INTERVIEW

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カフカ鼾 スペシャルインタビュー

  • 2014.03.06
カフカ鼾(いびき)。一度、聞いたら忘れられない名を持つそのバンドは、ジム・オルーク(シンセ、ギター)、石橋英子(キーボード、ピアノ)、山本達久(ドラム)の3人によって結成された。ファースト・アルバム『okite』は、2013年6月21日に即興で演奏されたライヴをそのまま収録したもの。全1曲37分という長丁場のなか、3人の息のあった演奏が織りなすサウンドは、まるで不穏な美しさを放つオーロラのようにゆっくりと変化し、深まり、昂り、爆発して、拡散する。3人が目指す音とは一体どんなものなのか。そして、なぜ鼾なのか。その手掛かりを得るために3人に話を訊いた。


————まずはバンド結成のいきさつを教えてください。
石橋 「いつもレコーディングで使っているスタジオで、(2013年の)正月にべろべろに酔っぱらって3人で録音したのが最初かな。その時、スタジオの外で(スタジオのオーナーの)カフカさんがガーガーいびきをかいて寝てて」
————あ、それでカフカ鼾に。
石橋 「そうです。この時、レコーディングした音源は後でBand Campにあげたんですけど、それとは別にカフカさんの鼾が入っている音源もあるんですよね(笑)」
————聞いてみたいですね、〈鼾ヴァージョン〉(笑)。3人でカフカ鼾というバンドをやっていくにあたって、即興をやる、ということ意外にバンドのコンセプトみたいなものはあるんですか?
ジム 「ないでしょう。これまで何度もやってきているから、何も言わないでもどんな感じかわかります」
————じゃあ、この3人で演奏する面白さはどんなところですか?
ジム 「3人の即興だったら、もし、私、演奏したくなくても大丈夫です。あとの2人が演奏しているから。2人だと1人がやめるとソロになる。この3人だと、そういうプレッシャーがない」

石橋 「そうですね。よく知っている者同士だから、演奏したくない時はしなくていいし、ゆっくりと自分の入るスペースを探して流れを作っていけるっていうのはありますね」
————信頼関係があるからこそ、余計な気を使わずに演奏に集中できるわけですね。
石橋 「ただ、時々タツ(達久)がね……(笑)」

ジム 「歳上の私達が我慢の演奏をする時に(笑)」
————大人な我慢を(笑)。今回リリースされた『okite』は2013年6月21日に行われたライヴがそのまま収録されているそうですが、その日の演奏のことで覚えていることがあれば教えてください。
石橋 「いつもはピアノばっかり使っていたんですけど、あの日は結構いろんな実験をしました。毎回カフカ鼾の演奏する時は、何か自分でも驚きのある事を体験したいので、新しい音色やフレーズを探して行きました。」

ジム 「あの日、初めてカフカ鼾でシンセを使った。それまではギターでテーマをよく使ってた」

石橋 「ああ、〈カフカ鼾のテーマ〉」
————何ですか、それ?
石橋 「ジムさんのなかで〈カフカ鼾のテーマ〉というフレーズがあるみたいで。私たちには全然わからないけど(笑)。ベースライン?」

ジム 「そう。ブーン、ブブーン……。いつもそのフレーズ弾いてしまって困った。だから、あの日からギターを使わなくなった」
————(ここで山本達久が遅れて登場)。いま6月21日のライヴの話をしていたんですけど、山本さんは印象に残っていることはありますか?
山本 「えっと、あの日は左手側にレズリー・スピーカーがあって、その横に自分のモニター・スピーカーがあって、その音がデカすぎて二人が何をやっているか全然わからなかったんです。なんか目隠しして演奏しているみたいな感じで。だから今回のアルバムを聴いて、こんな感じだったのか!ってビックリしました」

ジム 「(ニヤっと笑って)多分、それ嘘でしょう」
————演奏の後半、山本さんのドラムが加速して場を引っ張っていきますね。
山本 「聞こえないからって萎縮せずにバカになってよかったなと(笑)。俺、いける時はいっちゃう人なんで。二人がそれをうまく受けてくれてよかったです」
————そういえば、さっき二人が我慢の演奏をする時もあると。
山本 「そうそう。俺が切腹して二人に介錯してもらうみたいな感じ(笑)」
————そんな山本さんにとって、カフカ鼾で演奏することの面白さってどんなところですか?
山本 「普段からいろんなところで即興をやってるんですけど、ほかだと展開が早くてコラージュみたいな演奏になるんですよ。でも、この3人だとひとつの展開を長く、じっくりとできる。変わらなくて終わることもあるし。ほかだと足し算の演奏になるんですけど、ここは引き算ができるんですよね」

ジム 「それ、少し面白い話。私、ジョン・ゾーンの後の世代。多分、達久はもっと後の世代でしょう。80年代にそういうコラージュ・スタイルの即興がすごく流行った。私、それに少しアレルギーになった。そういう即興はウェディング・バンドっぽい。今ロック、今ソフト、今ジャズ、いつも、今、今、今」

