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[Music GO Round]インタビュー アナログフィッシュ【完全版】

  • 2013.04.30


[Music GO Round]インタビュー アナログフィッシュ【完全版】

―― 新作『NEWCLEAR』がいよいよリリースされたわけですが、反響はいかがですか。
「ライヴをちょっとやったぐらいで、そんなに反響を聞いてはいないんですが、聴いてくれた人にはおおむね好評ですよ」
―― アナログフィッシュは結成が1999年ですね。今年が結成して14年めということで。いわゆる中堅と言われる・・・
「中堅ですね。中堅かあ・・・(苦笑)・・・いやだなあ(笑)」
―― (笑)今回のアルバムはそんなアナログフィッシュ、そして下岡さんにとってどういう位置づけなんでしょう。
「どうなんでしょう・・・僕達としては前作の『荒野』からちょっとギアが変わった印象があって。その流れを汲んだ作品ではあると思ってます」
―― もちろん変化はありつつも、継続した部分もある。
「はい。そうですね」
―― なるほど。一曲目の「Super Structure」は、どんなふうに出来上がった曲なんですか。
「これは『荒野』の段階で既に詞はあったんですけど、音がなかなかまとまらなくて。ちょうどこれ(『NEWCLEAR』)を作り出した時に、アレンジが固まってきたんです」
―― いつも詞が先にできるんですか。
「メンバーによって違いますけど、僕は詞が先が多いですね」
―― 詞先って人は珍しい気がしますね。だいたいみんな曲先で。
「そうそう。僕は昔からユニコーンが好きで、(奥田)民生さんのインタビューを読むと、曲が大事で、言葉は恥ずかしい・・・みたいなことを言うじゃないですか。だから僕も、詞が先っていうのはずっと恥ずかしかったんです。最近ちょっと慣れてきましたけど(笑)」
―― ほかの音楽家で、バックトラックまで出来てるのに詞が書けなくて、レコーディングが難航したって話はよく聞きますけど。
「そうですね。僕は逆に、歌うべき言葉がないと、曲ができないですね。アレンジとかも」
―― 楽曲の中で言いたいこと伝えたいことが明確になってないと・・・
「はい、無理です」
―― 昔からそうなんですか?
「最初からそうです。言葉を表現するための音楽を作るって感じです」
―― なるほど。フィッシュマンズの故・佐藤伸治は「歌詞で言い足りないことを音で表す」と言ってましたね。では、この「Super Structure」は、どの言葉が最初に出てきたんですか。
「サビの♪踊る阿呆~ってところ以外が、最初にずらずらっと出てきましたね、頭から」
―― そういう時は、メロディやリズムのことは考えながら書いてるんですか。
「いや、考えないですけど、なんか訓練で・・・訓練っていうか、ずっと書いてるから、音節を合わせて書けちゃうんですよね、フリーに書いても。だからあまり困らない」
―― じゃあかなり言葉型の方。
「それは間違いないです」
―― なるほど。今作のタイトルはいろんな意味が込められていると思うんですが、改めて、タイトルにこめた思いというのを説明していただけますか。
「この『NEWCLEAR』っていうのは、もともと<核>のNUCLEARをのNUをNEW=新しい、って書くものだと子供の頃思い込んでたところから来てます。僕が子供の頃・・・90年代の、ちょうど京都議定書が策定されたころで、原子力がクリーンで良いエネルギーだってことばかり言われてたんですね。その印象で、原子力エネルギーって新しくてクリアなものだと思ってたんですよ。いまだに人間が使うエネルギーはそういうものであってほしいなと思って」
―― そのころは未来はまだ光り輝いてて、科学技術の進歩が人間の明るい未来に結びつくという幻想がまだ残ってた。
「そうですね。原子力はCO2も削減されるし、いいことずくめだ、みたいな感じだったんですよ。当時は」
―― それが3.11を境に大きく変わってしまった。変わらざるをえなかった。
「そうなんですよ」
―― 下岡さんのアーティストとしての姿勢も大きく変わってきた?
