INTERVIEW

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おとぎ話『眺め』スペシャル座談会(前編)

  • 2018.06.06

おとぎ話"眺め"座談会(前編)

聞き手/おとぎ話1号
写真/タイコウクニヨシ

「常にメチャクチャ力が入っているバンドなんだけど、それゆえの“脱力”を今回は考えた」
おとぎ話『眺め』スペシャル座談会(前編)
felicityに移籍後、『CULTURE CLUB』(2015年)、『ISLAY』(2016年)と傑作アルバムを放ってきたおとぎ話が、新境地を切り開いた待望のニューアルバム『眺め』がいよいよリリース!
今回も、恒例となったおとぎ話メンバー全員によるスペシャル座談会を開催! 制作の裏話、そしてアルバム全曲を徹底解説!

■牛尾「たぶん“ムード”じゃないですかね。いいアルバムっていうのは“ムード”があるんです」

― 前作『ISLAY』から、おとぎ話としては約1年8か月のニューアルバム『眺め』がリリースされます。今回は、どんなかたちでアルバム制作がスタートしたんでしょう。
有馬 まず、去年1年は『ISLAY』のツアーから始まって、10周年を銘打ったツアーがあり、会場限定のベスト盤(『10 YEARS CARAT』)もつくったりして、「バンドとして、一つの季節を終える1年」みたいな意味合いがあった年だったんですね。



― まさに区切りの1年というか。
有馬 個人的にはそこを一回終えたことで、「そもそも、おとぎ話って何をやりたかったっけ?」みたいなことはアルバムをつくる間に考えてはいましたね。
牛尾 felicityで出した過去2作のアルバムは、先行7インチがあったり、最初から指針やコンセプトがあったんですけど。今作はツアーをやりながら、スタジオに入る感じだったんで。アルバムに着手しつつも、ゴール地点は見えてない感じで作り始めて。
有馬 アルバムをつくるっていう目標はあったけど、「いまつくりたいモノをただただつくっていた」って感じかな。
牛尾 基本的に有馬の作ってきた曲の骨格があって、それをアレンジしていくんですけど、今回は有馬が曲作りの過程をわりとメンバーに委ねていた感じはあったかな? 逆に言えば、1曲作るまで時間はかかったけど、いままでと違う感じでやろうとしてたのかなって。
前越 そうだね。ただ、曲を作りながらも「……なんかヘンな曲ばっかだな?」みたいな(笑)。
一同 ハハハハ!
前越 「ヘンな曲だけど、聴きやすくしようぜ!」みたいな感じで徐々に進めていったよね。
有馬 これまでは僕が主導権を握ってコンセプトをつくっていく感じだったけど。今回は「みんなが何がやりたいのか?」を全部総合しつつ、曲を仕上げる前に「本当にコレでいいのかな?」って議論したうえで、最終的に僕が微調整していくみたいな感じだったね。

― そこと繋がるかわからないですけど、前作のインタビューの時に「やっと音楽の作り方がわかった」(https://1fct.net/interview/interview064)という発言があったじゃないですか。
一同 ああ~~!
前越 あった! そこは引き続き活かされてるね(笑)。

― 前作と比べても、さらにアルバムに統一感が出てますし。スーッと聴けるというか。
有馬 組曲感があるというか。
牛尾 それは、たぶん“ムード”じゃないですかね。いいアルバムっていうのはムードがあるんです。……ヌードじゃないですよ(ニヤリ)。
一同 ハハハハ!

■前越「今回、練習の時点から、メンバー同士がこっぴどく言い合って。全員が全員に厳しかったよね」

有馬 あと、今回は「なるべく押しつけがましくないように」とは考えたかもしれない。最近、SNSとか見てても、みんなが“良いこと”や“まっとうなこと”を言いがちじゃないですか? でも、僕たちはそうじゃなくていいかなと。そこは歌詞でも曲をつくるうえで思ったかな。

― なるほど。
有馬 あとは「何が自分たちのストロングポイントなのか?」と。プロレスで言えば、いくつか技を持ってるんだけど、その技を自由に組み立てて、ようやく自分たちらしい試合ができるようになってきたというか。

― 手数は減っているんだけど、ドラマチック度は確実にあがっている感じですよね。
前越 ハイ。今回は、“そこ”に凄くこだわってますね。
牛尾 音数も減ってるし、曲の構成もいままでと違うしね。これまでは「Aメロ⇒Bメロ⇒サビ」みたいな感じだったけど。今回は、ループミュージックが多くて、ひとつのコードや一定のリズムが繰り返される上に唄が乗っかる。いままでのおとぎ話には、こういう曲はあまりなかったし、ギターもかつてないほど弾いていない曲がいっぱいあるし。

