INTERVIEW

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Spangle call Lilli line "ghost is dead" 発売記念対談 藤枝憲 (Spangle call Lilli line) × 川辺素 (ミツメ)

  • 2015.11.18

Spangle call Lilli line "ghost is dead" 発売記念対談
藤枝憲 (Spangle call Lilli line) × 川辺素 (ミツメ)

Interview&Text : 村尾泰郎


5年振りの新作『ghost is dead』をリリースしたSpangle call Lilli line。アルバムに耳を澄ませば、研ぎ澄まされたミニマルなバンド・アンサンブルと繊細なメロディーの彼方に、スパングルらしい美しくデザインされたサウンドスケープが広がっている。そんななか、本作のトピックのひとつが、インディ・ポップ・シーン新世代の旗手、ミツメの川辺素がゲスト・ヴォーカルに迎えられていることだ。両者の出会いはスパングル・サウンドにどんなマジックをもたらしたのか。そこで今回、新作リリースを記念して、スパングルの藤枝憲と川辺の初めての対談が実現。そこから浮かび上がってくるのは、〈5年〉と〈週3〉という正反対のバンドの姿だった。。

――――5年振りの新作ですね。気がついたら…って感じですか?
藤枝 これまで機会はあったんですけど、やらなくていいんなら、やらない方向に行っちゃうんですよね。間が空けば空くほど、まあ、いいかってなっちゃう。でも、そうやって何週か回っているうちに、自分のなかに残るものが限られてくる。〈こういうモードがやりたい〉っていう細かいことではなく、〈自分はこういう音楽が好きなんだ〉みたいなことが見えてくる。
――――時間が経つ間に無駄なものが削ぎ落されて、やりたいことが浮かび上がってくる。
藤枝 そうですね。そういうやりたいものが、このタイミングで(他のメンバーと)噛み合ったっていう感じ。これまではちょっとズレてて、誰かが引っ張ってそれに合わせていくっていう感じだったんですけど、今回はわりとうまく重なった。最近の音楽を聴いていると情報量がすごい多い感じがするんですよね。そういうのと逆がいいかなっていうか、なるべく空間があるもの、ミニマルに削ぎ落としていくものがいいなと。アルバムのスタート地点はそういう感じでしたね。
――――そこで川辺君をヴォーカル・ゲストに迎えようと思ったのはどうしてだったんですか?
藤枝 毎回、その時々に興味がある人とやりたいと思っていて。でも、あまりジャンルが近過ぎる人じゃなくて微妙に距離がある人の方が良い。「dreamer」の時は相対性理論の永井(聖一)君とやってみたりとか。ミツメは2、3年前に知ったんですけど、すごい不思議なバンドだと思って。メンバーも異常に仲良さそうだし(笑)。でも、一番すごいと思ったのがYouTubeで観た「Blue Hawaii Session」ですね。あの雰囲気はパクりたいと思った(笑)。あのセッションって結構ミニマルじゃないですか。クールですごい削ぎ落とされてるというか。今回のアルバムに雰囲気が近いんですよね。自分達と共通言語があるかどうかわからないけど、彼らのセンスというか匂いはすごい好きだなと思って。それでお願いしてみたんです。
――――川辺君は話を貰ってどう思いました?
川辺 スパングルは大学の時から知ってたんで〈僕で大丈夫なのかな?〉って思いつつ、やらせてもらえるんならやってみようとかなって。
――――「feel uneasy」を歌ってみた感想は?
川辺 いやあ、めちゃくちゃ難しくて。メロディーにあわせようと思うと「あれ? これってどうやって出すんだ?」みたいな。すごい複雑にクッてなってるようなところを、自分だと真っ直ぐでしか歌えないなみたいな、そういう難しさがいたるところにあるんです。だから結構、練習して行きましたね。
藤枝 キーがかなり高い部分があるんで100%歌えなくても仕方ないと思ってたんです。この部分は川辺君が歌って、この部分は大坪さん(スパングルのヴォーカル、大坪加奈)が歌って、みたいなデュエットでもいいなって。でも、彼はファルセットを上手く使っていきなり全部歌ったんですよ。びっくりして、スタジオのモニターブースでエンジニアと目が合った。「おー、全部歌えたぞ!」って。あれ、最初から全部歌おうと思ってたの?
川辺 あまり情報がなかったから、これは全部歌うんだろうなと。
――――事前に曲に関してやりとりはなかったんですか? 打ち合わせとか。
藤枝 普通はするよね(笑)。曲を渡した時に何か言われるかと思ったんですけど、何事もないまま当日になって。川辺君、カッコ良かったですよ、すーっとスタジオに入って、「何テイクかやってみますね」って言って、するっと歌った。しかも高音のファルセット部分が意外と良かったんですよ。それは予想してなかったんですけど。それで結果として、川辺君の歌から始まって大坪さんに、イメージとしてはクロスフェードで替わってるんですよ。真ん中の二人の声が混ざってる中性的な部分を超えると大坪さんになっていく、みたいな。そんなデュエットなかなかないと思うんですけど、そういうことができたのが嬉しい誤算というか、これは新しいな、と思いましたね。