「変わってきたことは絶対変わってきたと思うんです。でも自分が違うことをやりだしたかっていうと、そうでもなくて。結構自分としては地続きで同じことをやってて、ただ、ああいうことがあったから、もう少しリアルに、現実的な意味で<愛>みたいなものに自分の目がフォーカスされる、みたいなことが起きましたね」
―― よくアナログフィッシュに対する語られ方として、「現代のプロテスト・ソング」みたいな言い方がされると思うんですが、何かに対してプロテストしているという意識はあるんですか。
「うん、ある。でも<プロテスト>っていうよりは、気に入らないことを気に入らないって言ったり、こうじゃないほうがいいって思うことを素直に言ったり、そういう気持ち。みんなが普通に日々思っているようなことを歌にすると<プロテスト」って言われるんだなって感じ(笑)」
―― なるほど。実際に過去のプロテスト・シンガーと言われる人たちは聴かれてこられたんですか。ウディ・ガスリーとか、ボブ・ディランとか。
「はい。そのふたりは好きですし、それこそザ・クラッシュも好きですね」
―― 「震災」というテーマに関して言うと、去年リリースされ、今作にも収録されたシングル「抱きしめて」が話題になりました。♪危険があるから引っ越そう 遠いところへ引っ越そう♪という歌詞を見ると、震災後に書かれたものかと思ってしまうんですが、実は震災前に書かれたものなんですね。
「そうなんです。僕は子供の頃からひたすらに地震が怖くて苦手で。今地震が起きたらどうしようって気持ちを常に持っていたんです、東京に出てきてからも。じゃあここで明日地震が起きるとして、俺は音楽辞めて東京を離れるのか、離れるって言っても、この日本でどこに逃げればいいのか。ずっと考えざるをえなくて。そういうことを考えてるうちにできた曲ですね」
―― 作って、実際に震災が起こってしまい、かえって「これは出せないな」って心境にならなかったですか。
「いや、すごくなりました(笑)。これ歌えないなと思って。でもニュースなどで<行き場のなさ>みたいなものを目にするじゃないですか。そのうちになぜかふつふつと、自分の中に<歌おう>って気持ちが出てきて。実際に弾き語りで歌う機会があって歌ったら、妙に胸に馴染む感触があって。それは聴いていたお客さんもそうだったみたいで。じゃあ歌おうかなって気分になったんです。すごい良かったってお客さんには言ってもらったんだけど、取り方によっちゃあ・・・という曲だから、それでも<大丈夫かな>とは思いましたけど」
―― いろいろ勘ぐられそうではありますよね。
「そうそう(笑)。その時の映像をユーチューブにアップする時に、たまたまライヴで大阪にいたんですよ。いろいろ終わってホテルに帰って、そろそろアップされるなって思ったら寝られなくなっちゃって。ずっと大阪の街を歩き続けて。なんか本が読みたくなって早朝の大阪を本屋を探して彷徨ったのを覚えてます。落ち着かなくて」
―― 作品が世に出るときって、そういうドキドキ感はあるものなんですか。
「いや、昔は、出るたんびに「おおう、売れてすげえことがあるかも!」なんて感じでドキドキしてたんですけど(笑)、最近はそういうのもないし。だから「抱きしめて」はけっこう珍しいと思う」
―― そういう意味でも特別な曲になったわけですね。
「うん。なんかこう、プレッシャーでもないけど、いろいろ考える曲になりました」
―― アジカンの後藤さんがこの曲をすごく気に入られて。「FUTURE TIMES」って、彼がやってるフリーペーパーで対談もされてましたね。
「はい。ありがたいことです(笑)」
―― 同世代のロック・ミュージシャンで、下岡君ほどちゃんと社会性を持ったまともな歌詞を書いてる人はいない、と。大絶賛でしたね。
「嬉しいですね、ほんとに」
―― やはり同時代のほかのアーティストの歌詞とは一線を画したい、という思いがあるわけですか。
「もちろん、オリジナルでありたいとは、常に思ってますけど、ほかの誰かよりも、というよりは、この気持ちをなるべくいい歌詞にしたい、と常に思ってます。こういうことだったら、同調してやってくれる人がいればいいと思うけど、実際にはいないし」
―― 詩人として自己形成する上で影響を受けた人というと?