― ギターは目立って手数が少ないですね。それでも印象としてはギターが強く残るというか。
牛尾 あっ! それは録ったあとに気づきました。
有馬 牛尾はけっこう弾こうとしてたから、僕は「もっと抑えてくれ」と言ったんですよ。「そんなに弾かなくても大丈夫だよ」と。
牛尾 録音したあとに聴くと、たしかに弾いていないぶん逆に際立つというか。でも、曲を作っているときは不安でしたね。個人的には、「キタ――!」みたいな感覚がなかったので……。
有馬 いままでの8枚が、「キタ――!」の連続だったから(苦笑)。
風間 自分の場合は、今回のアルバムはストイックな感じ。さっき牛尾が言ったループミュージック的な曲調に合わせるために、けっこう必死でしたね。
有馬 ああ、風間くんは過去最高に活躍しているアルバムかもしれない。単純にやることが多いし、簡単なことは一個もやっていないしね。

― 風間くんの手数は増えていると。たしかに、ベースを弾きたくなるような曲が多いですし。
風間 おこがましいけど、そういう気持ちは自分もありますね。「コレを聴いて、ベースを弾いてほしいな」と。でも、弾いてる時は本当に無心で、集中度もいままでと全然違うから。
前越 今回、それぞれが相当ストイックになってますから。曲がシンプルなぶん、少しのアラも目立ちやすいし。練習の時点から、おたがいがこっぴどく厳しく言い合って。全員が全員に厳しかったよね。



■牛尾「『脱力したからラク』になるわけじゃなく、『脱力すると逆にキツい』んですよね」

― ただ、聴いた印象ではそういう裏事情は関係なく、フワッと軽やかに耳に入ってきますね。
前越 それこそが厳しくした成果、でしょうね(笑)。
有馬 そこまで厳しくやらないと、本当にやわらかい感じでは入ってこないと思うんですよ。おとぎ話は、大学の友だちからスタートしたし、最初は周りにユルい人たちも多かったから、逆に厳しくやってきた。それに見合った曲も書いてきたし。すっごいツバ飛んでるような曲が多かったじゃないですか? でも、そこを徹底的にやったおかげで、今回みたいに力を抜いたアルバムができたんじゃないかなと。

― 以前は、『AURORA』(『CULTURE CLUB』収録)で、「命果てるまで全力投球!」みたいな。今回は、そういうわかりやすく力の入った曲はないですね。
前越 あ、そういうのは禁止ですね(笑)。
有馬 ベスト盤をこの前、友だちの家で改めて聴いて思ったんだけど、本当にそういうバンドなんですよ! 常にメチャクチャ力が入っているバンドなんだけど、それゆえの“脱力”を今回は考えたかな。

― 今作のキーワードは“脱力”ですか。
有馬 でも、結果としていい感じになったなと。今回のアルバムの曲ってともすると、いままでみたいに力を入れて演奏しがちなんですけど、そうなるとムードが合わないんですよ。逆にいえば、いままでの曲も今回のような軽やかなムードで演奏できたら、もっとお客さんも踊れるのかなって。
牛尾 「脱力したからラク」になるわけじゃなく、「脱力すると逆にキツい」んですよね。あの~、バンドを長く続けていると、“壁”になることってあるじゃないですか。人間関係とかおカネとか女とか……、俺らにはないけど(笑)。
一同 ハハハハ!
牛尾 でも、今回の“脱力”はけっこう大きな壁で。それは何の壁かというと“演奏能力の壁”なんですよ。おとぎ話はべつに“うまさ”を求めてたわけじゃないけど、自分たちが求めてる音や演奏を突き詰めたら、「うまくないと出来ない」ことに気づいてしまって。

― いつのまにか、そういう地点に来てしまったと。
牛尾 そう考えたら、昔のソウルのバックバンドのミュージシャンとか、「あんだけ楽しそうに演奏できるのは、逆にどれだけ技術的に凄かったんだろう」とか思っちゃいますよね。

