INTERVIEW

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ABS goes to Holy Mountain.

  • 2015.08.27

ヒップホップ、ジャズ、ラテン、アフロ、ブルースを
コラージュしてつくりあげた美術家による架空の民族音楽。
奇妙な味と呼ばれる小説の系譜に位置する音楽で書かれた短篇集。
日本語のグルーヴを突き詰める過程で脱構築されたフューチャーソウル。

どれもおそらく間違いじゃないんだろうけど
手垢にまみれた表現で説明しようとすればするほど
一番核となる部分がスルスルと手からこぼれ落ちてしまう。
それがAlfred Beach Sandalの音楽だと僕は思う。
今の時代は言葉で形容できない瞬間や感情にこそ黄金が宿る。

『Unknown Moments』を音響で定着させたエンジニアzAkをはじめ、
5lack、STUTSなどUnknownを共有する仲間達との共同作業を経てつくられた、
10篇のUnknown Momentについてビーサンこと北里彰久君に話を聞いてみました。
それではどうぞ。

abs01

— まずはタイトルの由来から。
アルバム用の曲が完全に揃ってから考え始めたけど、そんなにアルバムコンセプトとかはじめからは考えてなかったから。曲順を考えながらタイトルどうしようかなって。一曲目の名場面とかけっこう夕暮れっぽいイメージで作ったんだけど、アルバム全体でも夕闇というか逢魔が時みたいな夕方から夜にうつる瞬間、美しい感じもあるけどちょっとおばけでそうでグニャッて時空歪んでいる不気味なイメージがあって。それでFrom Dusk Till Dawn的なタイトルないかなってずっと考えてたんだけど。

— Duskみたいな具体的な言葉だと意味が強すぎるしね。
そう。それでもう少し抽象的にあらわせるワードで、Unknown Momentsにしました。ちなみに”霊的ヴィジョンの旅”っていうのも案あったけど、それはさすがにヤバすぎるからナシになった。

— それはやばいね。フリージャズっていうか、アルバートアイラーみたい。
ハハハ(笑)

— シングル曲にもなったHoneymoonが一番Unknown Momentsという言葉を象徴しているというか音楽的にも今回のアルバムのキーになっているよね。楽曲構造は普通なんだけど、シンセベースとサンプリング音源のようなドラムの音色が相まって聴いたことない奇妙な音像になっていて。音楽的にも様々な要素がマーブルに溶け合っててその感覚がまさにUnknownだなぁと。前作のレコ発(2014.1.9.DEAD MONTANO発売記念ライブ@渋谷WWW)で、もうHoneymoonは演奏されてたよね。シンセベースのアイデアは岩見さん(岩見継吾。Oncenth Trioなど)から?
そう、Zycosって岩見さんのバンドのアルバムにゲストで参加した時にシンセベース弾いてたから持ってるのは知ってたけど。曲作ってる段階でアイデア出てきたから、ああ確かに合うかもねって試して。ウッドベースで全部やってたらああいう不気味な感じは出なかった。

— 今作はエンジニアにzAkさんを迎えたというのは大きなトピックだと自分は思っていて。クラブミュージックとワールドミュージック、ポップスの音響を結びつけて日本に定着させた人だから。あとHoneymoonが特にそうだけど、このアルバムはリズムの構造的にカオスな状態がないのが一番の変化かなと個人的に思う。MOXA DELTA(北里が大学時代にはじめて組んだバンド。 https://myspace.com/moxadelta で数曲試聴可)の時からずっと個人が持つリズムの揺れであったり、Mountain Boys(『One Day Calypso』収録。現在廃盤)みたいに整数で割り切れない部分を残した曲がビーサンの音楽のうち重要な部分を占めていたと思うんだよね。zAkさんが録音したことで、整理されたということはあるのかな。
どうなんだろうね。そこはzAkさん関係ないかも。前と比べたら単純に演奏力がついたのもあるし、リズムが揺れてていいという感覚もだんだん飽きてきて(笑)、ってのは冗談だけど。そこをちゃんと突き詰めようとしたら突き詰められるんだろうけど、昔は下手だから揺れてただけだしさ。下手なりにでもグルーヴすることが重要って思ってただけで、揺れるのが美しいっていうのとはちょっと違う。バンドとしてやっていた時間が積み重なってきて演奏がタイトになってきた部分が大きいんじゃないかな。

