
Spangle call Lilli line 藤枝憲 × プロデューサー美濃隆章(toe)スペシャル対談
- intervew & text:小野田雄
- “toeはいま何を考えてるんだろう?”って、ずっと思っていたんです。(藤枝)
- ──今回のアルバム以前に、お二方は親交があったんですか?
- 藤枝「toeの作品を聴いたり、ライヴを観に行ったことはあるんですけど、親交は全くなかったんです。でも、美濃さんのことは、実はよく見かけてますし(笑)、うちのギターの笹原くんが普段カメラマンなんですけど、美濃さんがtoe以前にやってたバンドの写真を撮ったことあるみたいで(笑)」
美濃「あ、そうなんだ(笑)。じゃあ、探れば、色々つながりありそうですね」
藤枝「色々あるはずですよ。ちなみに今年おいくつですか?」
美濃「今年36の寅年です」
藤枝「やっぱり。僕も同じです(笑)。そういうことも含めて、toeがやってきたことにシンパシーを感じているというか、当然、ポスト・ロックとか音響とかそういうシーンの流れも踏まえつつ、僕らが今年で結成12年目。toeは……」
美濃「今年で10年目ですね」
- ──スパングルもtoeも音楽活動を長らく続けながら、メンバーがバンド以外の仕事で生計を立てていますしね。
- 藤枝「そうやって同じような期間、それぞれに理想の形を追求してきたバンドですし、個人的に“最近のtoeはどういうことを考えてるんだろうな?”って、ずっと思ってたんですね。だったら、美濃さんにアルバムの共同プロデュースをお願いしてみようということで、知人づてでいきなりオファーさせてもらったっていう」
美濃「ありがとうございます(笑)」
- 作業中にいい曲だなって感じで聴いてて、気付いたら、作業が止まってました。(美濃)
- ──作業はどう進めていったんですか?
- 藤枝「前作の『VIEW』ってアルバムが作り込んだものだったので、今回は曲も録る直前に構成を決めて、集中した一発録り。直したいところもあえて直さなかった音源を美濃さんに送ったんですよ」
美濃「その時、僕はクラムボンのレコーディングをしてたので、小淵沢のスタジオまで録音したマルチ・トラック音源を送ってもらったんですね。そうしたら、藤枝くんの手紙が付いていて、ざっくりした方向性と“録りっぱなしなんで……”ってことが書いてあったんですけど、読み込んでしまうと、その言葉に縛られてしまうので、ぱっと閉じて(笑)、そこから先はギターを足したり、ミックスも勝手にやらせてもらいました」
- ──今回のように録った音源を渡されて、「あとはお願いします」っていうお仕事のスタイルはよくやられていることなんですか。
- 美濃「あんまりないですね」
藤枝「しかも、美濃さんには好きにやってもらいたかったので、きちんとこうして話すのは今回が初めてですしね。しかし、作業の進行上、しょうがなかったとはいえ、今回、美濃さんに録音を任せなかったのは、ひどい話ですよね(笑)」
美濃「いや全然(笑)。録り音も良かったですし、僕がやった作業はその音をどう汚くするかっていう作業でしたもん」
藤枝「そうやって美濃さんが仕上げてくれたものを聴いたら、あまりにばっちりだったから、僕らとしては一言の文句や注文もなかったですからね」
美濃「今回、作業してみて、藤枝くんと笹原くんはギタリストなのに、一歩引いた感じでプレイしてて、バンドとして曲が良ければ、いいんだろうなっていうところが伝わってきて、すごい楽しかったし、自分にとっても自然だったんですよ。作業中に“ああ、いい曲だなー”って感じで聴いてて、気付いたら、作業が止まってたっていうくらい(笑)」
藤枝「今年に入って、シングル「dreamer」とアルバム『VIEW』、そして今回のアルバムと出してきて、やっぱり、一番最新の作品は自分たちのスタンスが表れたものを残しておきたかったし、そういう意味で今回はとにかく趣味性が高い作品というか、好きにやった作品ですからね。美濃さんにそう言ってもらえて光栄ですよ(笑)」
- 音楽をまっとうに追求して、それを続けていくということ。(藤枝)
- ──今お話に出てきた音楽に対してのスタンスというのは?
- 藤枝「メジャー、インディーズに関係なく、音楽をまっとうに追求して、それ粛々と続けていくということ。まぁ、toeは僕らよりストイックに、自分の歩幅で歩いて、10年生き残ってきたわけですからね」
美濃「いや、僕らはユルいですよ(笑)。もし、toeだけを仕事としてやってたら、つまらなくなっちゃってたと思うんですけど、僕は別で音楽の仕事をしてるから、toeで食えなくてもいいというか、食い扶持とは関係なくtoeをやりたいから、別で仕事をしているだけ。メジャーでバンド一本でやってる人はスゴいなって思うんですけど、そこまでの勇気がない僕らには今の状態が自然な形だったというか」
藤枝「端から見てると、すごく理想的だなって思うんですけどね」
- ──―美濃さんの中で音楽と付き合っていく理想像って、どんなイメージがあります?
- 美濃「そこまで深く考えてないというか、すごくシンプルなんですけど、もう10年、20年、toeとして活動していけたらいいなっていうことですかね。そのためには無理しないとか、ホントに好きなことしかやらないとか。何年後かに聴いて、あちゃーって思いたくないっていうのもあるし。まぁ、その程度なんですけどね」
藤枝「あとは、この感覚で美濃さんがエンジニアとかプロデュースの仕事をもっともっとやったら音楽業界も面白くなるんじゃないかって。俺のなかで、美濃さんがやったら合いそうなバンド、結構いますもん」
美濃「マジっすか? 紹介してくださいよ(笑)。っていうのは冗談ですけど、また一緒にやりましょうね」
藤枝「こちらこそお願いしますよ。いつか対バンもお願いしたいところなんですけど、僕ら、ライヴ活動を休止してて、再開するのがいつになるか分からないからな。。。(笑)」