり全体的に“つくり方”が真逆というか。『CULTURE CLUB』のときは、「これまでやってきたことの集大成」って感じだったけど、今回は「これから何をやろうか?」という姿勢でつくっていったので。
前越 あと、なんか全体的に「ベースラインを活かしてる」感覚があるんですよ。いままでは曲があって、そこにベースで味付けしていく感じだったけど。今回はまずベースラインありき。それを抜き差しつつ活かしつつメロディを乗せていくスタイルで。
有馬 そうだね。やっぱり「土台がシッカリしていないとダメだな」と思って。今回は、まず先にリズム隊の骨格を決めたうえで、メロディとかギターを乗せていった。でも、最近ずっと“リズム隊”ありきでつくっているから、このやり方になって曲をつくるのがすっごいラクなんですよ(笑)。
風間 でも、そういうやり方も『JEALOUS LOVE』で気付いた感はありますね。
牛尾 なんかさ……、俺が思ったのは、「やっと音楽の作り方を覚えた!」みたいな感覚があるんだよ(苦笑)。
メンバー ハハハハハ!
有馬 わかる! 「15年バンドやって、7枚アルバムを出して。やっとおとぎ話は音楽のつくり方がわかった」みたいな(笑)。
牛尾 だから、今回はリズム隊の重要度が飛躍的に上がってますよね。
前越 そういう意味で、俺らもプレッシャーがあるし。(風間に向かって)でも、けっこう……やってておもしろいよね?
風間 スゲー、おもしろいね(ニッコリ)。
前越 なんで、今回は割とシッカリとリズム隊を作ったんですよ。しかも、有馬&牛尾という凄く厳し~い審査を乗り越えて(笑)。
有馬&牛尾 ハハハハハ!
牛尾 まあ、普通のバンドにしたら「いまさらそんなこと言ってるの?」みたいな感覚だろうけど(苦笑)。
 
有馬 俺たち、音楽のつくり方を知らなかったから(苦笑)。
前越 そういう部分をホントは“100点”で返したいけど、まだまだ全然返せてない。ただ、ドラムにもベースにも理想があって。その理想の音は聞こえるようにはなったね。

4

― だからなのか、今回のアルバムを聴いたとき、いい意味で「全部の曲が似てるな」と思ったんですよ。
有馬 ああ、それはありがたい意見ですね。

― 『CULTURE CLUB』はそれぞれの曲が独立してる印象があったけど、今回は全部の曲が束になってアルバムを構成してるというか。それも「リズム隊ありき」の話に繋がるのかもしれない。
牛尾 なるほど。こうして話していくと……、自分たちのことがわかっていきますね(笑)。

■「島 ウイスキー」でググったら、「アイラ島(ISLAY)」っていうスコットランドの島が出てきたんです(前越)

― で、アルバムの今回のタイトルが『ISLAY』(アイラ)という、これは不思議な言葉ですけども。
有馬 コレは前ちゃんが命名したんです。レコーディング終盤に、「タイトルどうする?」って話してたんですけど。なんか「造語みたいな、新しい言葉を作ろうか?」みたいな話もしてたけど全然決まらなくて。あげくのはてに牛尾が『今でしょ!』とか言い出して(笑)。

― アルバムのタイトル候補が『今でしょ!』(笑)。
有馬 「さすがにマズいな」となってきて(笑)。そのとき前ちゃんが、スマホで検索して……あれはどうやって調べたの? 
前越 あれは『夜明けのバラード』っていう曲の歌入れが終わったあと、「なんかこの曲はウイスキー飲みながら聞きたいな」と思ってて。あと「タイトルはロマンチックなのがいいな」と思ってたんで。まず「島」っていうワードが浮かんだんですよ。で、「島 ウイスキー」でググったの。そしたら、「アイラ島(ISLAY)」っていうウィスキーを作ってるスコットランドの島が出てきて。

― このISLAYは、読み方が「アイスレイ」じゃなくて、「アイラ」なんですね。
有馬 そうですね。そこはスコットランド訛りが入ってるみたいで。
前越 で、メンバーと「女性の名前でもイイね」みたいな話もしてたんで、「アイラなら、女性の名前としてもイケるな」と思ったし。で、有馬に「ちょっと、とんでもねえタイトル思いついたんだけど」と言って。「カッコよすぎて、言うの緊張すんだけど」みたいな(笑)。
有馬 「カッコよすぎて、俺はあんまりオススメしないんだけど」とまで言ってたよね(笑)。
前越 それで「“アイラ”ってどうかな?」って話したら、「何それ? 響きがメッチャいいね!」となって。そこで、意味も含めてプレゼンしたんだよね。
有馬 自分でも検索したら「スコッチウイスキーは、ドンドン風味が増してきて、作った初年度より、あとからフレーバーがドンドン熟成されていい味になってくる」とか書いてあって。そこもいいなと。「ずーっと何度も聴けるアルバムをつくった」という意味づけにもなるし。
前越 あと、アイラ島で作られてるスコッチウイスキーは、シングル・モルトウイスキーしか作られてなくて。ブレンドされてない。一つの麦芽だけを凝縮してるってのが、おとぎ話の4人と重ね合わせやすかったり。ホント、調べれば調べるほど、いろいろなモノが符合していく感じで。

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■「ココにこういう曲が入っていないとよくないね」みたいな作り方は初めてでしたね(有馬)