— なるほど。
まあなんていうか、結局一番大事というか、ずっとやってるのはどう肉体的なリズムをつくるかって部分でさ。最初の頃はとにかく下手すぎてキープとかまじできないから、自分の身体のタイム感を、拍とか無視して無理矢理ループさせるっていうやり方で。

— 最初の弾き語りのCD-Rの時?(自主制作で今でもライブ会場で販売している、『Alfred Beach Sandal』)
そうそう。そんでまあ、バンド編成が固まってく過程で、アンサンブルとして成り立たすためには拍をあんまし無視もできんから、整数の、割り切れるような形も増えてきたわけ。で、結局思うのは、自分のボディー感っていうか身体のリズム感覚を音楽の中にどういうふうに反映させるかっていうのがキモで、スクエアか揺れてるかっていうような話じゃあんまないなっていう。歌のはめ方ひとつとってもグルーヴ左右するし。訛りとか揺らぎっていうのも結局自分の身体の感覚に根ざしたものじゃないとやりたくはないしさ。それ自体輸入しちゃったら流行り廃りみたいな感じになっちゃうし。

— じゃあそこはバンドメンバーでも共通認識としてあったんだ。
いや、それはわかんない。個人的にそうって感じ。とにかく形式とか枠組みありきで作ってるんじゃないってことかな。リズムが面白ければよし。

— zAkさんと録音してみてどうだった?
なんつうか、いい音楽を演奏するために今バンド3人にとって何が必要なのかということを気づかせてくれるというか。こう演奏しろとか指示することはないんだけど、「こうしてみたらええんちゃう?」みたいな言いかたで。例えばDynamo Cycleみたいにビートが強い曲をやろうとしたときに、ギターのカッティングのリズムが弱くてアンサンブルが成り立っていない部分があって。ライブで演奏するときは気づかなかったりすることで、録音してみて初めて気づく部分は多かった。ビートに対しての筋肉の使い方であったり、歌の乗せ方もそうだけど客観的な作業を経たから演奏面での変化はすごくあったかな。まぁ、一緒にやれてすげー楽しかったよ。

— 前作『DEAD MONTANO』は元々あった楽曲にベースとドラムが加わったという感じもあったけど、今回のアルバムはリズム隊のアレンジと曲が不可分というか、よりバンドありきの曲にシフトしているよね。変拍子という変拍子もないし、3人で共有してつくりあげた分、より開かれてた音楽になった印象はある。Cool Runningsとかアフロビートでわかりやすいダンスミュージックだし、以前のように弾き語りありきの曲ではないよね。アフロビートは光永さん(光永渉。チムニィ、ceroなど)が持ち込んだの?
そう。あれは最初はサンプリングのリズムの上にギターと歌をのせた状態でスタジオに持っていって、結局3人で演奏するからどういう感じでリズム組むかをベースのパターン変えたりいろんなドラムの叩き方で試してその過程で曲の構成とかも変わった。ベースもウッドじゃなくてエレベになったし。前だったらこういう曲できましたって構成もある程度固まった状態でメンバーにポンと投げてた感じだけど、今回特に、例えばイントロだけできた状態でスタジオに持っていて持ち帰っての繰り返しみたいな、そういうバンドみたいにちょっとずつ作っていくやり方多かったかも。

— アンサンブルもビルドアップされて、グルーヴを享受する気持ちよさは確実に上がった反面、今までビーサンひとりで作りあげてきた世界観であったりリズムの方が好きだったという人も中にはいると思うんだよね。そういった変化はどこまで自覚的にやっているのか気になって。
自覚的ではないけど飽き性ではあるかな。でも、変化した部分もあるけど、根っこのとこはやってること変わんないよ別に。