■有馬「今回、記号性はホントにないですね。アルバムのタイトルをつけるときもキーワードがなさすぎて、『どうしよう』と」

― このアルバムは本当に記号性が少ないというか。前回のアルバムでは、blurやサザン・オールスターズだったり……キーワードがいろいろあったんですけど。
有馬 今回、記号性はホントにないですね。アルバムのタイトルをつけるときもキーワードがなさすぎて、「どうしよう」と思って。そこで頭に浮かんだのが『眺め』だった。「もう、そうとしか言えないな」と思って。
牛尾 『眺め』って、いつ頃出たんだっけ?
前越 スタジオ録音の終わり頃だよね。有馬から「『眺め』にしようと思うんだけど……」と言われて、もう即決でした(笑)。「それ、メチャクチャいいじゃん!」って。
有馬 アルバムとして、いままでの中で一番押し付けがましくないから、みんなが勝手に捉えてくれればいいなって。

― 人物画とかよりも、風景画っていう印象がありますよね。
牛尾 もはや、「自分がいない」感じですよ。いい意味で愛着がないっていうか……。いや愛着はあるんですけど(笑)。

― ただ、模索しながら作って来て、タイトルが決まり、ジャケットも出来たことで腑に落ちた感じはありました?
有馬 もうドンドン腑に落ちていく感じですね。いま、こうしてメンバーの話を聞きながらも「たしかに!」と思うし。逆に一人でインタビューを受けていると、支離滅裂になってしまうというか……。『LOST PLANET』の歌詞にもあるんだけど、「わからない」って感じになっちゃって(苦笑)。

■有馬「『すべての人がドキッとする言葉ってなんだろう?』と思ったときに、『毎日働いて』という歌詞ができて」

1:『HOMEWORK』

― では、恒例のアルバム全曲コメントをお願いいたします。まずは、1曲目は『HOMEWORK』。
牛尾 自分はこの曲が“一押し”でしたね。シングル切るなら絶対コレがいいなって。
前越 曲を全部録り終えたあと、「1曲目どれがいい?」って話になったとき、ボクも「絶対、『HOMEWORK』がいい」と言いましたね。
有馬 僕は「これは1曲目か、最後になるのかな?」と思ってたかな。だから、イントロも含めて、「一番ハッと心を掴むようなアレンジにしよう」と思ってたし。

― ただ、おとぎ話のアルバムの1曲目としては、非常に珍しいタイプの曲ですね。
有馬 YO LA TENGOの一個前のアルバム(『FADE』)が凄く好きで、「全曲印象がない」んですよ。で、その「全曲印象がない感じを一曲でやりたいな」と思ってて。

― なるほど。
有馬 あと、Netflixで観た『ストレンジャー・シングス』というドラマみたいに、同じ時間軸の裏側に悪魔が支配しているような世界があるとか……。自分が小さい時から一番興味があったのが、そういうパラレルワールドなんですよ。

― いわゆる並行世界のことですね。
有馬 「自分がツラい時、もしかすると違う次元にいる有馬和樹は幸せかもしれない」とか、昔からずっと考えてたから、今回は、「やっとそういうこともうたえるな」と。この曲は深く聴けばわかると思うんですけど、いろいろ仕掛けがあって、ずっと同じ展開が続くんですよ。同じコード進行なのにサビになったり、そういう意味で歌詞と曲の構造自体もリンクしているし。

― 歌詞でいうと、インパクトがあるのが、「毎日働いて」というフレーズなんですけど。
有馬 けっこうパンチラインですよね。僕、最近はSNSとか辟易しているんですよ。いろんな人がいろいろ発信してるけど、「毎日働いてて、毎日ツライな」っていうハケ口にもなってる人もいれば、単純に毎日を楽しんでいる人もいる。ただ、どんな世界も“働く”ことからは逃げられないから。「すべての人がドキッとする言葉ってなんだろう?」と思ったときに、「毎日働いて」という歌詞ができて。

― 軽やかに始まる1曲目だけど、このフレーズがあることでガツンとひっかかりますね。
牛尾 この歌詞があるとないとじゃ印象が全然違いますよね。曲的にも、同じフレーズを繰り返してるうち、少しづつズレていくような感じ、有馬のいうパラレルワールド感とか。ギターのグルグル回るフレーズや、最初と最後もどれかわかんないみたいな感じになっていくのがいいなって。