――――歌を聴いて川辺君だと気付かないくらいハマってますね。
川辺 それ言われました。「川辺君だったんだ」って。
――――自分で聴いてみてどうでした?
川辺 なんかクールだなって(笑)。英語の部分がちょっとだけあるんですけど、そことかもミツメではやらないクールさで。後で「全編英語の曲とか歌ったら良いのにって」言われて、それ良いかもって思いました。
藤枝 ミツメでやってない感じの方が良いと思ったんですよね。川辺君、会って話すと素朴な感じなんですけど、声の美味しいところだけ抜き出すとかなりのイケメン・ヴォイスなんですよ(笑)。だから、女性とデュエットすると良い感じで、僕が思う川辺ヴォイスの美味しいところを頂いて、ちゃんとスパングルらしさも感じられる曲になったと思います。
――――確かにそうですね。ちなみに川辺君から見てスパングルというバンドの魅力はどんなところ?
川辺 確実にスパングルというフィルターみたいなものがあるなあと思っていて。例えばカメラにスパングルのフィルターを入れると、もうスパングルの世界になっているというか。映像も浮かぶような世界が構築されている感じがあって、そういうのって、いろんなタイプの曲とか作っててチャレンジしていると難しいことだと思うんですよね。ミツメはユニークなバンドでいたいなと思ってるんですけど、確実にスパングルはユニークな存在だなと思います。
fujieda_kawabe_2
藤枝 ミツメも充分ユニークだと思うよ。曲って誰が作ってるの?
川辺 僕がもとを作って行って、それを4人で形がないぐらいにバラバラにしてアレンジするんですよ。そうやってるうちに「あ、これだな」みたいな良い感じの落としどころが見つかる。それと平行して、最近聴いてる曲とかをみんなで共有したりして。
藤枝 みんな仲良しなんですか?
川辺 そうですね、週4とか週3とかで会ってます。
藤枝 マジっすか!? 気持ち悪い(笑)。
川辺 今週は3日(笑)。
藤枝 スゴいねえ。
――――スパングルはどれくらいの頻度で?
藤枝 会わなくて良ければ5年に一度(笑)。レコーディング終わっても「お茶しようぜ」とか全然なくて、みんな早く帰りたがってる。レコーディングにしても全員揃わなくて、自分の関わっているところだけ顔を出す。ミツメのレコーディングのやりかたを聞いて驚いたんですよ。川辺君のヴォーカルを入れる時にメンバーがそれぞれ意見言うんでしょ?
川辺 ブースで残り3人が見てて、「どうだった?」って聞くと「今のちょっとアレじゃない?」って思ったコメントをみんなが(笑)。
藤枝 僕だったら絶対へこむよ(笑)。僕が歌ったんだからジャッジは僕にまかせてくれって。自分のパートをレコーディングしている時に、他のメンバーがその細かいニュアンスまで言ってくる環境ってスゴいよね。でも、週3で会ってたらそれは言うよね(笑)。
――――バンドというより身内っぽいですね。
藤枝 そうだよね~。うちは倦怠期が長い夫婦というか(笑)。離婚はしないけど寝室は分けてくれみたいな。
――――バンドを結成した時からそんな距離感なんですか?
藤枝 最初の時はもっと密でした。でも、その結果、メンバーが一人抜けて。僕らは細かいところをあんまりごちゃごちゃ言っちゃうとよくないというか。だから、それぞれ自分のスパングルとしての役割を果たせば、あとはお任せしますっていう感じなんです。仮にミックス時に自分がやったことの10分の1しか使われなくても、結果的に出来上がったものがスパングルの音になっていればOKという判断なので。ミツメっていま何年目?
川辺 6年くらいですね。
藤枝 週3で6年続いてるんだ! ウチは3年くらいでメンバーが1人抜けて、このままじゃダメだって思った。川辺君の歌入れの時も僕一人だったんです。普通はメンバー3人揃って「お願いします」みたいなのがあるよね。それこそボーカルの大坪さんもいないんだから(笑)。
川辺 でも、大坪さんがいたらもっと緊張したかもしれないですね。ヴォーカルの方がいるとプレッシャーがハンパないんで。
藤枝 そうか。じゃあ、結果オーライってことで。
――――では最後に、今回アルバムに参加した感想を。
川辺 すごい新鮮でした。スパングルのレコーディングは、ゴールがはっきり見えているところに向かって進んで行く。僕らは一度録ってから、ああじゃない、こうじゃない、みたいなのがスゴいあるんです。今回、スパングルの世界観というのが確固としてあるんだなって実感しました。
――――週3で会わなくてもバンドの世界観が持続できるんだと(笑)。
藤枝 週3は衝撃だよ!そういえば、この前、リキッドルームでレコ発のライヴをやった時、ぎりぎりまでアルバムを作ってて、全体では3回くらいしかリハができなかったんです。5年振りのライヴなのに。そういうところはダメですね、週3で会っていないと。週3で会わないとできないグルーヴがあるんですよ。そういう状態だったから、ライヴのゲストに川辺君を呼べなかったけど、5年後くらいにもしライヴをやる時はぜひ。ミツメも長く続いて欲しいなと思うし。ずっと週3で(笑)。
川辺 週5になってたりして(笑)。