— そうか。
うん。ボーカルの乗せ方とか、歌とリズムの関係みたいな部分はずっとやってきてるわけだし。結局自分はボーカリストだからそこばっか考えてる気がするな。

abs02

●心に藤岡弘を。

— そういえばApple Music登録した?
してないなー。音源は大体レコ屋とかで買うだけだわ。YouTubeも見るっちゃ見るし、SoundCloudも聴くっちゃ聴くけど。YouTube楽しいけどね。ヒップホップとか音源よりかPV込みで見たいのもあるし。でもバンドの音源とかあんまりネットでは聴きたくないかな。

— 最近ミュージシャンのインタビュー読んでもみんな死ぬほど音楽詳しいよね。ビーサンがそういう巨大な情報量に対してどう対峙しているかを聞きたくて。
詳しい人多いかも。俺はもともとハードリスナーじゃないってか、めちゃくちゃCDとかレコード買うわけでもないからさ。たとえ失敗作を買っても、つまんないものはつまんないものとして聴き続けたいというか。

— Oasisの『Standing On The Shoulder Of Giants』とか。
そうそう。ジャケ買いしたレコードもハズレるし。

— レコーディングの時にハマっていたり、これはいいなと思ったものはある?ちょっと前はRufus Wainwrightの『Out of the Game』をめちゃくちゃ聴いてるって言ってたけど。
今もハマってるけど聴きだしたのレコーディング終わってからだから今回のアルバムは関係ないかなー。あー、堀口恭司ってわかる?

— わかんない。
UFCのファイターで山本KIDの弟子みたいな選手。日本人で空手ベースでいきなり4連勝してタイトルマッチに大抜擢されたんだけど、挑戦する相手は絶対王者みたいな圧倒的に強い人で。試合は4月終わりぐらいでレコーディングも4月半ばぐらいだったからインタビューとか読んでその試合はめちゃ楽しみにしてたかな。

— それは面白そうだね。
結局負けちゃったんだけどね。空手ベースだから他の総合格闘技の選手と比べて間合いの取り方とかタイミングがすごく独特で、UFCで日本人はあんま勝ててない分かなり期待を持てる選手、そういうのってロマンあるじゃん(笑)。空手の、東洋的なテンポ感とかリズムの感じ方があるんだろーかとかさ。うちのバンドメンバーもわりとこう、道を究める系、3人とも心に藤岡弘(初代仮面ライダー。抜刀道四段、他)みたいなものを飼っている。

— 最近のビーサンのライブ見ていて、演奏力が上がっているのもそうなんだけど、そんなに鍛えてどこにいくのっていう感じがあるよ。アルバムもzAkさんのエディットとかミックスで3人ともサイボーグみたいになってるし。
そーかも(笑)。録音しているときは気づかなかったけど最近自分でも聴き返してすごく思った。音楽は、何聴いてたかな。

— Mikikiで連載しているABSの黄金時代( http://mikiki.tokyo.jp/category/blog_abs )にはBeckとかCaetano Velosoとか書いてあったけど。
それは好きだからずっと聴いてるね。あとはRoland Kirkの『Volunteered Slavery』はめちゃくちゃ聴いた。超かっこよくてさ。あとはー、Sean Lennon『Into the Sun』とか、Creative Sourceの『Creative Source』とかかなー。BESの『REBUILD』とかも聴き返してたかな、アルバムと関係あるかと言われるとわかんないけどね。BESさんはめちゃくちゃラップうまくて、とにかくグルーヴがすごいんだよね。

— 自主企画(2015年8月4日Groove Comedy vol.2@渋谷WWW)でBudaMunkさん呼んだのもそうだけど普段からヒップホップよく聴いてるのにビーサン自身はラップにいこうとしないのは何で?
メロディーっつか、歌うほうが好きだから?まぁ自分の曲の作り方は基本ループミュージックだし、ループのなかで歌をどう乗せてグルーヴさせるかってことをいつも考えてるからヒップホップにピンとくるのかも。日本語ってビート感がすごい薄いから、歌ってか声をグルーヴさせるのけっこう大変だよなと思うんだけど。リズムに対して浮いちゃうっていうか。だからこの人は言葉どう乗せるのかな、とか、声の出し方とかタイミングのとりかたとか、そういうの日本語ラップ聴く時には気にしてるかも。

— これは完全に個人の印象論だけど、今回のアルバムは今まで比べて歌詞とかも削ぎ落とされて、感傷的なものとドライなものでばっさり二分されている気がするけど。
そう?ドライかな??