「ええと、特に民生さんとかは、本当に子供の頃から好きで、模写とかもしてたから。言葉の使い方とか、今すごく役にたってると思う。センテンスを短く使うこと、簡単な言葉の組み合わせで、複雑な奥行きを出すこととか。あとは(甲本)ヒロトとか井上陽水とかゆらゆら帝国とかも、勉強になりました」
―― 今おっしゃった、簡単な言葉で奥行きを出す、というのは、まさにこの『NEWCLEAR』がそういう印象のアルバムで。
「ああ、そうですか」
―― 難しいことは何も言ってないんだけど、ちゃんと言いたいことが伝わってきて、薄っぺらにならない。
「良かった!」
―― すごく完成された詞という気がしました。
「えへへへへ。嬉しいですね」
―― このアルバムで特にキーポイントとなる曲というと、ほかにどの曲になりますか。
「「抱きしめて」や「Super Structure」もそうですけど、自分としては「I Say」とか、(佐々木)健太郎が書いてる「Goodbye Girlfriend」とか。そういう曲がデカかった気がしますね。あとは「City of Symphony」とか。いっぱいありますね」
―― 「I Say」は、サビのところで「愛されたいより愛せ I Say」と、語呂合わせ的に歌われる曲で、そのサビがそのまま曲のメッセージとなっていますね。どういうところから作っていったんですか?
「特に震災以降の気分として、自分がどれだけ人のことを愛してるのかわかんねえなと思って。そんなことできるのかな俺って、いつも思ってて。そんな時にふとコンビニに流れてた曲が、愛してる、って言ってる曲なんだけど、どうも「愛してる」と言っているように聞こえなくて。歌ってる人たちがとっても「愛されよう」としてる人たちだったからかもしれないけど。いわゆるアイドルの人たちだったんですけどね。もちろんそれはそれでいいんだけど、じゃあ俺はどういう曲を歌えるのかなあと思って。そんなことを考えながら書いた曲です」
―― <愛されたい>という一種の自己承認欲求は、特に若い人には多いかもしれませんね。
「うん、そうですね。俺もそうですけど(笑)」
―― 人を好きになってコクって振られて傷つくのはいやだ・・・という気持ちは誰でもあると思いますが、特に最近の若い人はそういう傾向が強いんでしょうか。
「うん、そうですよね。もちろん愛されたいのは俺もそうだし、その通りなんだけど(卵が先かニワトリが先かじゃないけど)やっぱり愛されるより愛するほうが先にある気がするんだよな俺は、どうしても。それに<愛されたい>って言ってるのって、なんかみっともない気がするんですよ。そっちばっかでかくなることって。単純に」
―― なるほど。ではお客さんとの関係性はどうでしょうか。お客さんに聴いて欲しい、受け入れて欲しいと願うのはアーティストとしては自然なことにも思えますが、そのあたりはどういうお考えですか?
「うーん・・・どういう考え方というよりは・・・今自分たちの音楽を聴いてくれる子たちのことはすごく気に入ってて。ライヴをやってると、すごく音楽を好きな人たちが集まってる感じがするんですよね。それがすごく嬉しいし、聴いてくれることはありがたいと思ってるけど、なんか・・・自分はいい曲を作りたくて音楽を作ってるから。相手も、いい曲を求めてくれてるんじゃないかと思ってるんですけど」
―― いい曲の定義ってなんですか。
「えへへへ。それはね、出来た時に「ああ、俺は世界で一番いい曲作った」って思うとき(笑)」
―― やべえ俺天才かも、とか(笑)。
「そうそう(笑)。それです」
―― まず最初に自分というリスナーが満足できないと意味がない。
「そうですね。曲作る時に人のことを考えて作らないですね、俺は。自分のしたいこと、言いたいことを言うために作ります」
―― そうですか。たとえば歌詞に絞って話をすると、ストレートに伝わらない詞を書く人もいますよね。でも下岡さんは、言いたいことをちゃんとわかりやすく伝えるためにどうするかってことを、すごく考えている気がします。
「まあ、そうですね」
―― 言葉の選び方とか。難しい言い回しって全然しないじゃないですか。
「しないです」
―― ワケのわからない比喩もないし。
「ない。人の歌詞を見てても、今そういう歌詞ってすごく多い気がしますよね。俺、そういうの聴いても、すごくつまんないと思っちゃうんです。それが本当にいい表現にまで持っていける人ってすごく少ない気がする。自分の欲求を満たすだけで終わりたくないって気がすごくします」
―― 自己満足ってことですか?