石橋 「ジョンさんのはあまりにも早いコラージュだからそれで流れができるけど、その流れができないコラージュみたいな即興は、あまり考えがない気がしますね。ある意味、キャッチーだからウケはいいけど」

ジム 「ジョンさんの作品は面白い。でも、彼の影響は少し残念だった。彼のマネをする人は表面だけ」
————ひとつのテーマをゆっくりと深めていく、というのはジムさんと石橋さんに共通した志向なんでしょうか。
ジム 「そういう話はしていなけど、私は若い時から早く変わることにアレルギーがあった。それはアラン・リクトとか、私の世代のアーティストはほとんどそう」

石橋 「私もそうかも。即興のライヴに行くと芸の連続みたいな感じで。そこに疑問は感じていましたね。そういうものをじっくり聴きたいのだろうか、と。」
————今回のアルバムでも、途中から同じテーマが反復して展開していくところが気持ちいいですね。
ジム 「それは良かった。でも私、1回か2回くらいしか、このアルバム聴いてない。私、自分の音楽全然聴かないから」

石橋 「私も2回くらいかな」

山本 「俺、20回くらい(笑)。車の中で音量マックスで聴いてます」
————即興というと演奏者の自我のぶつかり合いみたいになることも多いですが、本作では繊細に、緻密に音が構築されていくのが印象的でした。
ジム 「即興の音楽だけど、即興というのは道具だけでしょう」

石橋 「手段ですね」

ジム 「ライヴした時、私達が音楽やろうという感じは、即興しましょうの意味じゃない。即興だけど、実はどういう音楽をやりたいかわかってる。何も言わなくても。少し規則はある。その話はしないけど、私達わかってる」

山本 「コードの縛りがあったり、〈これで終わり〉というのがあったりするんですよ。それぞれ音楽的な土壌は違うけど、好きな音楽が共通しているし、一緒に過ごす時間も長いので、それが一種の縛りになってるところもあって」
————さっき話に出ましたけど、やはり3人の関係性がサウンドに反映されているんですね。最後にアルバムのタイトルについて教えてください。〈okite〉って〈掟〉のことですか?
山本 「違います。〈起きて〉。ウェイク・アップっていう意味」
————ああ、鼾をかいて寝てるから「起きて」と(笑)。
山本 「そう。みんな〈掟〉だと思うみたいで、〈どんな掟?〉ってよく言われるんですよ」

ジム 「ん? 別の意味ある?」

山本 「ルール。ちょっと固い感じの」

ジム 「それ、知らなかった。(あらたまって)教えて頂いて有り難うございます(笑)」
————バンド名もタイトルもふざけてますね。
山本 「このバンド名、〈カフカ軒〉だとよく間違えられるんですよ。どこのラーメン屋やねん!っていう(笑)」

石橋 「よく言われるよね、〈カフカ軒〉。もうバンド名それにしょうか。」
————タイトル『demae』とか。
山本 「それ、ヤバいですね(笑)」

石橋 「まぎらわしいって!(笑)」
text : 村尾泰郎
photo : 梅川良満
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okite
  • 2014.01.22 On Sale
  • PECF-1086 / felicity cap-189
    [CD] ¥2,200 with tax

<TRACK LIST>

  • okite


PROFILE
カフカ鼾Kafka's Ibiki
カフカ鼾 スペシャルインタビュー2013年元日に目覚めたばかりのニューカマー。
ジム・オルーク (Synth, Guitar, Guitar) 、石橋英子(Key, Piano)、山本達久 (Drums)という説明無用のトリオ編成。まだ指で数えられるライブ本数ながら全てのライブでオーディエンスを熱狂の渦に巻き込んでいる噂のバンド。100枚限定で即完売したCD-RとBandcampで音源を発表。Bandcampで発売を始めた途端、日本のみならず、海外の音楽サイトで取り上げられるなどすでに世界規模で注目を集めている。


【Info】

felicity HP
http://1fct.net/

カフカ鼾 Bandcamp (音源視聴もできます)
http://kafkasibiki.bandcamp.com/album/kafkas-ibiki
石橋英子Eiko Ishibashi
石橋英子茂原市出身の音楽家。いくつかのバンドで活動後、映画音楽の制作をきっかけとして数年前よりソロとしての作品を作り始める。その後、4枚のソロアルバムをリリース。ピアノをメインとしながらドラム、フルート、ヴィブラフォン等も演奏するマルチ・プレイヤー。シンガー・ソングライターであり、セッション・プレイヤー、プロデューサーと、石橋英子の肩書きでジャンルやフィールドを越え、漂いながら活動中。最近では長谷川健一、前野健太、トンチ、オウガ・ユー・アスホールの作品に参加。またソロライブと共に、バンド「石橋英子withもう死んだ人たち(ジム・オルーク、須藤俊明、山本達久、波多野敦子)」としても活発にライブを行う。

http://www.eikoishibashi.net/
http://twitter.com/Eiko_Ishibashi
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