— 違うかな?
今までみたいに風景を描くみたいな歌詞は少なくなってるかもね。前は歌詞の書き方がカメラみたいな感じだったけど。でも全体的には今回は主観的な歌詞というか、もうちょっと俺が言っているみたいな内容になってると思うけど。Honeymoonにしても単語はSFチックだけど内容は個人的なことだから。もしドライと感じるとしたら歌い方もあるんじゃないかな。発声の仕方とか含めて今回は全体的に歌が柔かめだから、ぱっと聴きエモーショナルに感じないのかも。

— なるほど。それはどうしてなのかな?
うーん、ボーカリストとしての自分の変化。バンドとの関係だったり、zAkさんに導かれた部分も多分あって。

abs03

●はっとする風景が欲しくて。

— 前作リリースしてから沖縄、韓国といろんな場所をツアーで回ってたよね、曲づくりには何か影響あった?
Supper Clubとかは完全に沖縄の思い出。ナハウスっていうシェアハウスに泊まってずーっと酒飲んでてライブしてまた帰ってきて酒飲んでって感じで、楽しいんだけどぐちゃぐちゃになった記憶のイメージ。曲としてカタチになったときはSupper Club、金持ち向けのナイトクラブっていう風に歌詞は置きかわるんだけど。

— Cool Runningsも赤道直下で刹那的な暮らしといった歌詞だよね。
この曲自体はディレクターのタツ(felicity仲原達彦)のアイデア。アルバム作るには曲が揃ってない中で相談しながらやっていたから共同作業度はデカいね。アイデアも色々出してもらって。曲がなかなかできないなぁっていう時にお題を出されて”クールランニング(ジャマイカのボブスレーチームがオリンピックで奮闘する1993年のディズニー映画)観たら絶対曲が書けるから”って言われて。お気に入り映画らしくて。で、観ないで曲を作った(笑)。この歌詞は一見主観ないよね、ファイヤとか。でも気に入ってる。

— これもライブで演奏が難しそうだね。
これはそもそも音源とライブは別物ってタイプの曲だねー。てーか今回のアルバムは全般むずい。演奏中も気抜けないしスタジオ終わったらみんなで難しいってグッタリなる。でも…そうなっちゃった。

— 普通セッションで曲を作ると自分の手持ちの技術で済ませがちじゃん。誰にも頼まれてないのにわざわざ難易度高い方向にいくという。
…藤岡弘だから。

— ハハハ。
ってーか、冒険好きだから結果がわかってるほうに行きたくないんだよね。ジャングルのほうを選んじゃう。Unknownな方に。

— 一方、祭りの季節は演奏もソングライティングも『DEAD MONTANO』から地続きというか。曲的にもこれから何かが始まるワクワク感があるよね。
一番伝えたいことは最後の2行だね。

— 岩見さんも光永さんもリズム隊は2人ともブラックミュージックに造詣が深いし、ネオソウルとかヒップホップ的なかっこよさの方向にも簡単にいけるとは思うんだけど。
おもかげのドラムはHiatus Kaiyoteにインスピレーション受けたとみっちゃんは言ってたけどね。結局できあがり全然違うからあくまでもインスピレーションというか、一旦消化した上で、って感じなんだろーね。もちろんブラックミュージックは好きなんだけど、まぁやっぱ、それをどう生かすかみたいなほうが興味あるな。さっきも言ったけど自分の身体を通った上でどうなるかってのをやりたいというか。

— ラップも自分ではなくて5lackさんに頼んでるしね。
Fugue Stateは、ラップ入る曲をアルバムにいれようっていう話してて、ラッパーもフィーチャリング頼もうと。ちなみにこの曲、人に言われて気づいたんだけどHerbie HancockのMaiden Voyageとコード進行一緒なんだよね。