「自己満足で終わりたくないというのが本当にあるなあ。・・・ていうことは、人のこと考えてるんだな・・・でも・・・言葉っていう壁はほんとに低くしておきたい。パッと聴いた時に誰もわかるような歌詞は書きたいと思ってる。そこで耳を選びたくないっていうか」
―― そこで煙に巻いたりとか、二重三重に意味を巡らせて迷宮みたいな歌詞にして、容易に本音に辿りつけないようにする、という人もいますが、それはあまり好きじゃない。
「それは好きじゃない。ほんとに好きじゃない。それじゃ伝わらないし。洋楽も好きだし、ロック・バンドやってるから、音楽の技法を持ち上げていくと、発音でぶつかって、なんかこう・・・ワケのわからない言い回しとか、「ダサくなくしていく作業」って、もうしたくないし。そういうのいやなんですよね。「ダサくなくしていくだけの言葉遣い」ってほんとイヤなんですよね。そのへんは俺達、ダサくてもいいと思ってますから」
―― 上辺だけ飾り立てたような言葉とか。
「うん」
―― 言葉の響きとか、発音してサウンドと合わさったときにかっこよく聞こえる言葉を選ぶ傾向も最近はありますが、そういうのはあまり・・・
「それが日本語として発音してハマるんだったら、気持ちよければ全然やるけど、それありきではやらないですね。そもそも書く時に発音とか調整しながら書いてるから」
―― でもそういう考え方だと、書く詞、書く言葉すべてに意味を持たせないといけないことになりませんか。
「ああ、そうなるけど、そうならないんですね。それはやはり・・・自分がすごく矛盾してるってことですね(笑)。で、それでいいと思ってる」
―― たとえば詞の一節をとって、意味を訊かれて、答えられない時ってありますか。
「ありますあります」
―― それはどういう気分で書いているものなんですか。
「それなんだろう・・・曲ってその1曲を使って、なにかひとつ大きなことが全体として言えたらいいと思うんです。でも歌詞ってある程度の長さがあるから、いろんなこと言ってるじゃないですか。それもそれもすべて、ひとつのことを伝えるための装置に過ぎないから、そこだけとってどういう意味かと問われても、困る時もある。すごくたくさんの意味を曲の中につける人がいるけど、俺はそうなんです。ひとつの曲で一個入れればいいっていう」
―― なるほど。そういう歌詞は、わかりやすい、いわば「誤読されにくい歌詞」であると思うんですが、それは時に、意味がわかった瞬間に完結して朽ち果ててしまう危険性がある。それはどのように解決してますか。
「たとえば「I Say」みたいな歌詞は、もう完璧にそぎ落として、何度聴いても耐えうるように磨きこんでいく。あるいは「Super Structure」みたいに、ある程度ストーリー、流れの中にフックを作っていく。曲によっていろんなやり方があると思うんですが、そういうのって結局バランス感覚なんですよね。たとえばすごくいい曲を書く人で、歌詞だけ見るとほんとになんてことのない詞で、でもその人の声と演奏に混じると、すごくよく聞こえるって人がいるんですよ。そういうのを見てると、僕にはできないなと思うんです。僕はやっぱりひとつのセンテンスとかふたつのセンテンスごとになにかを盛り込まないと、俺の声と演奏だけでは持たないから。そういうのは本当に人による。その人の声と演奏と」
―― ではたとえば、もし下岡さんが、天性の声と人を惹きつける華やかさをーー下岡さんにそれがないと言うわけではありませんが、それだけで勝負できるようなものを持ちあわせていたら、書くもの、作る曲も変わってくる可能性がある。
「絶対変わります。歌をうたう人に寄ってないと意味がないから」
―― それを自覚されたのっていつ頃ですか。
「それは東京に出てきたぐらい(2001年ごろ)かな。けっこう遅かったと思う。二十歳過ぎてから」
―― そのころはもう曲は書いてたんですよね。
「書いてましたけど、本当に何もわかってなくて。ただの勘違い野郎だったんですよ。僕、ミッシェル(・ガン・エレファント)のコピーとか田舎で相方とやってて。ミッシェルになりたかったんです、ずっと。チバユウスケとかアベ(フトシ)さんになりたくて。コードがあって曲が弾けて歌えれば、なれると思ったんです。だってその曲弾けるんだから。俺なれるよって思ってたんですけど。でも全然なれないわけ、やっぱり(笑)。たぶんそんなことみんなすぐに気づくんだろうけど、俺は全然気づかなくて。東京に出てきて、才能のある人とか上手い人を見て初めて気づきました」