■牛尾「都会、夜、ネオンとか、そういうイメージが歌詞から想起されたんで。自分はそういうイメージを込めて演奏した感じですね」

2:『ONLY LOVERS』

前越 これは、有馬が曲を作って来た時に、「早く音源を作りたいなあ!」と思いましたね。歌詞も今っぽいというか、(ドナルド・)トランプも出て来るし。

― トランプはやっぱり、“あのトランプ”なんですね。「そうかな?」とは思ったけど。
有馬 やっぱり、生きてて目をつぶれないことってあるじゃないですか? とはいえ、トランプの政治をどうこう言うのは、自分がやりたいことじゃない。でも、どこか匂わせたい気分もあって。でも、歌詞って自分が書くことが100パーセント経験したことじゃなくても、願望でもいいわけじゃないですか? 「平成生まれの僕と」とか「トランプしたくない君が」という歌詞は確実にフィクションだし。自分の言いたかったことを代弁してくれてるみたいな感じで。

― 加えて、「東京」という言葉もおとぎ話の歌詞としては珍しいし、おそらく初使用だと思うんですが。
有馬 ウン。いままで一回も使ったことないですね。でも、「平成」と「トランプ」が出てきたら、もう「東京」も言っちゃえ! みたいな(笑)。
一同 ハハハハ!



― ただ、「平成」や「東京」は言葉としてかなり生々しいですよね。今回はなぜこのタイミングでこの言葉を使ったんでしょう?
有馬 もし、いままでのアルバムの中で、「平成」や「トランプ」や「東京」っていう歌詞を書いたら、そっちに引っ張られてつくってたと思うんですよ。『東京』っていうタイトルのアルバムをつくったり(笑)。でも、今回は全部の要素がサラリと同居しているから、アリなのかなと。

― サウンド面でシッカリ地に足が着いているからこそ、こういう歌詞も出てきたというか。
有馬 今回、本当に肩ヒジ張ってないから。……個人的にも、じつはこの曲が一番好きだったりするんですけどね。単純にみんなの演奏もいいなと思うし。
牛尾 都会、夜、ネオンとか、そういうイメージが歌詞から想起されたんで。自分はそういうイメージを込めて演奏した感じですね。自分の主観はあんま入れないで。自分的には新宿の夜の感じとかを……。
前越 あ、牛尾のイメージは新宿なんだ(笑)。
有馬 僕のイメージでは渋谷なんだけど……(苦笑)。
牛尾 ハハハハ。渋谷より、夜の歌舞伎町みたいな感じかな。俺の中では、新宿西口のガード下。で、しょんべん横丁を越えて、歌舞伎町に入って行くあたり。
風間 俺は、むしろ銀座っていう感じなんだけど……。
一同 ハハハハ!
有馬 銀座!? 風間なんて、銀座で飲んだことないでしょ(笑)。
風間 まあ、ないんだけど(笑)。
前越 でもさ、酔っぱらって、イヤホンで街の中で『ONLY LOVERS』を聴いてるとさ、……けっこう浸れるんだよね(笑)。
有馬 いいなあ、それ今度、僕もやろう。

■有馬「やっぱりね、僕って歌詞で「チ○ポコ」とか言っちゃうのはNGなんですよ。それは嫌いなんですよ」

3:『HEAD』。

― 次は、『HEAD』。ここでビートが転調する感じですが、前越くんはいかがでしょう?
前越 これこそ本当のループミュージックっていうヤツで、じつはドラムは全部叩いてないんですよ。何小節か叩いて、それを切り張りしている。
有馬 Bee Geesとか、『Saturday Night Fever』とかも、そうやって録ってるんだよね。

― 短絡的ですけど、イントロは『BEAT IT』(Michael Jackson)っぽいなって。
牛尾 いや、それは最高じゃないですか(笑)。
風間 個人的には、この曲の演奏はスッゲー大変でした。ベースラインはずっと一緒なんですけど、ずっとキープするのが……。勝手に手は動くんだけど、「俺、いま何やってるんだろ」って思ったり(苦笑)。
有馬 歌詞に関しては、この曲はもうセックスのうたですよね。もちろん直接的じゃなく、暗喩を使ってるんだけど。
牛尾 俺は、有馬から「セックスのうただよ」って言われて、最初は「はああ?」と思ったんですよ。でも、よく聴いてみると「ああっ! なるほど……!!」という感じになっていって。

― 有馬くん的には珍しい歌詞なんだけど、非常に有馬くんらしい比喩を使った歌詞ですよね。
有馬 ああ、それは嬉しいです。やっぱりね、僕って歌詞で「チ○ポコ」とか言っちゃうのはNGなんですよ。それは嫌いなんですよ。
牛尾 普段は、「チ○ポコ!」ってメッチャ言ってるけどね(苦笑)。でも、自分の歌詞には持ち込まないよね。
前越 嫌だよ、そんなバンド。 「チ○ポコ、チ○ポコ」言ってるバンド(笑)。