— 3人で修行した結果、徳を積んでレジェンドに近づいたと(笑)。
そうそう(笑)。いや、聴いたことなかったからパクったわけじゃないんだけど。Fugue Stateって言葉は、トンズラ状態、遁走状態っていう意味で、でもそれは現実逃避ではなくてゴーストタウンを進んでく感じというか。現実世界とうまく折り合いつけられない人が、ただ逃げるんではなく違和感抱えながらストラグルしていくっていう感じ。そういう細かいことまでは5lackくんには伝えてなかったんだけど、送られてきたリリックはまさにそれで。最初に入れてた俺の歌とか聴いて、バッチリ汲んでくれたなって感じで嬉しかった。最初タツにFugue Stateのデモを送ったときに返信で5lackの新しいアルバム(『夢から覚め。』2015年3月に発売)も送られてきて、それで聴いてみたら何となくタツが示唆するとこ分かって。ピンと来て、いけるんじゃないかなと思って、一緒にやりませんか?とお願いして。5lack、もともと前からアルバム持ってて聴いてたんだけど、その時から思ってたのは、もちろん彼はヒップホップやってるんだけど、もっと視野広い人っていうか、もっと広く音楽をやりたい人なんだろーなっていうのは感じてたから。まぁ、頼んでよかった。

— 5lackさんとの曲作りはどうやってやったの?
データのやりとりで。福岡住んでるし。音源と歌っている部分の歌詞は送って特にテーマとか指示はしてないけど、返ってきたリリックもラップもめちゃよくて、最高~って(笑)

— STUTSくんであったり5lackさんであったり外部の人とのコラボレーションも今回の新しい試みだよね。STUTSくんはシングル収録曲も含めると3曲参加しているけど、曲作りはどうやって進めていったの?
シングル(Honeymoon)に入っているSoulfoodはSTUTSの家にいって 2人でループ組むところから始めて。サンプリングのネタ探してギターいれて。Town Meetingも同じ感じでその場でできたやつ。データのやりとりを重ねて必要であれば会って2人で作業して作るって感じだったかな。

— インタールードがアルバムの終わりに来るのも面白いなと思ったんだけど。
次にくるHoneymoonは重いし、最後の大冒険に向けての助走って感じでいいかなって。それにインタールードを真ん中に持ってくるとDr.スランプの夜と朝の切り替わりみたいに時間の流れがはっきりしすぎちゃうから。曲はファンキーおばけの町内会的なイメージ。

— STUTSくんとの出会いは?
これもタツ経由。大学の後輩が変なことやってるぞとRojio(仲原、映像ディレクターの代田栄介、筆者である新間の3人でやっているネットラジオ)に出たときにNYのハーレムでの演奏動画( https://www.youtube.com/watch?v=SzX6ZEZxe3E )を教えてもらって。そのあとBooked!(2014.3.8@新木場STUDIO COAST)で紹介してもらったらめちゃくちゃ面白い奴で、トラックもかっこいいし一緒にやれたらなと思ってたから、楽しかったね。

— で、満を持してHoneymoonが来ると。
歌詞もそうだしメロディもアレンジも雰囲気的なものも含め自分はすごく気に入ってるけど、これをシングルで出すの?ってやっぱり周りに言われたし。でもあんまいないっしょこんな音楽やってる人。

— Unknown Musicだよね。はじめはギターで作ってスタジオに持っていったの?
うん、その時点で歌詞のテーマもだいたい固まってた。曲の最後はオルタナっぽいギターの轟音で熱量が上がっていく感じを出したいってイメージがはじめにあって。歌詞は旅行に出かけたときオフシーズンの平日だったから人が街に全然いなくて、ぶらぶらしてると逃避行している気分になって。そこからイメージを膨らませた。

abs4
— 曲作りする時毎回遠出してない?
わりと。何か楽しいことないかなってところから曲作りはじめたりしない?おれ作詞は完全にイメージ系なんだよね、フレーズのストックは常にしてるけど、それ膨らませるためにははっとするような風景が欲しくて。それがないとうまくいかないからあちこち出かけてる、たいていは空振るんだけど。

abs5
— Fugue Stateとこの曲は特にそういう、寂しい放浪的な感じが歌詞に。出てるね。
タイトルの話で時空歪む感じのイメージって言ったけど、アルバム通しての気分みたいのはFugueでのゴーストタウンとか、そういう崩れてくものの中でストラグルしてるみたいなのが自分のムードだったんだなってのは思うね。

abs6
— それは日々生活しててそういう鬱憤みたいのがあったからなのかな?
んー、まぁそうなんだろーね。時空グニャッとするっていうのも世の中の見方は一個じゃなくてちょっと他の角度からみたら全然違くなるってことで、そういうのちゃんと認めてほしいっていうか。とにかく、自由でいさせてよっていう、最近そういうのは思うこと多いなあ。