―― こういうこと訊いていいものかわかりませんが、チバユウスケと下岡さんは何が違うんですか。
「いやもう・・・人間が違うとしか言いようがない(笑)。全部、なにもかも。あの人ものすごいですよ、ほんとに。あの人の歌詞もすごい勉強になった。すごいシンプルで、すごい綺麗な詞を書く」
―― 人は自分以外の誰かになれるものじゃない、自分自身にしかなれないってことですね。・・・で、ここでいきなりアルバムの話に戻りますが(笑)、今回は歌詞に関してかなりうまくいってるほうじゃないですか。
「そうですね。いろいろありましたけど、今までのベストではあると思います」
―― さっきキーポイントで挙げていただいた佐々木さんの楽曲「Goodbye Girlfriend」も「希望」も、すごくいい曲で。某インタビューでは、あまりにいい曲なんで嫉妬を覚えたと言ってましたね(笑)。
「あはははは、そうそう。すごいびっくりした」
―― 同じバンドにソングライターがふたりいるのは珍しいことではないと思いますが、その関係性というのはアナログフィッシュの場合、どういうものなんですか。
「たぶん僕らはすごく仲はいいんですけど、ライバル意識は普通にあるし、曲を作る時に自分の思い通りにやろうとしても、一緒のメンバーでやるから、こっちの方がいい、みたいなことになるじゃないですか。だからすごい・・・変な関係」
―― 佐々木さんの作風はどう捉えてます? 自分との違いとか。
「健太郎は本当にメロディの人だなと思ってて、それをすごくうらやましいと思ってます。まずはメロディありき。とっても綺麗なメロディで、歌えそうに聞こえるけど、普通に人が歌おうとしても歌えないですね。レベルが高い」
―― さりげなく歌ってるように聞こえますけどね。
「全然難しいです。あと、コードの使い方が僕と全然違って、勉強になる」
―― それは担当楽器の違いも関係してるんですか。
「いや、彼はギターもすごく上手なんですよ。だから僕よりずっとギタリストっぽいコードの使い方をしますね。彼はビートルズ・フリークだったりするし、そういうコードの使い方をします」
―― ちょっとポール・マッカートニーぽい感じが。
「うん、そうそう」
―― メロディアスだし、声も甘いし。いろんなものを持ってますね。
「うん。彼は本当に多彩。音楽に関しては本当にすごい」
―― アルバムの中のそれぞれの楽曲の割合というのは、なにか決め事はあるんですか。
「いや、ないです。もともと半々とか、今と逆で、彼が7で僕が3という時期もあったし。今は俺の曲が増えつつありますけど、たぶんこの先また動くだろうし」
―― 最近下岡さんの曲が多いのは、なにか突き動かされるものが多いってことですか。
「そうですね・・・僕はずっと作ってるんですよ。多作っちゃあ多作で。『荒野』からは、ポンと出来てくる感じの作り方で」
―― 言いたいこと、伝えたいことがどんどん湧いてくる。
「そうですね。でもそれも『NEWCLEAR』を作ってた時までで。今現在は結構空っぽになってて、これで大丈夫かなと思ってるところです」
―― ああ、大丈夫ですよ(笑)。だいたい音楽家の人は作り終わったあと、そう言いますから。
「ほんとですか。なら嬉しいなあ」
―― そうして空っぽになった時、特に歌詞に関して、どういうところからインプットしてくるんですか。
「特にそういう作業はないんですよ。ただ暮らしてるだけで、暮らしてく中で思ったことがあれば詞ができるし、思ったことがなければ延々とできないっていう。昔は映画を一杯見てみたりとかしたんですけど、あまり役に立たなかったですね。」
―― じゃあどういう瞬間に生まれるんですか。
「見た瞬間に何かを強く思ったりとか。歩いててポッと浮かぶとか、そういうことの蓄積ですね」
―― そういう時もやっぱり言葉が浮かんでくるんですか。メロディとかコード進行とかフレーズとか・・・
「じゃないです。言葉か、言葉とメロディが一緒に出てきますね」
―― 突然閃くというような?