― それでいて、タイトルは『HEAD』っていうのもおもしろいですね。
有馬 じつは『HEAD』って調べると、男性器のことを暗に言うんですよね。昔の映画を観ていたときも、「おまえのHEADは~」みたいなニュアンスで使ってて、「カッコイイな」と思って。

― エロいことを考えている脳内、というダブルミーニング的な考え方もできますし。
有馬 そのへんは聴いてくれた人たちが勝手に捉えてくれれば。僕の中ではかなりエグく書いたつもりだけど、そういう自由な解釈をできる部分も、また自分のストロングポイントかなと思ってますし。



■風間「『綺麗』は、有馬から1分くらいのAメロだけのデモが送られてきた時に、メッチャクチャ感動したんだよね」

4:『綺麗』

― 4曲目は『綺麗』。この曲はMVが先行公開されていますね。
有馬 これはアルバム用の曲がいくつかできてきた時、櫻木(景/felicityレーベルプロデューサー)さんと話をしてたんですよ。そのとき「すっごくイイ曲を1曲入れてください」「『悲しみのアンジー』(THE ROLLING STONES)ください」という話があって。

― では、櫻木プロデューサーの発注を受けて。
有馬 それで、僕が『悲しみのアンジー』とBilly Joelをずっと聴きながらできた曲ですね。
風間 『綺麗』は、有馬から1分くらいのAメロだけのデモが送られてきた時に、メッチャクチャ感動したんだよね。近所の公園で聴いたんだけど、凄く覚えてますね。
櫻木 風間くんから「超名曲ができたんで、全国に広めましょう!」っていうもの凄く熱いメールが来たよね(笑)。
有馬 まあ、風間くんはメールを打つとすべてが終わるタイプなんで(笑)。この曲は弾き語りの時は、凄く気持ちを入れてうたってたんですけど、「気持ちを入れるアレンジにはしない」ってことを念頭に考えてつくりましたね。「こんなにおまえのことを思ってるんだぜ!」みたいな押しの強さじゃなくて、あくまでもサラッと伝えるというか。

― 『綺麗』は、有馬くんのメロディメーカーとしての才能が爆発してるというか。『AND YOUNG』(『THE WORLD』収録)や『セレナーデ』『めぐり逢えたら』(『ISLAY』収録)に連なる、自分たちの出自の90年代ロックとは違った、歌謡曲的アプローチというか。
有馬 そういう目線を90年代より前に行かせてくれたのは、カメラマンのタイコウ(・クニヨシ)さんたちとメシ食ってる時とかに気づいた部分ですね。自分の中にあった“サザン脳”や“桑田脳”みたいな部分を。

― しかも、この『綺麗』には、『JEALOUS LOVE』とかでやったトーンも入ってる感じがしますし。
牛尾 そう思ったのは、演奏面が大きいのかなって。いままでの俺らなら、こういうシンプルなアレンジにはしなかったし、この曲をアレンジしている時点から、有馬から「Billy Joelみたいに、普遍的ないい曲をあたりまえのように演奏したい」と言われて。でも、それってメチャクチャ難しくて(苦笑)。
有馬 メチャクチャ難しいよね(笑)。

― Aメロから、サビの「目を閉じて~」に入る瞬間も凄い気持ちよさがありますよね。
有馬 ただ、演奏面でいうとそこにバーッと開けるような仕掛けはとくにないんですよ。そこはメンバーがホントによくやってくれたなと。いままでなら、有馬のアレンジ一発でどうにかなるみたいな部分を残しておくんだけど、今回は「残さない!」みたいな。
牛尾 だから、この曲はバンドの成長という意味では一番わかりやすいよね。
有馬 前ちゃんと風間は、凄くタイトに曲の骨幹をキープしてもらって、そこに牛尾が持っているギターの表現だけで広げて。その“骨密度”が凄いんですよ。
牛尾 骨格がシッカリしてないと、すぐ折れちゃうから。ただ、こういう仕上がりになるとは想像してなくて、出来上がったら「スッゲーAORみたいだな」と。個人的にはAORってよくわかってないんだけど(笑)。