— じゃ、最後の曲。Swallowは?
レコーディングは1週間ぐらいスタジオ押さえてて、その真ん中の日が急に休みになったんだよね。それで、その空き日でいっきに作ったのがこれ。アルバム的には名場面で幕が開いて、不気味な旅して、これがきて収まるっていうか。

— 確かに。
アルバムトータルで見たら歪んでるの多いから(笑)。ちょっと軽めの曲というか、アコースティックの曲もあった方がいいなと思ってつくった。なんか、レコーディングの直前にちょうどタツが韓国に行ってて、んでその時にWedanceのWevoが俺宛に手紙ってか短いメッセージを書いてくれたのをタツが託されてて、それでレコーディングの初日に渡されたんだよね。その手紙が、日本語で書いてくれてたんだけど、詩的ですごくいい文章で。そこから少し引用して歌詞に一部使ってる。そういう、旅の思い出とかもありつつ。異世界っぽい感じのまま突き進んでもよかったけど、最後は現実に着地できてよかったなと。

— 今回は共同作業が裏テーマというか、いろんな人が関わって一つの作品をつくりあげたことが、アルバム全体の風通しのよさにもつながっていると思うけどどう?
ほんとそうだね。三太くん(高橋三太。トランペット。1983、王舟など)も、フルートの若菜ちゃん(池田若菜。吉田ヨウヘイgroupなど)も、えんちゃんも(遠藤里美。サックス。biobiopatata、片想いなど)。一緒に出来てよかったなと思うし。

— ゲストの人たちとのエピソードはある?
三太くんはトランペットいいのもちろんわかってたし、なにより家が小竹向原のスタジオに近かったから、呼んで。なんかけっこうムチャなオーダーしてたっていうか、”ローランドカークが何個も楽器いっぺんに吹くみたいな感じで、あと酔いどれ親父みたいな感じで、とにかくテキトーに吹いて”って頼んでたわ。

— (笑)すごいね
でもそのテキト~~な感じすごいよくてさ。三太くんは”こんなんでいいんですか…?”とか言ってたけど、そんなんがめちゃくちゃよかった。あとスタジオで置いてあった軽食用のパンにめちゃくちゃ感動してて、”むちゃくちゃうまくないですかコレ…!”とかいってバクバク食ってた。

— 若菜ちゃんは?
吉田ヨウヘイgroupと対バンした時に、フルートの人すごい上手だなってのは印象残ってて。そんで若菜ちゃんツイッターで江古田のご飯屋紹介したりしてるし、多分これもスタジオ近くに住んでるだろうと。でも実際は全然家遠かった。江古田で働いてるってだけで。

— 家の近さ基準にしすぎでしょ!
(笑)もちろん一緒にやりたいかどうかありきだけどさ。若菜ちゃんはもう、なんか大丈夫だって感じで素晴らしかったですね。あとなんかパジャマみたいなズボンをはいていた。

— なるほど。えんちゃんはもう、今まで何度も参加してるしね。
そうね。えんちゃんは意思疎通早いというか安心してる部分あるね。ありがたや。あ、あと若菜ちゃんとえんちゃんはCool Runningsでコーラスやってもらったの地味にデカかったかも。最後のかけ声のとこ。最初男だけでやってたらマジで部活っていうか、空手バカ一代の世界観だったけど、二人がチアリーダー的なの入れてくれて華がでてよかったっす。