「「I Say」は、街を歩いてる時にずらずらっと出てきましたね。ほかは気持ちの断片を頭の中で回してるうちに歌詞になってきたっていうパターンが多いですね」
―― たとえばラストに収められている「City of Symphony」は、どういう風に出てきた曲なんですか。
「これは一緒にやってるやけのはらさんと飲んでる時に、なんか一緒にやろうって話になって、どんなのをやろうかってなった時に、街のことを歌おうかって話になって。その時俺自身、東京を離れようかってことを考えてた時期で。でも結局残ることにしたんだけど、その、気持ちがグッと東京に戻ってきた瞬間があって、その気持ちを曲にできないかって話をして。僕の好きな東京の風景があって、その景色を歌にしたいなと思ったんです。」
―― 震災後の東京の風景といえば、ネオンサインとか街の灯りが消えて、暗くなった時期がありましたね。
「ああ、東京ってこんな暗いんだと思ったし、わりと魅力的でしたね。あ、これでも俺達暮らせるんだと思って。うん」
―― 渋谷とかすごく静かになって落ち着いた感じになって。
「うん。なんでこれじゃダメなんだろうなって思いました、普通に」
―― いつのまにか元に戻っちゃったけど。
「ねえ。なんでですかね。何も変わってないのに。それだけ戻るのはおかしいですよね」
―― ですね。私は東京は長いので、地方の人が東京に出てくる時の気持ちとか、東京に抱く思いというのがいまひとつよくわからないところがあるんですが、下岡さんにとっても、やはり東京に対して特別な思いというのはあるんですか。
「めちゃくちゃありました。ほんとに小さな村で育って、ほんとに自分がやりたいと思ってたものはそこではできないし、なかったから。東京行ったらなんでもできるぞって思ってましたね。」
―― 光り輝く、自分の夢が実現する場所。
「だと思ってましたね、ずっと」
―― 私の友達で秋田出身の子がいるんですが、予備校に行く時に初めて東京に出てきたと。山手線に乗ろうと思ったらすごく混んでたので、一本待って次の電車に乗ろうとしたら、次もその次もずーっと混んでて、全然乗れなかったという思い出があるそうです。
「ああ、すごくわかります(笑)。よく田舎の人が言うネタとして、ずっとお祭りやってるかと思ったと。ほんとそんな感じだった」
―― 今は当然そこからは気持ちは変化しているわけですよね。
「自分が暮らす街になりましたよね。そうなることで、ある意味で、何かを叶えてくれる場所じゃないんだな、とは思いましたね。それまでは、なんとなくぼんやりと、何かを叶えてくれる場所だと思ってた。でもそうじゃないんだって」
―― 叶えてくれる場所ではなくて・・・
「でも<叶える>場所ではある」
―― 「叶えてくれる」んじゃなく「叶える」場所。
「うん、そうそう。ずっとそうなんですけどね。でも昔は「行けば叶えてくれる」と思ってたこともありました」
―― 東京ってなんでもあるじゃないですか。モノも情報も人も溢れえってる。だからその中から本当に必要なもの、大事なものを嗅ぎ分ける力が要求されますよね。
「相当必要ですよね」
―― このアルバムでもそういうことを言っているような。
「はい。そういうテーマはずっと触れていきたいことですね。まあ俺もわかってはいないんだけど」
―― 何が一番大事ですか?
「僕・・・今何が一番大事かなあ・・・ここ来る時、ちょうど考えてたんですよね(笑)。でもなんか・・・あんまり思いつかないんですよね。うーん」
―― 家族とか恋人とか友達とか。
「うん、そういうものは大事ですよね。でもなんか、金じゃないものって気はしますけどね、確実に」
―― 大抵のものは金で買えるけど。
「うん。でも金じゃないんだよなあ・・・って気は、普通にしてますけど」
―― ですね。今回プロデュースは前作に続いて吉田仁さんですが、サウンド面で試みたことなどは。
「前作の『荒野』で吉田さんとやってかなり面白かったので今回も。自分の曲に関しては、コードを鳴らさない感じで、ギターもベースも単音で、とにかくソリッドに、コンパクトにやりたいってイメージがありました」
―― 確かにサウンドはシンプルでコンパクトなバンド・サウンドになってましたね。
「はい。今自分が言っている言葉に、そういうのが合うだろうと思って」
―― なるほど。それはわかります。今回ツアーも決定しまして、5月25日から全国5箇所が決定してますね。今回はどんな趣向ですか。
「『荒野』から、同じトーンの曲が揃ってきたから、そのへん混ぜて、トータルでかなり引き締まった感じのセットでやりたくて。僕達ツインボーカルだから、ひとつのライヴで曲の振れ幅がけっこうデカいんですよ。そこを一本で行けるんじゃないかなと思って、そろそろ。そういう感じで、かっこいいライヴをやりたいと思ってます。」
―― 歴史のあるバンドなので昔の曲をやる機会も多いと思うんですが、いま昔の曲をやるっていうのはどういうものなんですか。
「今になって気づくことととか結構ありますけど、サウンド的に違いますね。昔は結構、グルーヴみたいなものを頼りにやってましたけど、今はこう・・・もう少し違うんですよね」
―― グルーヴじゃないとすると・・・
「うーん・・・」
―― 言葉ですか?