Spangle call Lilli line「feel uneasy」feat. moto kawabe from mitsume



< ミツメ PROFILE >
2009年、東京にて結成。4人組のバンド。オーソドックスなバンド編成ながら、各々が担当のパートにとらわれずに自由な楽曲を発表し続けている。そのときの気分でいろいろなことにチャレンジしています。 http://mitsumenews.blogspot.jp/


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  • 2015.11.11 On Sale
  • PECF-1128 / felicity cap-241
    [CD] ¥2970

<TRACK LIST>

  • azure
  • echoes of S
  • ghost in a closet
  • escort & landing
  • feel uneasy
  • dawn draw near
  • iris
  • evoke
  • anthology of time
  • constellation
  • sogna
VIDEO


PROFILE
Spangle call Lilli lineスパングル・コール・リリ・ライン
Spangle call Lilli line

1998年結成。メンバーは大坪加奈、藤枝憲、笹原清明の3人。
今までに10枚のアルバム、2枚のシングル、3枚のライブアルバムと、ベストアルバム2枚をリリース。数々のコンピレーションアルバムなどにも参加。ボーカル大坪加奈による「NINI TOUNUMA」名義のソロや、藤枝&笹原による「点と線」名義でのリリース、国内外のアーティストの作品への参加など、サイドプロジェクト等も精力的に活動。

http://lilliline.com/
http://www.myspace.com/spanglecalllilliline

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  • PECF-1128 / felicity cap-241
    [CD] ¥2970

<TRACK LIST>

  • azure
  • echoes of S
  • ghost in a closet
  • escort & landing
  • feel uneasy
  • dawn draw near
  • iris
  • evoke
  • anthology of time
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