■前越「『魔法~』のパートは、もう絶対にライブで熱唱するでしょ、お客さんが」

5:『魔法は君の中に』

前越 この曲はね、「魔法」って何回も言うのがカッコいいなって。しかも「魔法、魔法、魔法、魔法」って言いきったと思ったら、また「ま・ほおおお~!」って。「もう一回いくんだ!?」って(笑)。
有馬 ホントに「魔法」言いまくってるよね(笑)。
前越 でも、ホントに新しい。おとぎ話の中ではこういう曲はホントに新しいよ。
有馬 初めて聴いたお客さんは、「スピッツみたい」っていう人もいて。「こういう歌詞でスピッツみたいに聴こえるんだ!?」と思ってビックリしたけど。
前越 でもさ、「魔法」のパートはもう絶対にライブで熱唱するでしょ、お客さんが。
一同 ハハハハハ!
有馬 「ま・ほおおお~!」って(笑)。ぜひ合唱してほしいね。歌詞の部分で言えば「魔法」に関しても、こういう感じのファンシーさは自分は唄うたってこなかったから。
前越 やっぱり「魔法」って一見ファンシーに思えるけどリアルなんだよ。言葉として強いんですよ。
有馬 「魔法」って言葉を使うなら、「恋は魔法みたいな気持ちになる」みたいなことじゃないなと。そういう使い古された言葉じゃなく、僕たちは “魔法そのもの”のうたをつくったわけだから。

■有馬「みんなであらためて聴き返したREMって凄かったね。ヘンなことは何もしてなくて、本当にシンプルで凄かった」

6:『さよなら、またね。』

有馬 この曲は、個人的にアルバムには入るとは思ってなくて、逆にみんなが推してくれたから、ビックリした曲ですね。

― あ、そうなんですね。
有馬 自分的には “暗い曲”というイメージがあって、僕はずっと重たいアレンジにしようとしてたんです。けど、この曲の話をみんながしている中で、かなり開かれた曲になったから、凄く安心して。
牛尾 もともと、べつのところに提供するための曲で、有馬が一人で録音してたんだよね。その時はギターがひずむシューゲイザーみたいなアレンジだったけど、それもポップで良かったんですよ。そのときに「いい曲だな」という印象があったんで。

― それでみんなが推したと。
牛尾 でも、推したはいいものの、できるまでが本当に大変で大変で……(笑)。構造はシンプルなんですよ。みんなも「シンプルに演奏したい」っていう共通認識があって、たとえばREMの『Automatic For The People』(1992年発表のアルバム)みたいな。
有馬 『Man On The Moon』(『Automatic For The People』収録)みたいな感じでやりたかったんだよね。
牛尾 『綺麗』も同じだけど、普通にいい曲として演奏したかった。けど、それがなかなか難しくて。
有馬 この曲をつくっている時、みんなであらためて聴き返したREMって凄かったね。ヘンなことは何もしてなくて、本当にシンプルで凄かった(笑)。
前越 もう行き詰って、行き詰って。スタジオでも「とりあえず、REM聴こうぜ!」って感じでREM聴いて。「同じテンポでカウントとって、演奏も同じ演奏で、コード進行だけ変わるイメージでやってみよう」とか言いながらやるんだけど、「なんかREMみたいになんねえなあ!」って(苦笑)。
有馬 「何が違うんだろ?」「アイツらスゲーなあ」って言いながらね。

※まだまだ続く全曲解説。後編は6月20日に更新予定です。

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<TRACK LIST>

  • HOMEWORK
  • ONLY LOVERS
  • HEAD
  • 綺麗
  • 魔法は君の中に
  • さよなら、またね。
  • ふしぎソング
  • 素顔のままで
  • 純真
  • LOST PLANET
  • EARTHBOUND
VIDEO


PROFILE
おとぎ話otogivanashi
おとぎ話『眺め』スペシャル座談会(前編)

2000 年に大学で出会った有馬と風間により結成。
同校の牛尾と前越が加わり現在の編成に。
2007 年にファーストアルバム『SALE!』以来、8枚のアルバムをリリース。
felicity 移籍第一弾アルバム『CULTURE CLUB』(2015 年)が話題に。
映画『おとぎ話みたい』での山戸結希監督とのコラボレーションは熱烈なフォローワーを生み続けています。
同じく山戸監督による映画『溺れるナイフ』提供曲「めぐり逢えたら」を収録した前作は『ISLAY』(2016 年)。
ライブバンドとして評価の高さに加えて映画、映像、演劇、お笑い等、各界クリエーターよりのラブソングは止みません。
「日本人による不思議でポップなロックンロール」をコンセプトに掲げて精力的に活動中。
有馬和樹(Vo.Gt), 牛尾健太(Gt), 風間洋隆(Ba), 前越啓輔(Dr)

http://otogivanashi.com/

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