「うん、言葉だけど・・・今もグルーヴっちゃグルーヴなんですけど、昔自分たちが思ってたグルーヴは、遅くなっても速くなっても、大きくなっても小さくなっても、3人の呼吸に合わせてどういうふうにでも変化していける、というものだったんですけど、最近はもっと一定したグルーヴというか・・・」
―― 歌詞はどうです? 10数年前に自分が書いた詞というのは。
「(笑)けっこう恥ずかしいものがありますね。その時僕が書こうとしてたことって、結構今と明確に違うから。なんか・・・面白いですね。なんか別人みたいにも思えて」
―― 何が違うんですか?
「最初はね、僕は、明確に<言葉にならない気持ち>を言葉にしようと思ってたんですよ。なんで世の中の歌には、4種類ぐらいしか気持ちがないんだろうって思ってましたからね。そうじゃない気持ちも一杯あるのにって。そういう気持ちをどうにか簡単な言葉で表現したいと思って作ってたんですよね。でも今はそうじゃないから」
―― ふむ。
「ま、今も言ったらそうなんだけど、もっと違う」
―― どう違うんですか?
「今は、言葉にならない気持ちを言葉にするっていうよりは・・・思ってることを、メッセージをはっきり言うことで・・・超えようとしているというか表現しようとしている・・・難しいな。昔僕が表現しようとしていた気持ちっていうのは、本当にどの言葉にも当てはめられない気持ちを、全体で表現するってことだったんですよね。今はもっと明確な気持ちを歌うことを・・・やってる。へへへ(笑)」
―― 確認に近いってことですか?
「確認・・・じゃないんだけどな。歌詞にするまでは、オレの中で固まってない気持ちだったりするから。」
―― うーん・・・・
「そこ難しいですね(笑)」
―― もうちょっと突っ込みたい気持ちはやまやまなんですが(笑)、時間も迫って参りましたので・・・では最後にこれからツアーも始まるわけですが、中長期的な展望というか夢というか目標というか・・・
「そんな大それた目標というよりは、3ピースでもっといい音楽を作りたいっていう、それだけですね。さっきも言ったみたいに、オレ天才だなって思えるような最高の曲を作りたい」
―― 3ピースという形にはこだわりたいんですか。
「こだわりたいです」
―― 3ピースを選んだ理由は?
「うーんと、それしか友達がいなかったから(笑)集まらなかったから(笑)」
―― でもやけのはらさんっていう新しい友達が(笑)
「そうですね!(笑)」
―― バンドとして、あるいはアーティストとして、これさえ達成できればいつやめてもいいって究極的なものはあるんですか。
「それはもう、これさえ出来れば死んでもいいって曲ができたら、ですよ」
―― ああ、今回のアルバムではまだ・・・
「まだ(笑)死んでもいい、とはならないですねえ(笑)」
―― じゃあそういう究極の名曲ができるまで頑張る、と。でもなにかしら「もっとやれる」って気分はずっと残るんじゃないですか。
「今のところそうですね。この先もそうなのかなとか、そうじゃない時も来るのかな、とか思ったりするけど、まだまだ続きますね」


Suono Dolce「Music Go Round」
GUEST : 下岡晃(アナログフィッシュ)
聞き手 : 小野島大(音楽ライター)
■Music Go Round HP ⇒ http://www.suono.jp/mgr/thu




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