— あと、Honeymoon、Fugue Stateの7インチ、アルバムにアー写にグッズと最近のアートワークはすべて沖縄出身の我喜屋位瑳務さんが手がけているよね。まさしくビーサンというアートワークのイメージで。
これまたタツの紹介で知り合って。まあ何やってもらっても大体最高で、むちゃ面白い人だよ。アー写最初に送られてきた案けっこうマジで狂ってて、マッチョとのコラージュみたいなのされてて、足下には土佐犬(註.パグの勘違い)がいてアー写としてはむちゃくちゃすぎて全く機能しないやつで(笑)。でも鍛え上げられたというニュアンスは完全に伝わってた。なんかとにかく、こっちのやってること言わんとすることをイメージでバッチリあらわしてくれるし、さらに意外性っていうか斜めからくる感じもあってそれがすげー良い。内ジャケの絵もまたいいんだよ。

— これはまさしくUnknown Momentismを体現しているね。こうして自分とハモれる人を見つけられるのは本当に貴重というか幸運というか。
ハモれる出会いはほんとありがとうって思うね。あーよかった、一人じゃなかったわっていう。

— 一人で作るのと、みんなでモノづくりするのはどっちが好き?
両方必要だなと思う。俺は一人から出発しないと曲できないし。でもそれを他人によって可能性広げられてく感じはやっぱすごい快感あるね。あとは、共同作業で締切ある状況に置かれて追い込まれるとおれはサンドバッグ叩いてる系になるというのはとりあえずわかった(笑)。felicityに入って面白げな予感のもとでこうやって音楽やれてるのは楽しいなと思います。そう、年始の占いでさ。

— え、占い?
有名な人、たぶん石井ゆかり(星占いサイト”筋トレ”主宰)。一年通した占いで"今まであなたは他人のことを信用できずに一人でやってきたけど、誰かと共同作業することになります。それによりあなたはすごく得るものがあり、人としても開かれるでしょう。運勢も最高"って書いてあって。でもアルバム作るまでにめちゃくちゃトラブってるから(発売延期等)これで運勢最高なんだったら普通だったら死んでる(笑)。まあなんやかんやいろいろUnknownな感じで。インタビューの最後で占いでスピって終わっちゃうけど。

— ビーサンの最終目標は音楽でスピることだからね。
(爆笑)つうかもともと性質的に俺はスピり体質だから。最後どう転ぶかはわからないけど。でもまあ、このアルバム作れてよかったよ。

abs9

interview 新間功人
photo 寺沢美遊

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  • 2015.08.26 On Sale
  • PECF-1124 / felicity cap-232
    [CD] ¥2640

<TRACK LIST>

  • 名場面
  • Supper Club
  • Cool Rununings
  • Dynamo Cycle
  • 祭りの季節
  • おもかげ
  • Fugue State (feat. 5lack)
  • Town Meeting (prod. by STUTS)
  • Honeymoon
  • Swallow
 -
Honeymoon
  • 2015.04.22 On Sale
  • PECF-1121 / felicity cap-224
    [CD] ¥1320

<TRACK LIST>

  • Honeymoon
  • Dynamo Cycle
  • Soulfood feat. STUTS
  • 人魚
MUSIC


PROFILE
Alfred Beach Sandal / 北里彰久アルフレッド・ビーチ・サンダル
ABS goes to Holy Mountain.

2009年よりフリーフォームなソロユニットAlfred Beach Sandalとして活動開始。3枚ほどアルバムを作る。ロックからMPB、ブラックミュージックまでを三次元的にイビツに迷走していく手腕には一定の評価をいただく。「DJ的発想で曲を作っている」と言われ、いい気になって「そうですね」と答えたことがある。
最近はよりひとりぼっち方面の活動が増え、歌にフォーカスしていく傾向がみられる。ギターもちょっと弾ける。

https://akihisa-kitazato.com/

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  • PECF-1124 / felicity cap-232
    [CD] ¥2640

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  • 名場面
  • Supper Club
  • Cool Rununings
  • Dynamo Cycle
  • 祭りの季節
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  • Fugue State (feat. 5lack)
  • Town Meeting (prod. by STUTS)
  • Honeymoon
  • Swallow
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Honeymoon
  • 2015.04.22 On Sale
  • PECF-1121 / felicity cap-224
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