1: 『JEALOUS LOVE』

― では、一曲づつ話をしていきたいんですけど、あらためて一曲目を『JEALOUS LOVE』にしたのは?
有馬 最初に言った「おとぎ話、変わったね!」という部分に通じるんですけど。櫻木さんとも話して、アルバムを聞いた瞬間に「おっ?」「これがおとぎ話?」と思わせたいなという意図はありましたね。

― 『CULTURE CLUB』からのブリッジ的な意味合いもあるのかなと思ったんですけど。
有馬 あ、そこはまったくなくて。ただ、これが一曲目なのも何度も聴き直すほど、その理由がわかってくるようにはしたかったかな。

2: 『ブルーに殺された夢』

― で、2曲目は『ブルーに殺された夢』。これはエッジが効いたギターサウンドで、歌詞はかなりダークというか。
有馬 これは、1曲目が『JEALOUS LOVE』というのは決まってて。ほかの曲も出そろっていて。ただ、ほかの曲は優しい手触りの曲が多かったから、みんなで「2曲目は攻撃的な曲を入れたいね」と言ってたんですよ。ちょっとエッジーでノイジーな曲を作りたいなと。

― でも、曲が出そろったあと、「なんかココに入れたいね」という作り方って、新しいですね。
有馬 いままではなかったですね。「展開としてココにこういう曲が入っていないとよくないね」みたいなつくり方は初めてで。

― それって凄く映画みたいな作り方というか
有馬 そうそう。後からシーンを追加撮影しましたみたいな(笑)。あと、『ブルーに殺された夢』ってのは、昔の映画のタイトルみたいなタイトルなんですけど。映画みたいな曲の歌詞にしたい、というのは念頭にありましたね。最近、映画をいっぱい観ているんで。

■自分たち的には新しいことをやってるつもりなんだけど……。たしかにこの曲をやるとみんな喜ぶんだよね(有馬)

3:『TEENAGE KIXX』

― で、3曲目が、『TEENAGE KIXX』ですけど。じつは今回、この曲がここに入ってるのにはけっこう驚いて。
有馬 あっ、そうですか。

― 最近のライブでもやられてたと思うんですけど、あまり“新曲感”がなくて。印象としては初期・おとぎ話っぽい曲じゃないですか。
有馬 ああ~、鋭いっすね。じつは、この曲自体はセカンドアルバムくらいにつくってあったんですよ。歌詞もほぼあったんだけど、当時は「発表するのは、今じゃないな」と思ってて。

― この曲が入ることで、新旧の曲が散りばめられている現在のライブを観ているような感覚があって。サウンドは最新型のおとぎ話ですけど。
牛尾 まあ、「入れるんなら、今でしょ!」ってのはありましたね。以前ならこういう曲調にはなってないし。ギターとかコードが進行しても、ギターフレーズはずっと一緒で。そのへん『JEALOUS LOVE』にも通じますし。
有馬 メロディとかは、メッチャおとぎ話っぽい曲なんだけど今回のアルバムっぽい響かせ方はちゃんとできてるよね。

― では、昔からのおとぎ話ファンに安心感を与えるために入れたということではない?
有馬 あ、それは全然ないですね。自分たち的には全然新しいことをやってるつもりだけど……。ただ、たしかにこの曲をやるとみんな喜ぶんだよね(笑)。
牛尾 むしろ、「安心感は与えたくない」くらいの気持ちなんですけど(笑)。

― でも、バンドとして無理ないかたちで入っていて、ファンも喜んでいるのであれば、凄く幸せなケースですよね。
有馬 結果、そうなってるというのがイイなと。音源になった時点で、みなさんそれぞれの解釈で聴いてもらえればいいだけなんで。しかも、現在のスタイルで演奏できてるから、ボクらのストレスも全然ないし。

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ISLAY
  • 2016.10.26 On Sale
  • PECF-1142 / felicity cap-259
    [CD] ¥2860

<TRACK LIST>

  • JEALOUS LOVE
  • ブルーに殺された夢
  • TEENAGE KIXX
  • セレナーデ
  • 蒼い影
  • YUME
  • DREAM LIFE
  • 天国をぶっとばせ
  • 太陽の讃歌
  • めぐり逢えたら
  • 夜明けのバラード
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PROFILE
おとぎ話otogivanashi
おとぎ話

2000年に大学で出会った有馬と風間により結成。その後、同じ大学で出会った牛尾と前越が加わり現在の編成に。2007年にファーストアルバム『SALE!』以来、8枚のアルバムをリリース。felicity移籍第一弾アルバム『CULTURE CLUB』(2015年)が話題に。映画『おとぎ話みたい』での山戸結希監督とのコラボレーションは熱烈なフォロワーを生み続けています。同じく山戸監督による映画『溺れるナイフ』提供曲「めぐり逢えたら」を収録した前作は『ISLAY』(2016年)。2018年6月、アルバム『眺め』をリリース。2019年9月、10枚目のアルバム「REALIZE」を配信のみでリリース。ライブバンドとして評価の高さに加えて映画、映像、演劇、お笑い等、各界クリエーターよりのラブソングは止みません。「日本人による不思議でポップなロックンロール」をコンセプトに掲げて精力的に活動中。
有馬和樹(Vo.Gt), 牛尾健太(Gt), 風間洋隆(Ba), 前越啓輔(Dr)

http://otogivanashi.com/

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  • PECF-1142 / felicity cap-259
    [CD] ¥2860

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  • JEALOUS LOVE
  • ブルーに殺された夢
  • TEENAGE KIXX
  • セレナーデ
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  • YUME
  • DREAM LIFE
  • 天国をぶっとばせ
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